西篠成海は推し変させたい
次の日、友達に「最近、西條成海を知った」と話した結果「ああ、佐月、好きな芸能人聞かれて松村浩之って答えるもんね。50歳の大御所もいいけど、まあ普通に20代のイケメンも推しな?」さも当然のように西條くんが認知されていることを改めて知った。人としての弁えはあったので、その西條くんがうちに遊びに来ているなど口が裂けても言わなかった。
「20代のイケメン……」
「珠玉のイケメンって言われてっからね。でも2年くらい前までマジ無名だったんだよね、ゴリゴリの役者志望でさ、でも最初はモブ役ばっかだったし、そしたらあんま顔に注目されないし」
「珠玉のイケメン……」
「いやマジ宝っしょ、宝。それ以外に形容が必要ないくらい超イケメン、あらゆる恋愛ドラマで主役張ってほしいわ、全ヒロインが惚れるわ」
そうかあ、西條くんはイケメンなのかあ。確かに歯はホワイトニングしたみたいに綺麗だし、肌だってどんな高級洗顔料も敵わない遺伝子の暴力的な綺麗さだし、ちょっと存在感のある眉も言ってしまえば凛々しいし、ぱっちり二重との組み合わせがいい。よくよく思い出してみれば、定規でも当ててみたくなるような鼻の高さもしている。
「……そうかあ」
「佐月はどうせ『好きな芸能人って聞かれたら西條成海って答えよう』程度なんだろ。目、腐ってるもんな」
「失敬な、濁りもなければ皮膚から飛び出てもないわ」
しみじみと、そうかあ、西條くんみたいな顔をイケメンというのかあ、そう頷いていたのがバレてしまったかのように、後日、西條くんは雑誌を複数冊携えてうちにやってきた。バッ、と広げられた表紙には全て西條くんの顔があった。そしてその中には、確かに「珠玉のイケメン」という煽りもあった。
「……気になってたことがあるんだけど」
「なんですか?」
「……ここまで珠玉のイケメンって言われると、毎朝自分の顔を鏡で見て『珠玉のイケメン顔だな』とか思うの?」
「自分の顔は自分の顔ですよ」
「ああ、そういうもんなのかあ」
「成海、いいから対戦やろうぜ。マジ豚に真珠ってヤツだから」
西條成海が家に来ることの価値を理解しない佐月に何を言ったって無駄だ、そういうことだ。実際、西條くんがうちに来ることは「佑馬の友達が家にくる」以上の意味を持つものではなかった。
「20代のイケメン……」
「珠玉のイケメンって言われてっからね。でも2年くらい前までマジ無名だったんだよね、ゴリゴリの役者志望でさ、でも最初はモブ役ばっかだったし、そしたらあんま顔に注目されないし」
「珠玉のイケメン……」
「いやマジ宝っしょ、宝。それ以外に形容が必要ないくらい超イケメン、あらゆる恋愛ドラマで主役張ってほしいわ、全ヒロインが惚れるわ」
そうかあ、西條くんはイケメンなのかあ。確かに歯はホワイトニングしたみたいに綺麗だし、肌だってどんな高級洗顔料も敵わない遺伝子の暴力的な綺麗さだし、ちょっと存在感のある眉も言ってしまえば凛々しいし、ぱっちり二重との組み合わせがいい。よくよく思い出してみれば、定規でも当ててみたくなるような鼻の高さもしている。
「……そうかあ」
「佐月はどうせ『好きな芸能人って聞かれたら西條成海って答えよう』程度なんだろ。目、腐ってるもんな」
「失敬な、濁りもなければ皮膚から飛び出てもないわ」
しみじみと、そうかあ、西條くんみたいな顔をイケメンというのかあ、そう頷いていたのがバレてしまったかのように、後日、西條くんは雑誌を複数冊携えてうちにやってきた。バッ、と広げられた表紙には全て西條くんの顔があった。そしてその中には、確かに「珠玉のイケメン」という煽りもあった。
「……気になってたことがあるんだけど」
「なんですか?」
「……ここまで珠玉のイケメンって言われると、毎朝自分の顔を鏡で見て『珠玉のイケメン顔だな』とか思うの?」
「自分の顔は自分の顔ですよ」
「ああ、そういうもんなのかあ」
「成海、いいから対戦やろうぜ。マジ豚に真珠ってヤツだから」
西條成海が家に来ることの価値を理解しない佐月に何を言ったって無駄だ、そういうことだ。実際、西條くんがうちに来ることは「佑馬の友達が家にくる」以上の意味を持つものではなかった。