第三幕、御三家の矜持
「いや俺達もそろそろ受験生じゃねーか、人に教えてる場合じゃねーよ。特に国語とかいう教えてもどうにもなんねーやつ」


 さっきと同じ流れだ……。実は御三家ってちょっと頓珍漢だよね……。

 顔をひくつかせる私なんて無視して三人はカバンを持って「副会長の仕事って今日ないの?」「んー、ない」「いま迷ったでしょ副会長」「ない」「しっかりしろ副会長」「副会長副会長言うなよ! 馬鹿にされてる気がするだろ!」と緩い会話をしながら校舎を出る。

 その調子は校門を出て雅と合流するまで続いた。月影くんに言われた通りにお利巧に待っていた雅は、御三家が揃っているのを見て「ゲッ」と声を上げる。


「おかしーだろ! 勉強会すんの月影だけだろ!?」

「俺達は勉強教えないよ。一緒に帰るだけ」

「もっと意味分かんねぇ! つかなんで桐椰金髪じゃねーの!」

「飽きた」

「あー、わかるー」


 本当、なんだろうこの緩い会話……。しかもあの桐椰くんが適当な返事してるし、雅は納得しちゃってるし……。


「なんかこの集団、すげー変じゃね? って思ったけどお前らいつも三人揃ってんだもんな、キモ」

「うん、いつもは三人と桜坂だけだからお前は邪魔かな」

「ちょっとそこの二人!」


 ガッ、と同時に松隆くんと雅が胸倉を掴み合った。でも月影くんも桐椰くんも揃って気付いていないかのように「だからあの試合はやっぱりメンバー入れ替えるべきじゃなかったんだって」「だがルール変更があった以上戦略としては正しいと言わざるを得ない」なんて話している。どうでもいいよサッカーの話は!

 どうどう、と間に割って入って、やっと二人は手を放す。一番仲の悪い組み合わせなのになんで松隆くんと雅が並んでるんだろう……。ほらほら大人しくして、と後ろから促せば二人は揃って舌打ちするもちゃんと歩き出した。


「つか、お前ら一日の終わりになんでそんなすっきりしてんの?」

「シャワー浴びた」

「うわー出たよ私立、金持ちのボンボンどもめ。松隆とか無人島で暮らせなさそうだよな、いかにも温室な顔だしな!」

「うん、だからそういうことにならないようにお前の倍は偏差値あると思うよ」

「だからそこの二人!」


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