第三幕、御三家の矜持
「深古都の家、代々うちの執事の家系なの。だから鬱憤溜まってたんだと思うんだよねー。家にいる間はあんな感じだったけど、外では子分抱えるくらいすごい番長やってたよー。深古都さん──深古都のお父さんにバレたときはめっちゃくちゃに叱られたけどねー。それこそ勘当されるんじゃないかってくらいの勢いで」


 どうやら、ふーちゃんは深古都さんとそのお父さんを呼び捨てとさん付けで区別しているらしかった。

 それはさておき、二人の話はまとまったらしい。ポン、と深古都さんの指が一か所を押さえた。


「もし月影様の読み通りならここでしょうね。あとはその現役の意見を待つとしましょう」


 現役──現役のヤンキーってことか。どうしてか、脳裏に桐椰くんの姿が過ると、妙に胸がざわめいた。

 桐椰くんが来たのはそれからすぐだった。校門で出迎えると、ふーちゃんとその執事に目を点にはしていたけれど、すぐに「菊池の場所、検討ついたって?」とタブレットを覗き込む。緩めのパーカーとスエットは新鮮で、暫くじっと見てしまったけれど、桐椰くんは私に視線を寄越さなかった。


「あぁ、確かにここは溜まってるヤツいるな……。監禁なのは間違いねーの? 動けなくするだけなら人が通らない路地とか駐車場は結構ある」

「監禁である必要はない。ただ、菊池が高校を出てからいなくなるまでの時間は分かっているからな。そこから逆算すれば範囲は絞れる」

「菊池を襲った数は?」

「分からん。詳しくは向かいながら話すが、あまり事を荒立てるつもりがなかったはずなんだ。脅迫半分、暴力半分かもしれん」

「暴力なら分かりやすいんだけどな。人目につかねーように場所選ばないといけないから……」


 不穏なことを言いながら、桐椰くんも加わった三人は手あたり次第潰す場所を決めた。深古都さんが手袋をはめ直しながら「お嬢様」とふーちゃんを呼ぶ。


「車でお連れしても?」

「いーよー」

「助かります」


< 333 / 395 >

この作品をシェア

pagetop