CRAZY LOVE


車を走らせて数分。


薄暗く人通りの少ない高架下へ停車した車。


中の様子が一切見えないスモーク仕様のガラスにも関わらず、車内にまで響く程の出迎えの声。


待ち構えていた集団が恭しく頭を下げ、一人の男が後部座席のドアを開ける。



「お疲れ様です。お待ちしておりました。リョージさんは今こちらに向かっています」

「お疲れさん。首尾は?」

「順調です。サツの心配も不要です。そちらの方も抜かりなく手を回しています」



流石と言うべきか、言わずとも相手の意図を察し応える。アイツの兵隊はどいつもこいつも優秀で助かる。



助手席側の窓を下げるように叩き、此処まで意気揚々と送迎ドライバーを務めたタイチに、「ご苦労さん。もう休んでいいぞ。迎えはいらねぇから」と、帰宅するよう命じたが、一向に出る気配のない車。



「なんだ~?どうした?」

「あのですね……
一目見るだけでもダメっすか?」

「あ゛?」

「俺もリョージさんをお出迎えしたいっす」


目を輝かせながら懇願してくるタイチの反応に、無意識に眉間に力が入るのは当然の結果で。


「俺の命令は絶対だ。さっさと帰れ」と、一蹴する。


「っ…すすみませんでした!
タイチ帰宅します!」


さっき迄の態度と180度変わり、敬礼ポーズを取り素直に従ったタイチは車を急発進して逃げるように消えていった。


相変わらず逃げ足だけは早い男だ。





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