君と恋とエトセトラ
第七話 幹部制度導入会議
「おい、氷洞」


 本部に入ってきた羽村は、白銀もいるというのに、なぜか私に声をかけた。

 羽村績(つむぎ)、本部に入ってくる数少ない主要メンツの一人。幹部制があればナンバー3を名乗ってるだろう。名前の響きは中性的だけど、見た目も性格もばっちり男だ。身長は一七〇センチ弱とやや低めだけれど、体つきはガッチリとした筋肉質。安っぽい金色の髪はいつも短く、ザ・体育会系。真っ赤なTシャツの上に羽織っている白シャツは皺だらけで、脱ぐたびに丸めているのがよく分かる。


「なに?」

「いまの青龍って女オッケーだよな?」


 ドッカリと羽村はソファに腰を下ろした。これまたなぜ白銀ではなく私に訊くのだろう。


「オッケーなのは私がいる通りだけど……なんで? 決めるのは白銀だから白銀に訊けば……」


 白銀もそこにいるわけだし、と向かい側のソファに座る白銀を示す。白銀はマグカップ片手に固まり、無表情で羽村を見つめている。傍目にクールに見えるその内心、多分“きょとん”だ。


「いやぁ、その、哲久に訊いても良かったんだけどさ。つかこういうのをリーダーに訊くべきとは分かってんだけどさ……」


 羽村は気まずそうに白銀をチラチラと見る。なんだなんだと眉を顰めていると、羽村はこそっと私に耳打ちした。


「……お前、雪斗と付き合ってないんだよな?」

「付き合ってないけど」


 いい加減その手の話は聞き飽きたし、わざわざ白銀の前で隠すものでもないので即答した。羽村も、付き合ってないとなれば特に問題はなかったらしく「そうかぁー」と安心したように大袈裟なリアクションをとる。


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