第三幕、御三家の矜持
 あぁ、やっぱりこのリーダーに隠し事なんて無理だったんだ……。知られて困るわけではないけれど、知らせてどうするんだという(たぐい)のこの情報。ただ、あまりに顔に正直に感情を出すのも松隆くんに失礼な気がしたので、精一杯困惑に止めるように気を付ける。


「で……その、まぁ、なんといいますか、そういうわけで……」

「最近の桜坂と遼とは何があったんだろうと思ってたらそういうことだったんだね」

「……もしかして松隆くん、私の妹が桐椰くんと会ってるの、見た?」

「あぁ、うん。ついさっきね」


 そうか……。きっと、障害物競走に駆り出されていたがゆえに呼ばれた桐椰くんの名前を優実が聞きつけ、一生懸命その姿を探して会いにいったんだろう。そしてそれを松隆くんは見てしまったんだろう。なんとも間の悪いというか、逆にタイミングがいいというか……。どちらかは分からないけれど、少なくとも、松隆くんは可笑しそうに笑っている。


「遼もタイミングが悪いよね。夜中に桜坂の手握って迫ってたと思ったら初恋の人は妹でしたとか。笑える」

「ちょっと待って」


 それどころかそのとんでもない台詞に思わず口を出してしまった。手を握って迫ってた、なんてやっぱりあの日は初めから聞いてたんじゃないですか、と思うと同時に隠し切れない棘には松隆くんの感情が関係あるのかなと思ってしまう。それでもって松隆くんは桐椰くんを煽って同じ土俵に来るように言っておきながら今回の件は“笑える”の一言で一蹴。

 でも松隆くんはきょとんとして「え、だって笑えるとしか言いようがないだろ?」なんてその毒を隠す気もない。


「あれだけ桜坂に構っておいて今になって初恋だよ? ここまで綺麗に擦れ違うと漫画なのかなって思うよね」

「松隆くん桐椰くんに厳しくない?」

「あれだけ煮え切らない態度とられたら厳しくもなるだろ」


 それは松隆くんではなくて桐椰くんの相手の台詞なのでは? 松隆くんが言ってるのは「私のこと好きって言ってたのに今更初恋ってなによ!」という女子の台詞なのでは? というかそもそも、松隆くんと私の関係って、現状なんなんだ。


「あぁ、それでね、桜坂」

「はい……」

「俺の告白は、気にしなくていいよ」

「え?」


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