君と恋とエトセトラ
第十話 警邏戦線異常あり
『痛ッ──』
間違いないのは、叩きつけられた肩の痛みくらいだった。
唇の触れ合う瞬間も、舌を絡め合う感触も、服の中に滑り込む手の温度も、どれもこれも、現実には思えなかった。
『足、開けよ』
それまで感じたことのない恐怖に、耐えられなかった。
だから私は、雪を置いて、逃げ出したのだ。
ひとりだった、雪を置いて。