第三幕、御三家の矜持
 お腹でも抱えて笑いだしそうな様子で解説されたけれど、謎過ぎるし怖過ぎる。とても推測できる手法じゃないのでなぜふーちゃんが知っているのか疑問だったけれど「去年松隆くんが同じプレゼント貰ってて、これだーって思っちゃった人がいたらしいよ」と言われて納得した。ついでに「因みに松隆くんは同じチケットを二枚組み合わせてカップルに配ってたからカップルからの好感度上がってたよー」と付け加えられて、どこからツッコミを入れるべきか悩んだ。一応松隆くんはプレゼントを全部開封はするんだな。でも容赦なく配布するんだな。あと他人の貢物でデートするカップルはそれでいいのか。


「というか、松隆くんがそんなことしてるって、そのプレゼントは失敗なんじゃ……」

「それがねー、去年は松隆くんが一人だけデートしてあげたんだって」


 ……衝撃の事実。聞き間違えたかと思ったけど「まぁデートの途中で帰られたらしいんだけど。あの王子様えぐいよねー」と付け加えられたのでデートしたことは事実らしい。一体どんな意図でデートに応じたのか、いつもの笑顔を思い浮かべながら考えると、その表情には裏の裏の表の裏のその先に見てはいけない奈落がある気がしてしまったので考えるのをやめた。


「その子がなんで選ばれたのかは誰にも分からなかったからさー、もしかしたらって望みを今回もかけてるのかもしれないねー」


 松隆くんがどういう魂胆で女の子とデートしたのか知らないけど、少なくとも桐椰くんがそんなことをしてくれる可能性はゼロに等しいのでは。そう思ったけどやっぱり口には出さずにおいた。

 そんな話をしていると、下駄箱に差し掛かったところで月影くんと出くわした。私の手に桐椰くん宛てのプレゼントがあるのを見て眉を吊り上げる。


「なんだ、渡していないのか」

「待機時間長すぎて。第六西に置いてこようかなと思ってるんだけど」

「プレゼントくらい直接渡したらどうだ、感じが悪い」

「月影くんにだけは感じが悪いとか言われたくないな!」

「あぁそうだ、丁度良かった」


 私の叫びを無視し、月影くんはカバンの中から書店の袋を取り出し、私の隣のふーちゃんに差し出した。


「薄野、借りていた漫画だ。返す」

「はいはいまいどー」


< 347 / 395 >

この作品をシェア

pagetop