第三幕、御三家の矜持
「元々は松隆くんがめちゃくちゃ人気だったけど、桐椰くんも生徒会やって人気ぐんぐん伸びてるしねー。夏くらいから可愛い系で売れてるし」

「……そっか」


 売れてるって、やっぱりアイドルか何かなのかなと思ったけど聞かないでおくことにした。


「あ、それプレゼント?」


 そんな私の微妙な表情に構わず、ひょいとふーちゃんの顔が私の手元を覗き込んだ。ついつい忘れてしまいそうになるけれど、間近で見るとやっぱり美人だ。陶器のように白く透き通った肌には毛穴がないんじゃないかとさえ思わせる。


「なに買ったの?」

「……秘密」


 桐椰くんのイメージに関わるので黙っておくことにした。可愛い系で売れているといっても最低限守らないといけないラインはあるだろう。


「あと、買ったのは私じゃないんだよね。松隆くんが買って、月影くんと私とで割ってるだけ」

「あー、そっか、まぁそうだよねー」

「……で、ふーちゃんは何をしに?」

「何も。たまたま教室出たら通りかかっちゃっただけだよー」


 そっか、ちゃんとまともな感性……いやいや、興味のない人もいるんだもんね。たまたま桐椰くんを好きな人がいすぎるせいでこの有様なだけだもんね。迷惑を考えて桐椰くんには来年から誕生日登校を控えてほしいくらいあるけど。

 とりあえず人の多い場所から去るべく歩き出せば、ふーちゃんが「あ、あたしも帰るー」と隣をついてきた。


「まー、桐椰くんの誕生日に興味がないって言ったら嘘なんだけどねー。プレゼントあげるってことはそれなりに桐椰くんの気を引きたいってことだから、これだけ貢がれてる中で一体なにをあげるんだろうってねー」


 それは桐椰くん自体に興味がないには変わりないのでは、と思ったけど黙っておいた。


「……そういえば水族館のチケット貰ってたのがすごく謎だったんだけど」

「あー、それは一部で流行ってるやり方だよー。チケット一枚だけ渡して『予定の合う日連絡してね』ってLIMEがくるの。強制デートだよ、怖いよねー」


< 346 / 395 >

この作品をシェア

pagetop