君と恋とエトセトラ
 ややあって、「はっはーん」と怪しげな笑みが向けられた。


「お前そういうことか。青龍内恋愛禁止のルールに胡坐かいてたら相棒に染に好きな女盗られましたってか!」

「んなこと一言も言ってねーだろ! 俺が言ってんのはだな……、その、俺の相棒なのに氷洞と二人ばっかり仲良くて俺が入り込めないって話だよ!」


 ぷぷぷ、と楽しそうな朱雀の顔を見てむかっ腹が立つと同時に、自分のやるせない感情の中身が分からずに慌てて口走ったその言葉。朱雀の笑みはきょとんと不思議そうなものに変わった。


「ん? なんだ、お前が嫉妬してんのは氷の女王に対してか」

「ん? うん? まぁそうなるのか……?」


 尋ねられるとよく分からない。はて、と腕を組んで首を捻る。あの二人の距離感が羨ましいのは本当だ、だって氷洞は俺が風邪ひいても「早く帰ったら?」と冷たい目でマスクをしながら促すだけだし、復帰したら復帰したで「ぶり返さないように早く帰ったら?」とやはりマスクを外さずに促すだけだ。俺は病原菌扱い。それなのに雪斗が風邪をひいたら、わざわざ病原菌の充満する病人の部屋に入ってまで看病するときた。扱いが違い過ぎる! 俺だって氷洞と仲良くなったのに!

「なんだー、お前が好きなの、氷の女王じゃなくて白鴉か。早く言えよ」

「え、いや俺は雪斗も好きだけど同じくらい氷洞も好きだぞ……?」

「……公式に二股宣言するのやめろよ」

「ん? そうなるのか?」

「まぁ確かに白鴉美人だよな……アイツが女装したらこの俺でも勝てるかどうかちょっと怪しい……。つか白鴉が好きなのにアイツ以上に美人な俺に惚れないってどういうことだ!?」

「いや待て今何の話してんだよ」


 憤慨して俺に掴みかかろうとする朱雀、お前一体俺のなんなんだ! 何ポジションなんだ! つかお前の性別は結局何で考えればいいんだ!

 そこから訊ねたかっただけだというのに、朱雀は「ん?」と不審げに眉を寄せたまま首を傾けた。


「だからお前はあれだろ、バイなんだろ」


 ……チガウ。がくっと肩を落とした。ヤバイ何も伝わってない。


「違うっての! 俺の恋愛対象は女だよ残念だったな!」

「別に残念じゃねーよ確認しただけだろうが! お前が氷の女王に嫉妬してるとか言い始めるから妙なことになったんじゃねーか!」

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