第三幕、御三家の矜持
 だって、それって、鹿島くんが透冶くんを殺したってこと?

「そう、雁屋。徒会役員でもあったけどな、いつだって親の期待を背負ってた。生徒会役員になったのは親の見栄による命令が七割みたいなもんだった。挙句成績はいつまでたってもあがらない。月影のことを好きな反面、自分の上に居座る月影は心の片隅で邪魔な存在だということを否定はできない。……なんてことに、気付いたらどうする?」


 それって、雁屋さんを(そそのか)したのは鹿島くんってこと?

「生徒会役員会議に参加する役員を恣意的に選ぶことなんて簡単なんだよ、理由なんていくらでもつけられるんだから。雁屋を含む数人を会議から外して、その間は生徒会室が空っぽだって分かれば、ひっそり募った月影への嫌悪感はどうなるんだろう? 薄野がさぼったのは誤算だったけどなぁ、だって薄野がいなければ月影は雁屋への強姦未遂疑惑でとっとと退学だ」


 それって、月影くんを退学にしたくて、雁屋さんを利用したってこと?

「雨柳の一件は本当によく使えたよ。雨柳が死んで、なんであんなヤツの死を背負わなきゃいけないんだって思ってるヤツはいたからね。ちょっとつつけば大声で雨柳を詰る馬鹿しかいない。それを桐椰の前でやれば、桐椰が怒って相手を半殺しにするなんて、いくらでも想像できることだ」


 それって、透冶くんの一件に関わってた生徒達を煽って、わざと桐椰くんを攻撃したってこと?

「残念ながら、桐椰も停学にしかならなかったけどね。本当は退学にするべきか長々と職員会議があったんだよ。あと一歩でアイツは退学だった。雨柳の件で同情されたお陰で首の皮一枚繋がって」


 桐椰くんを退学にするためだけに、桐椰くんを傷つけたってこと?

「藤木も歌鈴も、本当に感情的で扱いやすい二人なんだよ。二人揃ってあの桐椰が好きときた。笑えるね。桐椰と君の関係を見せてるだけで勝手に暴走してくれる。そして菊池は君の忠実な(いぬ)。これだけ駒が揃えば、猿でも君を誘き寄せることができる。それに対する御三家の出方を見れば、君の価値を知るには十分だ」


 私を使ってどこまで御三家を振り回すことができるかを知るためだけに、藤木さんを煽って、雅を巻き込んで、あんな事件を起こしたってこと?

 穏やかで、それでいて残忍さを隠すつもりもない微笑が締め括る。全て計算尽くだったんだと。

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