第三幕、御三家の矜持
 一応緑組の中から鹿島くんは見つけたけれど、どんなに見た目が良くても中身が好きになれないので仕方がない。ふーちゃんはきょとんとしたけれど「御三家の敵だしそうだよね」なんて勝手に納得した。こういうときは対立構造も便利だ。

 ピーッ、と再び笛が鳴り、白組と緑組の騎馬は一斉に中央へ突進する。そうそう、とその様子を見ながら一人で頷く。普通はこんなふうに何の策もなく中央でぶつかりあうのが騎馬戦だ。まずは松隆くんでも見よう、と双眼鏡で追っていると、早速三年のハチマキを奪った。背後から近づいて、まるで狩るように。


「リーダー、せこ……」


 松隆くんらしい勝ち方だ。気づいた緑組の騎馬が松隆くんに狙いを定めれば、今度は正面から堂々と取っ組み合いになり──躊躇なく相手を落とす。ふぅ、と額の汗を拭う松隆くんは確かに絵になるけれど、それを補って余りあるその容赦のなさ。

 もう少し平和な戦いが見たいな……、と月影くんを探す。見つからない。確かにこの混戦では最初から見ていないと分からなくなってしまうのも当然──と思ったところで、見つけた。既に敗北して騎馬を崩し、騎馬の控えとなる位置で座っている。


「ツッキー雑魚っ!」


 松隆くんと桐椰くんの活躍を見ていたせいで余計に弱く見える。だから月影くんを騎馬にするのは違うんじゃないかって思ったのに。

 今更松隆くんの騎馬を探す気にはならず、双眼鏡を覗くのをやめて待っていると、すぐにピーッという音が鳴り、各組の騎馬が持ち場に戻る。赤組と黄組との対戦ほど歴然としていないとはいえ、白組が緑組に大勝したようだ。

≪第二戦、白組の勝利!≫

「まぁそうなるよねー。白組は団長が強いもん」

「そうなんだ」

「お陰で松隆くんと桐椰くんの対決見れそうだよね。眼福眼福」


 うんうん、とふーちゃんは台詞通り満足げだけど、やっぱり月影くんの名前は出ない。まぁ騎馬戦は月影くん役立たずだからな……とそっと視線を下に落とした。

≪続きまして、第二回戦、青組VS赤組≫

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