第三幕、御三家の矜持
「……月影に嫉妬してたんだなって。美春はきっと月影を好きだったから。月影は一位爆走してるのに、俺は特待なだけなのに、なんで俺とはちぐはぐで月影を好きなんだろうって。そういう、かっこ悪い嫉妬。だから余計、月影を嵌めてやりたいって気持ちになったんだろうなって、今になったら思う。……月影がそういうヤツじゃないって見てれば分かるのにな」


　冷静になるとどうかしてた、そうとでも聞こえてきそうな、淡々と落ち着いた口振りだった。

　鳥澤くんは、あくまで、内心まで含めて自分の所業を告白しきっただけのような顔をしていた。晴れやかでこそないものの、言うべきことは言ったし、言い訳することなんて何もない、詰責なんていくらでも受け付ける──そう、その横顔は言っている気がした。


「……松隆くんと桐椰くん、なんて言ってた？」

「……何も。そうか、って言っただけ。……こんなこと俺が言うのもおかしいけど、責めてほしかった」


　藤木さんとの違いは、月影くんが守りたかったことにあるんだろう。さっきの応接室での態度と同じように、きっと月影くんはこれからも本当のことなんて言わない。鳥澤くんをどうするか、それは月影くん次第で、月影くんがこのままにしておきたいのなら何も口を出すことなんてない、そう言われているような気がする。


「……本当は、俺の問題だったんだ。美春は俺には何も言わなかった。美春の中で俺がその程度だっただけなのに、全部月影のせいにしたかっただけなんだと思う」


　ごめん、と鳥澤くんは小さく口にした。


「ただの、俺の八つ当たりだ。巻き込んでごめん。……あんな思い、させてごめん」


　まるで、今にも息が止まってしまいそうなほど苦しそうな謝罪。

　でも、どうしても、違和感が拭えなかった。


「……鳥澤くん、この話、誰かにした？」

「……この話って？」

「……雁屋さんの話」

「……あぁ……話をしたっていうか、鶴羽に会った後、事件のことをちゃんと知りたくて」


　その口から出てきたのは。


「鹿島に話は聞いたよ」


　いつだって、糸を手繰り寄せた先にいる人。


「……桜坂さん？」

「用事あるの思い出した。じゃあね」

「え、ちょっと……」


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