第三幕、御三家の矜持
 そしてテントに戻ってしまえば再び呼ばれる二人。そして遂に月影くんまで。体育祭実行委員も松隆くんと桐椰くんは「呼ばれたから」以上のコメントをしないので一々インタビューを求めなくなっていたけれど、月影くんには「月影くんには女嫌いとの噂がありますが!?」と俄然勢いづいてマイクを向けていた。でも月影くんは「競技に感情は必要ないので」と今世紀最大級くらいに感じの悪い返事をしていた。何を言われても盛り上げますくらいのテンションの体育祭実行委員もさすがに顔がひきつっていた。私の顔だってひきつった。でも反面、呼びに行ったときに一応断られた私はやっぱり月影くんの友達なのかもしれないな、と謎の自信がついた。

 そんな御三家の気紛れな行動のせいで、障害物競走は、我先にとお題札を捲りに行った女子が躍起になって“気になる異性”札を探すという最早別の競技に成り果てていた。しかも、ゴール地点にいる御三家を連れていくのはゴールまでの距離が短くてルール違反だという声と、御三家が早い者勝ちなんて狡いという声とが戦ったせいで、毎回御三家がテントに戻るまで次のレースが始まらないとの仕様変更が発生した。加えて、お題札は一度捲ると交換不可という条件付なのにそれを破る女子が続出し、そのせいで更に競技が(とどこお)り始めたので、体育祭実行委員が新たに一人駆り出されてお題札地点で見張りをする事態まで発生する始末。実は御三家って生徒会以外からも迷惑な三人組なのでは?と嫌な事実に気付いてしまった。一方で、きちんと生徒会派の女子もいるらしく、鹿島くんと萩原くん (顔をはっきりとは知らなかったけれどゴール地点のインタビューで分かった)が連れて来られているパターンもあった。

 そんな事態のせいで女子障害物競争は予定を大幅に超過して終了した。時間が押してる、と体育祭実行委員の男子は嘆き、体育祭実行委員の女子は、障害物競走に出ればよかった、と泣いた。御三家の影響力は知っていたけど、正直ここまでだとは思っていなかった。普段自分がどんな人達と一緒にいるのかよく分かった。


「そういえば聞いた? 実乃梨(みのり)の話」

「あぁ、松隆くんに来てほしいってお願いして断られたんでしょ?」


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