第三幕、御三家の矜持
「初心に戻ってしまえば、別に何がどうということはない。御三家と君は、主従と利害一筋とは言わないが、ただの御三家ともう一人の生徒だ。ただし、最初に話した通り、君だけを御三家は守るし、間には恋愛感情を介在させない。それだけだろう」
月影くんと同じくコーヒーを一本、それからココアを一本買った。熱くないようにセーターの袖を少し伸ばし、掌を覆った状態で掴む。
「誰よりも融通がきかないって思ってたけど、誰よりも物分かりがいいね、ツッキーは」
睨まれた気がした。気にせずに歩き出せば、一つ溜息を吐かれる。
「生憎、あの二人と違って他人に向ける感情が少ないからな」
「すっごい冷たい言葉だけど今はすっごく安心するよ」
「君に限った話ではないんだから冷たくはないだろう」
何かおかしいような気もするけれど、みんなに同じ態度なら冷たいことはない……か?
「因みに鳥澤に関しては心配する必要はない。少なくとも俺は連絡を受ける」
「敢えて空気を読まずに言うと、私は月影くんに連絡するのさえ気まずいんですよね」
「下僕とはいえ何を遠慮することがある。契約の内容はきちんと求めなければ損をするぞ」
「色々とツッコミたいことはあるんですけど、ありがとうございますってことでいいんですかね」
ラウンジに戻ると、黙々と勉強していたらしい鳥澤くんが顔を上げた。
「コーヒー飲める? ココアもあるよ」
「え、ありがとう。桜坂さんはどっちがいいの」
「どっちでもいいよ」
「初々しいカップルだな」
遣り取りを馬鹿馬鹿しいと思ったのか、刺すような皮肉が向けられた。鳥澤くんが震えてるじゃん……。結局ココアを差し出しながら、知らん顔をし始めた月影くんに対して口を尖らせる。
「月影くん……私を虐めるためにここに来てるの?」
「そこまで暇ではない」
「暇そうじゃん?」
ここ数日間、勉強してる姿を見ていないのですが、それは。
「確かに勉強の必要がある君よりは暇だな」
「それただの嫌なヤツだってば!」
月影くんと同じくコーヒーを一本、それからココアを一本買った。熱くないようにセーターの袖を少し伸ばし、掌を覆った状態で掴む。
「誰よりも融通がきかないって思ってたけど、誰よりも物分かりがいいね、ツッキーは」
睨まれた気がした。気にせずに歩き出せば、一つ溜息を吐かれる。
「生憎、あの二人と違って他人に向ける感情が少ないからな」
「すっごい冷たい言葉だけど今はすっごく安心するよ」
「君に限った話ではないんだから冷たくはないだろう」
何かおかしいような気もするけれど、みんなに同じ態度なら冷たいことはない……か?
「因みに鳥澤に関しては心配する必要はない。少なくとも俺は連絡を受ける」
「敢えて空気を読まずに言うと、私は月影くんに連絡するのさえ気まずいんですよね」
「下僕とはいえ何を遠慮することがある。契約の内容はきちんと求めなければ損をするぞ」
「色々とツッコミたいことはあるんですけど、ありがとうございますってことでいいんですかね」
ラウンジに戻ると、黙々と勉強していたらしい鳥澤くんが顔を上げた。
「コーヒー飲める? ココアもあるよ」
「え、ありがとう。桜坂さんはどっちがいいの」
「どっちでもいいよ」
「初々しいカップルだな」
遣り取りを馬鹿馬鹿しいと思ったのか、刺すような皮肉が向けられた。鳥澤くんが震えてるじゃん……。結局ココアを差し出しながら、知らん顔をし始めた月影くんに対して口を尖らせる。
「月影くん……私を虐めるためにここに来てるの?」
「そこまで暇ではない」
「暇そうじゃん?」
ここ数日間、勉強してる姿を見ていないのですが、それは。
「確かに勉強の必要がある君よりは暇だな」
「それただの嫌なヤツだってば!」