第三幕、御三家の矜持
「でも今はそういう噂もさっぱりだしな。アイツなりの反省なんじゃね」
「え、どういう……」
「女嫌い自称して女子を寄せ付けないようにしてるだけなんじゃないって話」
「全く意味をなしてねーけどな」
「確かに」
松隆くんと桐椰くんは緊張感なく笑っている。やっぱり、月影くんのあの態度はこの二人すら知らないことに原因が……。
「話は変わるけど、菊池、お前の成績上がってるの?」
「えー、うん、まぁ」
今度は雅の視線がぐるんと泳いだ。上がってないな。
「折角月影くんが勉強教えてあげてるのに……」
「大方、基礎の基礎から教えてもらう必要があるせいで成果が出るのはもっと先の先なんでしょ」
「あぁ……」
「納得すんなよ亜季! そこは松隆に怒るとこだろ!?」
「まぁ……。あ、でも、月影くんが勉強教え始めたのって最近だよね?」
「夏休み明けたくらいかな」
「じゃあまだ中間くらいしかないもんね」
「寧ろ一番成果が出やすいんじゃねーの、それ」
「ふ、英語はなんと四十点を超えた!」
「話は変わるけど、そろそろ遥の誕生日じゃん?」
「変えすぎだろ! そんなに俺の英語酷いか!? 誰だよ遥!」
諦めるくらいならなぜ最初に雅の学力を話題にしたのか……。桐椰くんがそれにツッコミを入れることはなく「あぁ、今年もケーキはチョコレートだぞ」とよく分からない返事をする。
「今年も誕生日会やるの?」
「んな大袈裟なもんやんねーよ、小学生の頃の話だろ、それ……。ケーキ作る以外は特に何もしねーよ」
「お前ケーキとか作んの!?」
そっか、今月は遥くんの誕生日で桐椰くんが毎年のごとくチョコレートケーキを作るのかぁ、と私の中ではすっきりしたのだけれど、隣の雅が机でも叩きそうな勢いで叫んだ。そういえば雅は桐椰くんの異常な女子力の高さを知らない……! 桐椰くんも気心の知れた友達以外にはあまり知られたくないのか、ちょっとだけ面倒くさそうに顔をしかめている。
「……別に人並みに」
「謙遜だよ雅。桐椰くん超女子力高いから。弟の遥くんと分担して朝昼晩作るし、掃除丁寧だしシャツもいつもぴっちりアイロン当たってるし、たまに作ってくるお菓子すごくおいしい痛たたたた」
「え、どういう……」
「女嫌い自称して女子を寄せ付けないようにしてるだけなんじゃないって話」
「全く意味をなしてねーけどな」
「確かに」
松隆くんと桐椰くんは緊張感なく笑っている。やっぱり、月影くんのあの態度はこの二人すら知らないことに原因が……。
「話は変わるけど、菊池、お前の成績上がってるの?」
「えー、うん、まぁ」
今度は雅の視線がぐるんと泳いだ。上がってないな。
「折角月影くんが勉強教えてあげてるのに……」
「大方、基礎の基礎から教えてもらう必要があるせいで成果が出るのはもっと先の先なんでしょ」
「あぁ……」
「納得すんなよ亜季! そこは松隆に怒るとこだろ!?」
「まぁ……。あ、でも、月影くんが勉強教え始めたのって最近だよね?」
「夏休み明けたくらいかな」
「じゃあまだ中間くらいしかないもんね」
「寧ろ一番成果が出やすいんじゃねーの、それ」
「ふ、英語はなんと四十点を超えた!」
「話は変わるけど、そろそろ遥の誕生日じゃん?」
「変えすぎだろ! そんなに俺の英語酷いか!? 誰だよ遥!」
諦めるくらいならなぜ最初に雅の学力を話題にしたのか……。桐椰くんがそれにツッコミを入れることはなく「あぁ、今年もケーキはチョコレートだぞ」とよく分からない返事をする。
「今年も誕生日会やるの?」
「んな大袈裟なもんやんねーよ、小学生の頃の話だろ、それ……。ケーキ作る以外は特に何もしねーよ」
「お前ケーキとか作んの!?」
そっか、今月は遥くんの誕生日で桐椰くんが毎年のごとくチョコレートケーキを作るのかぁ、と私の中ではすっきりしたのだけれど、隣の雅が机でも叩きそうな勢いで叫んだ。そういえば雅は桐椰くんの異常な女子力の高さを知らない……! 桐椰くんも気心の知れた友達以外にはあまり知られたくないのか、ちょっとだけ面倒くさそうに顔をしかめている。
「……別に人並みに」
「謙遜だよ雅。桐椰くん超女子力高いから。弟の遥くんと分担して朝昼晩作るし、掃除丁寧だしシャツもいつもぴっちりアイロン当たってるし、たまに作ってくるお菓子すごくおいしい痛たたたた」