第三幕、御三家の矜持
そんな感じで赤組応援プログラムも無事終了、桐椰くんは最初から応援団でしたといわんばかりに馴染んでて、プログラムが終わった後に応援団だけが撮る写真の中にも入っていた。こうして見ていると、とことん桐椰くんだけが御三家の中で普通というか、親しみやすいというか……。
「亜季、着替えないの?」
「あ、着替える着替える」
汗をかいてしまった浴衣の胸元を少し寛げ、頭の中にある体育祭プログラムを思い返す。この後は一年生の男女混合競技、二年生の男女混合競技があった後、女子全員の棒奪いと男子全員の騎馬戦があって、選抜リレーが最終競技になって終了だ。午前中に障害物競争以外何もしなかったせいか、午後には役目がてんこ盛りのような気がしてしまうけれど、桐椰くんみたいに運動神経の良い人は朝から夕方まであちこちの競技に引っ張りだこだから、それに比べれば随分マシだ。
桐椰くんは逃げられたかな、と視線を向けると、応援団の塊の中にもう金髪はいなかった。さすがの桐椰くんもいつまでも付き合うほどお人好しではないようだ。
「段々増えたねー、観覧席」
「ん?」
「ほらー、父兄その他だよ」
ふーちゃんに言われて辺りを見回すと、確かに、明らかに保護者ではない大学生くらいの人達や、中高生がぱらぱらといた。思わず頭の中には優実が浮かぶ。
「……文化祭は分かるんだけど、体育祭を見に来る人達って何が目的なのかな」
「えー、桐椰くんの腹筋とか?」
そんなピンポイントな目的なんですか? 胡乱な目を向ければ、「冗談だよー、半分くらい」とふーちゃんは笑う。
「花咲高校の生徒はほらー、お金持ち多いし、今は有名な御三家もいるし。お友達になるチャンスは逃したくない人が多いんじゃないかなー」
「でも体育祭って招待券とかないよね? 体育祭だけ入校規制緩いの?」
「まさかぁー。体育祭に招待券ないのは、生徒の家族が一緒にいないと入れないようにするためだよ」
校門で身分証提示必要なはずだよ、とふーちゃんは説明者よろしく人差し指を立てて見せた。なるほど。因みにふーちゃん曰く、松隆くんのお父さんみたいなレベルになると顔パスだそうだ。そしてそういう人に限って息子の体育祭なんて見に来る暇なんてないんだと。
「亜季、着替えないの?」
「あ、着替える着替える」
汗をかいてしまった浴衣の胸元を少し寛げ、頭の中にある体育祭プログラムを思い返す。この後は一年生の男女混合競技、二年生の男女混合競技があった後、女子全員の棒奪いと男子全員の騎馬戦があって、選抜リレーが最終競技になって終了だ。午前中に障害物競争以外何もしなかったせいか、午後には役目がてんこ盛りのような気がしてしまうけれど、桐椰くんみたいに運動神経の良い人は朝から夕方まであちこちの競技に引っ張りだこだから、それに比べれば随分マシだ。
桐椰くんは逃げられたかな、と視線を向けると、応援団の塊の中にもう金髪はいなかった。さすがの桐椰くんもいつまでも付き合うほどお人好しではないようだ。
「段々増えたねー、観覧席」
「ん?」
「ほらー、父兄その他だよ」
ふーちゃんに言われて辺りを見回すと、確かに、明らかに保護者ではない大学生くらいの人達や、中高生がぱらぱらといた。思わず頭の中には優実が浮かぶ。
「……文化祭は分かるんだけど、体育祭を見に来る人達って何が目的なのかな」
「えー、桐椰くんの腹筋とか?」
そんなピンポイントな目的なんですか? 胡乱な目を向ければ、「冗談だよー、半分くらい」とふーちゃんは笑う。
「花咲高校の生徒はほらー、お金持ち多いし、今は有名な御三家もいるし。お友達になるチャンスは逃したくない人が多いんじゃないかなー」
「でも体育祭って招待券とかないよね? 体育祭だけ入校規制緩いの?」
「まさかぁー。体育祭に招待券ないのは、生徒の家族が一緒にいないと入れないようにするためだよ」
校門で身分証提示必要なはずだよ、とふーちゃんは説明者よろしく人差し指を立てて見せた。なるほど。因みにふーちゃん曰く、松隆くんのお父さんみたいなレベルになると顔パスだそうだ。そしてそういう人に限って息子の体育祭なんて見に来る暇なんてないんだと。