第三幕、御三家の矜持
「ていうか亜季、御三家とっくに走り終わってるよ? いいの?」
「え? あ、うんうん。どうせ最後の色別リレー出るでしょ」
「……亜季って本当に御三家の友達なんだね」
つまんない、とでも言いたげな顔だった。「でもだから友達でいられるんだろーね」と理解はしてくれる。本当は中でごちゃついているとは口が裂けてもいえない。なんなら、さっき松隆くんにもう告白は忘れていいと言われたことも。
「まぁ、そうだね……」
「ていうか、それなら鳥澤くんと付き合えばいいのに」
鳥澤くんは評価高いよ!とふーちゃんは親指を立ててみせた。それはふーちゃんの情報を聞いていれば分かる。でも、それとこれと好きとは別問題だと思うのは、私だけだろうか。
『彼氏彼女って肩書きの前提には恋があるなんて偏見にもほどがあるね』
そもそも、付き合うのに“好き”という感情は必須ではないのだろうか。
『ごめん、亜季』
そんなことを考えると、ふと、あの人との別れ話を思い出す。
『俺も、そんな亜季とは付き合えない』
詳しくは話さなかったから、あの人が私と別れた一番の理由が何にあったのか分からない。でもあの時の話しぶりからして、あの人は私の──属性みたいなものを、一番の理由にしたんだと思ってる。そうだとしたら、付き合うためには、いくつかの条件が整っていることが必要なのだろうか。逆に、整ってさえいればいいのだろうか。
「別に好きじゃなくても取り敢えず付き合うのはありだと思うよ?」
そんな私を見透かしたように、ふーちゃんは背中を押した。
「付き合ってから好きになるパターンもあるだろうし。ていうか本当に好き合って付き合うとか現実じゃそうないって」
「……そうかな」
「ていうか、どこからが両想い付き合うパターンなのかな的な? 好きな相手には優しくするだろーし、そうなったら相手のこと気にならない確率のほうが低いだろーし、それでどっちかが告白して付き合いましたって、それって本当に両想いから付き合うパターンなの? みたいな感じしない?」
ご尤もだ。突き詰めて考えるとその通りだ。意外と理屈っぽいな、ふーちゃん。
「まぁ……」
「でも桐椰くんのこと好きならやめといたほうがいいんだろうねー」
「え? あ、うんうん。どうせ最後の色別リレー出るでしょ」
「……亜季って本当に御三家の友達なんだね」
つまんない、とでも言いたげな顔だった。「でもだから友達でいられるんだろーね」と理解はしてくれる。本当は中でごちゃついているとは口が裂けてもいえない。なんなら、さっき松隆くんにもう告白は忘れていいと言われたことも。
「まぁ、そうだね……」
「ていうか、それなら鳥澤くんと付き合えばいいのに」
鳥澤くんは評価高いよ!とふーちゃんは親指を立ててみせた。それはふーちゃんの情報を聞いていれば分かる。でも、それとこれと好きとは別問題だと思うのは、私だけだろうか。
『彼氏彼女って肩書きの前提には恋があるなんて偏見にもほどがあるね』
そもそも、付き合うのに“好き”という感情は必須ではないのだろうか。
『ごめん、亜季』
そんなことを考えると、ふと、あの人との別れ話を思い出す。
『俺も、そんな亜季とは付き合えない』
詳しくは話さなかったから、あの人が私と別れた一番の理由が何にあったのか分からない。でもあの時の話しぶりからして、あの人は私の──属性みたいなものを、一番の理由にしたんだと思ってる。そうだとしたら、付き合うためには、いくつかの条件が整っていることが必要なのだろうか。逆に、整ってさえいればいいのだろうか。
「別に好きじゃなくても取り敢えず付き合うのはありだと思うよ?」
そんな私を見透かしたように、ふーちゃんは背中を押した。
「付き合ってから好きになるパターンもあるだろうし。ていうか本当に好き合って付き合うとか現実じゃそうないって」
「……そうかな」
「ていうか、どこからが両想い付き合うパターンなのかな的な? 好きな相手には優しくするだろーし、そうなったら相手のこと気にならない確率のほうが低いだろーし、それでどっちかが告白して付き合いましたって、それって本当に両想いから付き合うパターンなの? みたいな感じしない?」
ご尤もだ。突き詰めて考えるとその通りだ。意外と理屈っぽいな、ふーちゃん。
「まぁ……」
「でも桐椰くんのこと好きならやめといたほうがいいんだろうねー」