第三幕、御三家の矜持
 青組との闘いでも、赤組団長が「右翼、回り込めー!」と声を張り上げ、ドドドッと命令の通り右翼にいた騎馬が素早く動く。多分右翼に配置されていた騎馬達は足が速いんだろう。さっきのことといい、予行演習もないのによくやるな、なんて関心してしまう。実際、青組は黄組との戦いをみて、赤組に何らかの戦略があること警戒はしていたのだろうけれど、対策を講じたところでそれが組全体に行き渡るわけもなく、赤組の動きに翻弄(ほんろう)されていた。

≪第三戦、赤組の勝利!≫

 お陰で赤組の前に呆気なく敗北。クラブチームじゃあるまいし、騎馬戦で昨年度優勝組だった事実が何の強さも担保しないのは当然だ。

≪続きまして、四位決定戦、黄組VS緑組≫

 決勝戦は盛り上がるのでとりに持ってきて、まずは敗者戦。どちらの組にも見る相手はいないので、私達のテント前に待機している赤組男子の中から桐椰くんを見つけて観察する。戦場は黄組と緑組の騎馬戦で盛り上がっているので、赤組男子の話し声まではさすがに聞こえない。

 その桐椰くんのところへ団長がつかつかと歩みよって来たかと思うと、その肩を力強く組んで耳打ちする。桐椰くんが顔をしかめれば、説得するようにまた何かしら話し、桐椰くんが手を振って拒否して……なんて遣り取りを何度か繰り返していた。

 結局交渉か戦略かが決裂したらしく、団長は最終的に額を押さえ、桐椰くんが軽く頭を下げていた。一体何だというのか。

≪緑組の勝利!≫

 その司会を合図にしたように、団長はもといた自分の騎馬のところへ戻る。司会は淡々と





≪続きまして決勝戦、赤組VS白組≫と進め、笛の音と共に騎馬が組まれる。戦場の手前に並んだ騎馬の中から松隆くんと桐椰くんを探すと、松隆くんは桐椰くんは戦場の対角線上に位置しているので、二人がぶつかることはなさそうだ。

 ピーッ、という音と共に赤組と白組の騎馬が駆けだす。赤組団長はまた何やら「左翼」だのなんだの戦国マニアっぽい指示を出している。団長の相談が何だったのかは分からないけれど、前回と変わらずハチマキをとったり騎馬を崩したりと活躍中だ。

 大して変わり映えしない戦い方だな、と折角貸された双眼鏡から目を離す。ふーちゃんは食い入るように双眼鏡を覗き込んでいるので話はできなさそうだ。

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