第三幕、御三家の矜持
 走馬燈のように、今日の出来事が頭の中を流れた。でも、血の渇いた首の傷はもちろん、月影くんの語った真実も、それに対する疑惑も、細々と勘繰った月影くんとふーちゃんとの関係も、全部、取るに足らないことのように思えた。

『なんで、俺に……』

「……私」


 口から零れた声は、静かな部屋に思ったよりも響いて、自分の声じゃないみたいで、どこから出たものなのか分からなくて。


「……桐椰くんと……、何、した……?」


 唇に指先を押し当てたときの感触が、その答えだった。

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