第三幕、御三家の矜持
慌てて怪我を隠してしまったけど、もう遅い。こんな目立つところの真新しい怪我、桐椰くんが気づかないはずがなかった。
でも、月影くんのことは、本当に話していいのか分からなくて。
「……あの、ね。結論から言うと、鳥澤くんが黒だったんだけど」
「そんなの分かってただろ」
「……でも半信半疑だったじゃん」
「菊池の連絡先を聞くようにお前に言うだけでおかしいに決まってたじゃねーか」
雅の連絡先? 月影くんが根拠にしていたのは松隆くんの応援に送り出したことだけだったから、新しい根拠に首を捻ってしまった。
「それって映画見に行った日のことだよね? それの何が……」
「普通、言わないだろ。だってお前と菊池、鳥澤の目の前で話してたんだろ。仮にも告白した相手なんだから、それが別の男と仲良く喋ってたらそんな余裕なくね? しかも彼女どころかフラれてる相手」
「……確かに」
流れるような説明は、大変ご尤もな理屈だった。松隆くんと月影くんからはそんな指摘はなかったけれど、理論派のあの二人からは意見として出てこなくても納得がいく感情面の問題でもある。
「傍目にすげー仲良いのも伝わっただろうし」
「……それどころか私は雅のことを大好きな友達とまで言いました」
「そこまで聞いて、連絡先は聞いとけだの会いたいときに会っとけだの言えるか、普通。友達って言いきられても少しくらい焦るだろ」
「……そっか」
じゃあ、桐椰くんの中ではとっくに鳥澤くんは黒だと断定されていたわけか……。
「……もしかして、月影くんにラウンジに行くようにお願いしてくれた?」
「……まぁ。ラウンジにお前と鳥澤が来たって話聞いたから」
どうりで、月影くんが迷惑そうな態度をとりながらも毎日ラウンジに居座ってくれていたわけだ。月影くん自身がそう判断して来てくれていたとしてもおかしくはないけど、桐椰くんの頼みがあると一層納得できた。
でも。
「……生徒会の仕事って、生徒会室でしかしちゃいけないの?」
「いや、物によっては別の教室でやってもいいけど。なんで」
「桐椰くんがお仕事しながらラウンジにいる選択肢はなかったのかなって……」
敢えてそれを月影くんに任せたのは、どうして。
桐椰くんだったら、今日みたいなことが起こる可能性もなかったはずなのに、どうして。
でも、月影くんのことは、本当に話していいのか分からなくて。
「……あの、ね。結論から言うと、鳥澤くんが黒だったんだけど」
「そんなの分かってただろ」
「……でも半信半疑だったじゃん」
「菊池の連絡先を聞くようにお前に言うだけでおかしいに決まってたじゃねーか」
雅の連絡先? 月影くんが根拠にしていたのは松隆くんの応援に送り出したことだけだったから、新しい根拠に首を捻ってしまった。
「それって映画見に行った日のことだよね? それの何が……」
「普通、言わないだろ。だってお前と菊池、鳥澤の目の前で話してたんだろ。仮にも告白した相手なんだから、それが別の男と仲良く喋ってたらそんな余裕なくね? しかも彼女どころかフラれてる相手」
「……確かに」
流れるような説明は、大変ご尤もな理屈だった。松隆くんと月影くんからはそんな指摘はなかったけれど、理論派のあの二人からは意見として出てこなくても納得がいく感情面の問題でもある。
「傍目にすげー仲良いのも伝わっただろうし」
「……それどころか私は雅のことを大好きな友達とまで言いました」
「そこまで聞いて、連絡先は聞いとけだの会いたいときに会っとけだの言えるか、普通。友達って言いきられても少しくらい焦るだろ」
「……そっか」
じゃあ、桐椰くんの中ではとっくに鳥澤くんは黒だと断定されていたわけか……。
「……もしかして、月影くんにラウンジに行くようにお願いしてくれた?」
「……まぁ。ラウンジにお前と鳥澤が来たって話聞いたから」
どうりで、月影くんが迷惑そうな態度をとりながらも毎日ラウンジに居座ってくれていたわけだ。月影くん自身がそう判断して来てくれていたとしてもおかしくはないけど、桐椰くんの頼みがあると一層納得できた。
でも。
「……生徒会の仕事って、生徒会室でしかしちゃいけないの?」
「いや、物によっては別の教室でやってもいいけど。なんで」
「桐椰くんがお仕事しながらラウンジにいる選択肢はなかったのかなって……」
敢えてそれを月影くんに任せたのは、どうして。
桐椰くんだったら、今日みたいなことが起こる可能性もなかったはずなのに、どうして。