君と恋とエトセトラ
 ……というのが、一年前の話なのである。お陰で一年間この二人の仲の良さを見せつけられた!

 ガバッ、と立ち上がり、冷蔵庫から牛乳を取り出し、紅茶に入れて少し熱さを冷ます。氷洞は紅茶を中途半端に(ぬる)くするなんて、と顔をしかめるけれど、今はそんなの構ってられない。飲みやすくなった紅茶をぐびっと飲み干した。


「ごちそうさま!」

「そんな身長伸ばしたい小学生が牛乳一気飲みするみたいな……」

「何、雪より小さいの気にしてんの、白銀」

「そんなこと言ってないだろ! 用事できたから帰る!」


 用事できたって何だ、と二人が揃って胡乱な目を向けるのが分かる。いいんだよ用事ができたんだよ!

「じゃ、俺帰るから! 施錠頼んだぞ!」

「了解」


 当然のようにソファに隣り合って座ってる自称幼馴染二人め! キッと睨みつけるけど二人は手を振るだけだ。くそっ!





 東高からも駅からも少し離れた、ちょっと不便な場所にある公園。噴水が一つとベンチがいくつかあるだけで、基本的にジョギングコースって感じだ。お陰で夕方を過ぎると小中学生もいなくなって、一人になりたいときにはいい場所。

 だから時々、三人くらい座れるベンチを一人で占領する。大体今日みたいにコーラ片手に。


「……なんかなぁー」


 雪斗と氷洞の仲が良いのは仕方ない。幼馴染だし。いや幼馴染にしたって仲良すぎるとは思うけど、家も隣らしいし。氷洞が青龍にいるのも多分雪斗が青龍にいるからだし。


「別に付き合ってもどうとか言わないけど、本当疎外感とかさぁ……」


 ちぇっ、と胡坐をかいて頬杖をついていると、視界の隅に南高の制服が映った。まぁ南高からは近いからいてもおかしくはないな。とはいえ、一人でいるなんて珍しいけど……と視線を向けると、「お」と目が合った。


「百一代目じゃん! なげーし、青龍って紛らわしいから白銀でいいよな!」

「あ?」


 さも知り合いのように話しかけられたけど、誰だコイツ。明るい茶色の髪は短く、顔は薄くてバランスよく整っていた。色も白い。中性的な顔立ちってヤツだな。身長は俺よりちょっと小さいくらいか。


「誰だお前」

「おいおい、一回挨拶しただろ? 百代目はスゲー頭良いって聞いてたけど、百一代目は鶏頭かよ」

「なんだと! お前の顔に見覚えなんて──」


< 42 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop