本当の姿は俺の前だけな
第11話 司という存在
○電車の中(朝)
一駅が長く感じる莉奈。
視線はずっと司の瞳を見つめている。
無言が続く中、莉奈は重い口を開いた。
川崎莉奈「あ、あの、何かお話しませんか?」
見つめ合いに耐えられなかった。
恥ずかしさが残る顔で提案した。
鬼龍院司「話か…。そうだな、莉奈、学校は楽しいか?」
川崎莉奈「司先輩と一緒にいられる時間は楽しいですよ」
鬼龍院司「なるほど。では他の時間は楽しくないという事か」
司の告げた真実に莉奈の心がチクリと反応する。
反論しようにも莉奈から言葉が出てこない。
乾いた笑顔となり少し考え込んだ。
川崎莉奈(そう言われるとそうなんだけど…)
(でも胸がない私には自信がないよ)
トラウマがどうしても莉奈の一歩を止める。
顔が暗くなり恐怖で体が震え出した。
鬼龍院司「どうした、莉奈?」
心配した司が莉奈に声を掛けるも無反応。
震えに気がつくと、優しく抱きしめた。
鬼龍院司「悪いな、変な事聞いて」
川崎莉奈「ううん、司先輩が悪いんじゃないんです」
(自分の弱さが原因なのに…)
(司先輩の胸って、温かいよ)
司の胸に莉奈は顔を埋める。
心の中で涙を流していた。
川崎莉奈「…もう、大丈夫です。私、司先輩に甘えっぱなしですけど、司先輩と出会えて幸せです」
鬼龍院司「莉奈は俺にとって女神なんだ。むしろ感謝するのは俺の方だ」
莉奈の顔に優しく触れる司。
温もりが伝わると莉奈に笑顔が戻った。
川崎莉奈「私、自分に自信がないんです。胸が小さくて…だから、人と接するのが苦手なんですよ」
力強い声で莉奈は司に伝えた。
鬼龍院司「莉奈は繊細なんだな。大丈夫、俺が守るから安心しな」
優しい眼差しを莉奈に向ける。
人を惹きつける魅力があった。
川崎莉奈「司先輩は優しすぎますよ。私、勇気を出してみます」
司の言葉が莉奈から不安を消し去る。
莉奈は司に寄り添い温もりに幸せを感じていた。
○撮影現場までの道(朝)
目的地の駅で電車を降りる2人。
改札を通った瞬間から、司が莉奈手を握った。
川崎莉奈「つ、司先輩!?」
突然の出来事に驚く莉奈。
顔は戸惑っていた。
鬼龍院司「む? 莉奈、どうした?」
司は何か失礼でもしたのかという顔をする。
川崎莉奈「そ、その…。手が…」
ほんのり顔が赤く染まる莉奈。
小さな声で何か言おうとした。
鬼龍院司「あぁ、恋人同士なんだから繋ぐのは当たり前だろ」
川崎莉奈「それはそうなんですけど…。いきなりだったし、それに学校の人に見つかったら…」
鬼龍院司「心配しすぎだ、莉奈。誰にも会わないから安心しな」
司は優しい瞳で莉奈を見つめた。
川崎莉奈(司先輩って不思議な力があるみたい)
(ただの言葉なのに…心を優しく包んでくれるよ)
根拠なき司の言葉だが、莉奈は安心した顔となる。
莉奈に笑顔が戻った。
川崎莉奈「ありがとうございます」
鬼龍院司「何があっても、莉奈は俺が守るからな」
莉奈の握る手の力が強くなる。
嬉しさで笑みを浮かべていた。
川崎莉奈「あの、司先輩に聞きたい事があるんですけど…」
畏まった顔で莉奈が言う。
鬼龍院司「なんでも聞いてくれ。莉奈には俺のすべてを教えるぜ」
甘い笑顔で司が返事した。
川崎莉奈「司先輩は、学校とそれ以外で自分の呼び方を変えてるんですか?」
鬼龍院司「学校は閉じた世界だが、他で俺様とか言ってたら変に思われるからな。せめて学校では本当の自分でいたいのさ」
司は遠くを見た。
川崎莉奈「私と逆なんですね」
鬼龍院司「そうだな、だから莉奈とは気が合うのかもしれないな」
2人から笑い声が聞こえた。
川崎莉奈「そういえば、さっきから周囲の視線を感じるんですけど」
莉奈が見回すと通行人の視線は2人に向けられていた。
鬼龍院司「そこまで気にする必要はないだろう。きっと俺が莉奈という女神と一緒だから羨ましがってるだけじゃないか?」
川崎莉奈「つ、司先輩、声が大きいですからっ」
恥ずかしさから赤面する莉奈。
鼓動が跳ね上がり縮こまってしまった。
鬼龍院司「ここが撮影現場だ」
川崎莉奈「建物の中なんですね」
大きめのビルを目の前に莉奈は緊張する。
司は莉奈の肩を優しく掴み、建物の中へ入っていった。
○撮影現場(朝)
2人は地下へと続く階段を降りる。
目の前には広い空間が目に映った。
鬼龍院司「ここで撮影するんだぜ」
手を前にかざす司は自信満々だった。
川崎莉奈(スタッフさんとかいっぱいいるよ)
(それに…モデルさんもイケメンばっかりだ)
場の雰囲気に飲まれそうになる莉奈。
その場で固まっていた。
女性スタッフA「おはよう、鬼龍院くん。その子がカノジョかな」
鬼龍院司「そうだ。世界一美しいだろ?」
女性スタッフA「そうね、こんな可愛い子は初めて見たわ」
司は自慢げに話した。
女性スタッフA「ただ──ううん、それよりメイクと着替えお願いね」
鬼龍院司「莉奈、それじゃちょっと行ってくるぜ」
川崎莉奈「うん、頑張って」
鬼龍院司「俺がいないから寂しがるなよ」
莉奈の耳元で司は囁く。
甘い声に莉奈の顔は真っ赤に染まった。
司のペースに翻弄され、莉奈は頭が真っ白になる。
そのまま司が歩く後ろ姿をただ眺めていた。
男性モデルA「へーい、カーノジョ。キミ可愛いねー、名前なんて言うの?」
莉奈に話しかけてきたのは金髪ガイルヘアのモデル。
年上なのは見た目で分かった。
川崎莉奈「え、えっと…」
男性モデルB「おいおい、子猫ちゃんを困らせるなよ」
男性モデルC「困ってる顔も可愛いよねー」
莉奈の周囲に続々と集まるイケメン達。
流行りの髪型で誰ひとり被っていない。
あっという間に逃げ道を塞がれてしまった。
川崎莉奈(司先輩のモデル仲間だよね。失礼のないようにしないと…)
(でも──何を話せばいいのか分からないよ)
莉奈は戸惑うばかり。
困り顔のまま話す内容を考えていた。
一駅が長く感じる莉奈。
視線はずっと司の瞳を見つめている。
無言が続く中、莉奈は重い口を開いた。
川崎莉奈「あ、あの、何かお話しませんか?」
見つめ合いに耐えられなかった。
恥ずかしさが残る顔で提案した。
鬼龍院司「話か…。そうだな、莉奈、学校は楽しいか?」
川崎莉奈「司先輩と一緒にいられる時間は楽しいですよ」
鬼龍院司「なるほど。では他の時間は楽しくないという事か」
司の告げた真実に莉奈の心がチクリと反応する。
反論しようにも莉奈から言葉が出てこない。
乾いた笑顔となり少し考え込んだ。
川崎莉奈(そう言われるとそうなんだけど…)
(でも胸がない私には自信がないよ)
トラウマがどうしても莉奈の一歩を止める。
顔が暗くなり恐怖で体が震え出した。
鬼龍院司「どうした、莉奈?」
心配した司が莉奈に声を掛けるも無反応。
震えに気がつくと、優しく抱きしめた。
鬼龍院司「悪いな、変な事聞いて」
川崎莉奈「ううん、司先輩が悪いんじゃないんです」
(自分の弱さが原因なのに…)
(司先輩の胸って、温かいよ)
司の胸に莉奈は顔を埋める。
心の中で涙を流していた。
川崎莉奈「…もう、大丈夫です。私、司先輩に甘えっぱなしですけど、司先輩と出会えて幸せです」
鬼龍院司「莉奈は俺にとって女神なんだ。むしろ感謝するのは俺の方だ」
莉奈の顔に優しく触れる司。
温もりが伝わると莉奈に笑顔が戻った。
川崎莉奈「私、自分に自信がないんです。胸が小さくて…だから、人と接するのが苦手なんですよ」
力強い声で莉奈は司に伝えた。
鬼龍院司「莉奈は繊細なんだな。大丈夫、俺が守るから安心しな」
優しい眼差しを莉奈に向ける。
人を惹きつける魅力があった。
川崎莉奈「司先輩は優しすぎますよ。私、勇気を出してみます」
司の言葉が莉奈から不安を消し去る。
莉奈は司に寄り添い温もりに幸せを感じていた。
○撮影現場までの道(朝)
目的地の駅で電車を降りる2人。
改札を通った瞬間から、司が莉奈手を握った。
川崎莉奈「つ、司先輩!?」
突然の出来事に驚く莉奈。
顔は戸惑っていた。
鬼龍院司「む? 莉奈、どうした?」
司は何か失礼でもしたのかという顔をする。
川崎莉奈「そ、その…。手が…」
ほんのり顔が赤く染まる莉奈。
小さな声で何か言おうとした。
鬼龍院司「あぁ、恋人同士なんだから繋ぐのは当たり前だろ」
川崎莉奈「それはそうなんですけど…。いきなりだったし、それに学校の人に見つかったら…」
鬼龍院司「心配しすぎだ、莉奈。誰にも会わないから安心しな」
司は優しい瞳で莉奈を見つめた。
川崎莉奈(司先輩って不思議な力があるみたい)
(ただの言葉なのに…心を優しく包んでくれるよ)
根拠なき司の言葉だが、莉奈は安心した顔となる。
莉奈に笑顔が戻った。
川崎莉奈「ありがとうございます」
鬼龍院司「何があっても、莉奈は俺が守るからな」
莉奈の握る手の力が強くなる。
嬉しさで笑みを浮かべていた。
川崎莉奈「あの、司先輩に聞きたい事があるんですけど…」
畏まった顔で莉奈が言う。
鬼龍院司「なんでも聞いてくれ。莉奈には俺のすべてを教えるぜ」
甘い笑顔で司が返事した。
川崎莉奈「司先輩は、学校とそれ以外で自分の呼び方を変えてるんですか?」
鬼龍院司「学校は閉じた世界だが、他で俺様とか言ってたら変に思われるからな。せめて学校では本当の自分でいたいのさ」
司は遠くを見た。
川崎莉奈「私と逆なんですね」
鬼龍院司「そうだな、だから莉奈とは気が合うのかもしれないな」
2人から笑い声が聞こえた。
川崎莉奈「そういえば、さっきから周囲の視線を感じるんですけど」
莉奈が見回すと通行人の視線は2人に向けられていた。
鬼龍院司「そこまで気にする必要はないだろう。きっと俺が莉奈という女神と一緒だから羨ましがってるだけじゃないか?」
川崎莉奈「つ、司先輩、声が大きいですからっ」
恥ずかしさから赤面する莉奈。
鼓動が跳ね上がり縮こまってしまった。
鬼龍院司「ここが撮影現場だ」
川崎莉奈「建物の中なんですね」
大きめのビルを目の前に莉奈は緊張する。
司は莉奈の肩を優しく掴み、建物の中へ入っていった。
○撮影現場(朝)
2人は地下へと続く階段を降りる。
目の前には広い空間が目に映った。
鬼龍院司「ここで撮影するんだぜ」
手を前にかざす司は自信満々だった。
川崎莉奈(スタッフさんとかいっぱいいるよ)
(それに…モデルさんもイケメンばっかりだ)
場の雰囲気に飲まれそうになる莉奈。
その場で固まっていた。
女性スタッフA「おはよう、鬼龍院くん。その子がカノジョかな」
鬼龍院司「そうだ。世界一美しいだろ?」
女性スタッフA「そうね、こんな可愛い子は初めて見たわ」
司は自慢げに話した。
女性スタッフA「ただ──ううん、それよりメイクと着替えお願いね」
鬼龍院司「莉奈、それじゃちょっと行ってくるぜ」
川崎莉奈「うん、頑張って」
鬼龍院司「俺がいないから寂しがるなよ」
莉奈の耳元で司は囁く。
甘い声に莉奈の顔は真っ赤に染まった。
司のペースに翻弄され、莉奈は頭が真っ白になる。
そのまま司が歩く後ろ姿をただ眺めていた。
男性モデルA「へーい、カーノジョ。キミ可愛いねー、名前なんて言うの?」
莉奈に話しかけてきたのは金髪ガイルヘアのモデル。
年上なのは見た目で分かった。
川崎莉奈「え、えっと…」
男性モデルB「おいおい、子猫ちゃんを困らせるなよ」
男性モデルC「困ってる顔も可愛いよねー」
莉奈の周囲に続々と集まるイケメン達。
流行りの髪型で誰ひとり被っていない。
あっという間に逃げ道を塞がれてしまった。
川崎莉奈(司先輩のモデル仲間だよね。失礼のないようにしないと…)
(でも──何を話せばいいのか分からないよ)
莉奈は戸惑うばかり。
困り顔のまま話す内容を考えていた。