君と恋とエトセトラ
「いやぁ、氷洞がいる理由がいまいち分かってなくてさ。雪斗の彼女枠なのか、ふつーにメンツなのか」

「寧ろそれ俺に訊けよ。わりと氷洞に失礼じゃね?」


 わりとというかストレートに失礼なんだけれど、裏表のない羽村に悪気がないのは分かっているので気にならない。


「別にいいけど、そんなこと聞くなんて急にどうしたわけ」

「溜まり場に女子出入りしててさ。かーなり可愛い子なんだけど」

「ほうほう」


 質問の意図は分からないままなのに、可愛い点に問答無用で食いつく白銀。それどころかそのまま「芸能人とかに似てる?」「TKT48にいそうな顔!」「マジか! いいな!」なんて二人は盛り上がる。

 溜まり場と本部は別物だ。溜まり場は青龍のメンツか否かを問わず出入り自由で(とはいえ、わざわざ不良の巣窟に乗り込む生徒はいないので青龍のメンツしかいない)、必然的にちょっと広い教室があてがわれている。本部の真下にある教室で、白銀や雪みたいに、基本的に本部に居座っている主要メンツであっても時々は顔を出す。ただ、あくまで時々であって常にいるわけじゃないから、女子が出入りしているとは知らなかった。大体、溜まり場なんて男しかいないからあんまり女子は出入りしたがらないものなんだけど……。


「身長は? 小動物系?」

「そうそう、百五十センチないくらいの可愛い感じ」

「あーいいなー」

「しかも妹系なんだよなぁ」

「あーいいないいな」

「だから俺達の代も結構デレデレしちゃっててさー、いや分かるんだけどね? すげー可愛いし、マジで会いに行けるアイドルみたいな」

「いいから話を早く進めろ」


 そのまま一向に進む気配のない男二人の話に思わずピシャリと言い放ってしまった。終止符を打たれた白銀と羽村はピシッと背筋を伸ばす。


「で、績、その女子がどうした? つか名前なに?」

「名前は遊佐(ゆさ)莉乃(りの)ちゃん」

「莉乃ちゃんかぁ」

「だから話を進めろ」

「でな、完全に俺達に馴染んじゃってるけど、女子禁止ならさっさと注意したほうがいいかと思って訊きに来たわけ」

「別に女子禁止じゃねーけど」


 度々脱線していた二人は漸く本題に入った。とはいえ、いまの青龍が女子を禁止していないのは周知の事実。特に問題も何もなさそうだけれど、白銀は少し眉間に皺を寄せて考え込んだ。


< 49 / 86 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop