第三幕、御三家の矜持
「ま、御三家を二次元に見立てて楽しむしかないなー、今日は」
「どこまでも御三家そのものには興味ないんだね……」
「だって結局二次元には勝てないんだから。下手に三次元のイケメンに惚れこんでイケメンに幻滅したくないしー」
二次元のイケメンというものがどれほど素晴らしいのか私にはよく分からないけれど「だって二次元はすね毛ないよ? いい匂いしかしないんだよ? 三次元は無理でしょ?」とまるで二次元で見てきたかのような説明をしてくれた。相変わらずよく分からない人だ。というか、その翠の黒髪も、それとは打って変わって茶色いアーモンド形の目も、白い肌も、どこからどう見ても美少女で、私からすれば蝶乃さんよりも更に可愛いと思うのだけれど、これで二次元にしか興味がないというのがなんとも残念で仕方がない。
「あ、ところで亜季は誰に告白されたの?」
「…………はい?」
その横顔をじっと見つめていたら思わぬ質問が飛んできて、目を点にしてしまった。スニーカーに履き替えて夏の暑い空の下に出ながら、ふーちゃんはクスクス笑う。
「そんな驚かないでもさー、御三家の姫に何かあったらすーぐに噂は広まるんだって。昨日ラブレター貰ったんでしょ?」
「あー……」
なんだそのことか、とほっと胸を撫で下ろす。ついさっきまで御三家の話をしていたせいで、松隆くんのことを知っているのかと勘繰ってしまった。つくづく、鳥澤くんは厄介なタイミングで告白をしてくれたものだ。
「ていうか、誰が告白したかって噂は回ってないんだね……」
「あー、噂はあるよ? 一組の鳥澤くん」
「…………」
「一組の男子がラブレター書いたんだってことは最初から分かってたしー、ていうかバスケ部の中で鳥澤くんが亜季を好きだってのは結構知られてたらしーんだよね。亜季ってほら、梅宮さんを生徒会役員から庇ったらしーじゃん? あたし、最初は知らなかったけど。それ見て度胸あるって意識したみたいな?」
告白された私でさえ知らない情報をまさか全く関係ない第三者が知っているとは……。私が何も否定しないから正解だと分かったのだろう、ふーちゃんは顎に人差し指を当てたまま続けた。
「どこまでも御三家そのものには興味ないんだね……」
「だって結局二次元には勝てないんだから。下手に三次元のイケメンに惚れこんでイケメンに幻滅したくないしー」
二次元のイケメンというものがどれほど素晴らしいのか私にはよく分からないけれど「だって二次元はすね毛ないよ? いい匂いしかしないんだよ? 三次元は無理でしょ?」とまるで二次元で見てきたかのような説明をしてくれた。相変わらずよく分からない人だ。というか、その翠の黒髪も、それとは打って変わって茶色いアーモンド形の目も、白い肌も、どこからどう見ても美少女で、私からすれば蝶乃さんよりも更に可愛いと思うのだけれど、これで二次元にしか興味がないというのがなんとも残念で仕方がない。
「あ、ところで亜季は誰に告白されたの?」
「…………はい?」
その横顔をじっと見つめていたら思わぬ質問が飛んできて、目を点にしてしまった。スニーカーに履き替えて夏の暑い空の下に出ながら、ふーちゃんはクスクス笑う。
「そんな驚かないでもさー、御三家の姫に何かあったらすーぐに噂は広まるんだって。昨日ラブレター貰ったんでしょ?」
「あー……」
なんだそのことか、とほっと胸を撫で下ろす。ついさっきまで御三家の話をしていたせいで、松隆くんのことを知っているのかと勘繰ってしまった。つくづく、鳥澤くんは厄介なタイミングで告白をしてくれたものだ。
「ていうか、誰が告白したかって噂は回ってないんだね……」
「あー、噂はあるよ? 一組の鳥澤くん」
「…………」
「一組の男子がラブレター書いたんだってことは最初から分かってたしー、ていうかバスケ部の中で鳥澤くんが亜季を好きだってのは結構知られてたらしーんだよね。亜季ってほら、梅宮さんを生徒会役員から庇ったらしーじゃん? あたし、最初は知らなかったけど。それ見て度胸あるって意識したみたいな?」
告白された私でさえ知らない情報をまさか全く関係ない第三者が知っているとは……。私が何も否定しないから正解だと分かったのだろう、ふーちゃんは顎に人差し指を当てたまま続けた。