第三幕、御三家の矜持
「……じゃあ別に蝶乃さんでもいいんですけど。この人が私に向かって言った元カレのためなら云々って台詞、なんでそんな台詞を言えたのか答えてくれますか?」
「なにそれ」
「知らないなら割って入ってこないでくださいよ副会長様」
類は友を呼ぶ、と最初に抱いた感想をまた抱いてげんなりしてしまった。蝶乃さんといいこの未海さんといい、私を見下すのはともかく、そのせいで話が進まないなんて勘弁してほしい。
「別に知ってはいるけど」
ただ、それは私の勘違いだったようだ。蝶乃さんは莫迦丁寧に小馬鹿にした表情までつけて答えてくれた。お陰で一気に体温が下がったような心地になる。そんな私の様子に蝶乃さんは一瞬得意げな表情になったけれど、私は別に蝶乃さんの情報網を怖いと思ったわけでもなんでもない。
「……知ってはいるってどういうこと」
もう噂になってる? でも昨日も一昨日もそんな噂は聞かなかった。聞いたのは未海さんの口から発せられたものが初めてだ。蝶乃さんが知っているのは、そんな未海さんの親友だからなのだろうか──。
「だから、その話ならわざわざ説明されなくても知ってるって」
二度も言わせないでよ、と億劫そうな表情で溜息を吐かれる。美少女の憂鬱とでも題名がつけてもらえるとでも思ってるのか、なんだか気取った態度に見えた。私の蝶乃さんに対する偏見がそんな印象を抱かせたのかもしれないけれど。
「桜坂さんが元カレに未練あって、それでもって元カレと仲悪い御三家に囲われてって話でしょ? 事実なんだから言われたって仕方ないじゃない」
「……事実」
「事実でしょ? 元カレか御三家かはっきりしないあなたが悪いんじゃないの? そんなんだから御三家に迷惑かけるんじゃない」
「……確かに御三家には迷惑をかけたけど、それは無関係な蝶乃さんが言うことじゃないよね」
「あ、っそう。なら意見として聞いとけば? いずれにせよ、知らない男達 に襲われた途端にヒロイン気取りなんて、誰が聞いたって呆れるわよ」
まるで私を言い負かしたかのように、淡々と言い続けた蝶乃さんはそう締め括った。呆然としてしまうほど呆れているのは私のほうだ。なんだこの人。急に現れて被害者気取りの生徒会役員の肩をもって私を責めて、得意げに情報を披露するだけなんて、何をしに来たんだろう、この人は。
「なにそれ」
「知らないなら割って入ってこないでくださいよ副会長様」
類は友を呼ぶ、と最初に抱いた感想をまた抱いてげんなりしてしまった。蝶乃さんといいこの未海さんといい、私を見下すのはともかく、そのせいで話が進まないなんて勘弁してほしい。
「別に知ってはいるけど」
ただ、それは私の勘違いだったようだ。蝶乃さんは莫迦丁寧に小馬鹿にした表情までつけて答えてくれた。お陰で一気に体温が下がったような心地になる。そんな私の様子に蝶乃さんは一瞬得意げな表情になったけれど、私は別に蝶乃さんの情報網を怖いと思ったわけでもなんでもない。
「……知ってはいるってどういうこと」
もう噂になってる? でも昨日も一昨日もそんな噂は聞かなかった。聞いたのは未海さんの口から発せられたものが初めてだ。蝶乃さんが知っているのは、そんな未海さんの親友だからなのだろうか──。
「だから、その話ならわざわざ説明されなくても知ってるって」
二度も言わせないでよ、と億劫そうな表情で溜息を吐かれる。美少女の憂鬱とでも題名がつけてもらえるとでも思ってるのか、なんだか気取った態度に見えた。私の蝶乃さんに対する偏見がそんな印象を抱かせたのかもしれないけれど。
「桜坂さんが元カレに未練あって、それでもって元カレと仲悪い御三家に囲われてって話でしょ? 事実なんだから言われたって仕方ないじゃない」
「……事実」
「事実でしょ? 元カレか御三家かはっきりしないあなたが悪いんじゃないの? そんなんだから御三家に迷惑かけるんじゃない」
「……確かに御三家には迷惑をかけたけど、それは無関係な蝶乃さんが言うことじゃないよね」
「あ、っそう。なら意見として聞いとけば? いずれにせよ、知らない男達 に襲われた途端にヒロイン気取りなんて、誰が聞いたって呆れるわよ」
まるで私を言い負かしたかのように、淡々と言い続けた蝶乃さんはそう締め括った。呆然としてしまうほど呆れているのは私のほうだ。なんだこの人。急に現れて被害者気取りの生徒会役員の肩をもって私を責めて、得意げに情報を披露するだけなんて、何をしに来たんだろう、この人は。