第三幕、御三家の矜持
「生徒会役員選挙って今月末でしょ? ふーちゃんは役員続けるの?」

「そうだねー、漫画置き続けられるしー。図書役員はうちの学校では日陰者みたいなものっていうのかな? やっぱり目立たないからやりたい人いないしー、今年もあたしが立候補したらそのまま決まるかなーって」

「生徒会役員の人達ってそういう……役職の華々しさみたいなものにも拘るの?」


 生徒会役員が──特に指定役員が──生徒会役員を務める理由なんて、みんなヒエラルキー上位に立ちたい以外にないのでは? きょとんとして首を傾げる。


「えー、もちろん拘るよー。花高って偏差値高いわけじゃないけど、一部の界隈ではそれなりに有名だからさー。それこそ鹿島くんなんて、一年生のときから生徒会長やってましたって言えば一目置かれると思うよ? いろんな二世三世の代表だったってことだもん」


 一瞬説明されていることの意味がよく分からず反応できなかった。でも、その言葉の中に省略されているものを少し考えていると、なんとなく把握できるものがあった。二世三世、なんてお金持ちばかりが集まる花高だから出てくる特徴。つまり、一部の界隈というのはそれなりに財力のある家々の繋がり。そっか、私には縁がないから思いつきもしなかったけど、花高は、社会でも地位と権力をそれなりに持ってる人々の中では有名で、だから花高を卒業することがそれなりの高校を卒業したことの証明になるのか。要は花高の卒業証書が良い家柄を担保しているようなものなんだろう。

 あぁ、どうりで──とあの人の顔が頭に浮かんだ。私をこの高校に通わせることに決めたのは、そういう理由だったのか。


「だから生徒会長は人気だよー。亜季は今年からだから知らないかもしれないけど、去年、鹿島くんの代わりに落選した人なんて親に勘当されそうになって自殺未遂したくらいだもん」

「……はい?」


 唐突かつ思いもよらぬ情報に耳を疑った。そして女子の壁が悲鳴を上げたので、そろそろ松隆くんと桐椰くん、もしくは二年生のリレーがスタートするのだと知る。でもそんなことはどうでもよかった、どうせ見えないし。


「そんな……熾烈(しれつ)な争いなの、生徒会役員選挙って……」

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