本当の姿は俺の前だけな
第14話 莉奈の葛藤と司
○学校・裏庭(お昼休み)
川崎莉奈(なんで…なんで知ってるの)
(ここは誤魔化さなくちゃ、司先輩に迷惑かけちゃうよ)
動揺を隠し莉奈は平静を装う。
表情を一切変えずシラを切り通そうとした。
川崎莉奈「何かの間違いじゃないですか? 私なんかが司先輩と…」
ファンクラブ会長「そう…。それなら仕方ないね。やってしまいなさい」
会長のひと声でメンバー達が莉奈を取り囲む。
抵抗できないよう両手を押さえた。
川崎莉奈「いったい何をするんですかっ!」
声を荒らげる莉奈。
掴まれる力は強く、体をまったく動かせなかった。
ファンクラブメンバーA「メガネを外して、髪型を例のものに」
ファンクラブメンバー達「はいっ!」
莉奈のメガネを外し、髪型をポニーテールへ強引に変える。
メンバー達の力に抗えず、莉奈は何も出来なかった。
ファンクラブ会長「この姿で間違いないの?」
ファンクラブメンバーB「間違いないです。この女と鬼龍院様がデートしてたんです」
川崎莉奈(もう言い訳しようがないよね…)
(司先輩、私どうしたらいいでしょう)
メンバーが指さしで強く肯定する。
莉奈は観念した顔で成り行きに身をまかせようとしていた。
川崎莉奈「だ、だったら…何か問題あるんですか?」
逆ギレで莉奈はファンクラブのメンバー達に反論した。
ファンクラブ会長「問題? 大ありだよ。鬼龍院様はみんなのもの。独り占めは許せない。しかもね、胸のない人なんて価値はないから」
会長の言葉が莉奈の心に突き刺さった。
瞳に涙が貯まり、今にもこぼれ落ちそうだった。
川崎莉奈「で、でも、司先輩は──」
ファンクラブ会長「反論するなら、全女子生徒を敵に回すけどいいんだよね? 孤立したいなら勝手にすればいいよ」
莉奈の言葉を遮り、会長はトドメを刺しに来た。
川崎莉奈(なんで…。どうしてなの…)
(こんなのイジメじゃないの…)
味方は誰もいなく、莉奈はどうすべきか悩んだ。
川崎莉奈「だったら…だったらどうすればいいんですかっ?」
ファンクラブ会長「簡単な事よ。鬼龍院様に二度と近づかないと約束しなさい。そうすればイジメないであげるから。もちろん告げ口もしないでよねっ」
会長の迫力は凄まじかった。
究極の選択に莉奈は迷いを見せる。
悔しさを滲ませ答えを選択した。
川崎莉奈「…分かりました」
(これで…いいんだよね)
(私には司先輩のような強さがないもん)
心の中で大泣きする莉奈。
乾いた笑顔で会長の提案を飲み込んだ。
○川崎莉奈の家・部屋(夜)
莉奈はひとり部屋で泣いていた。
川崎莉奈「胸のない人に価値はない…」
(司先輩はそれでもいいって)
(でも…相談したら…)
恐怖心に支配され殻に閉じこもってしまった。
川崎莉奈(私が我慢すればいいだけ…)
(司先輩との数日は神様が与えてくれたプレゼントなんだから…)
理由をつければつけるほど涙が止まらなくなる。
頬に涙の後が残りながら莉奈は眠った。
○川崎莉奈の家・部屋(朝)
川崎莉奈「学校…行きたくないな。しばらく休もうかな…」
傷ついた心が体を動けなくする。
この日、莉奈は初めて学校を休んだ。
川崎莉奈(この先どうしよ…。ずっと休んじゃおっかな)
立ち直れないほど傷ついていた。
暗い顔でベッドに潜り込んでいる。
現実から逃げているとスマホが鳴った。
川崎莉奈(誰からだろ──)
(って、司先輩から!?)
中身を見る勇気がなく、莉奈はスルーした。
川崎莉奈(またスマホが鳴ってる…)
(見たくない、聞きたくないよ…)
繰り返されるスマホの着信音。
莉奈は耳をふさぎ布団まで被って音から逃げた。
○川崎莉奈のクラス(数日後の休み時間)
鬼龍院司「ちょっと失礼するぜ」
女子生徒A「鬼龍院先輩!? どうしてうちのクラスにっ」
司のサプライズ登場で教室がざわめく。
女子生徒達は興奮のあまり悲鳴地味だ声を上げた。
鬼龍院司「莉奈──いや、川崎莉奈は来てるか?」
女子生徒A「えっと…確か胸のない変な子でしたよね? しばらく休んでますよ」
鬼龍院司「理由とか聞いてないか?」
女子生徒A「すみません、分からないです。というより、興味なかったから覚えてないんですよ。あの子が何かしたんですか?」
鬼龍院司(莉奈はクラスで孤立してたんだな)
司は女子生徒に嫌悪感を抱く事はなかった。
営業的な笑顔を女子生徒に向ける。
鬼龍院司「知らないなら気にしなくていいぜ。それとも姫は、俺様ともっと話でもしたいのかな?」
本心を見抜かれないよう誤魔化す司。
まったく気づいかない女子生徒は、両手を口に当て真っ赤な顔のまま固まっていた。
鬼龍院司(やはり奥の手を使うしかないか)
固まっている女子生徒を放ったらかし、司は教室をあとにした。
○川崎莉奈の家・玄関前(午後)
鬼龍院司「ここが莉奈の家か」
ごく一般的な一軒家。
迷いなく司はインターフォンを押した。
母親「どちら様ですかー?」
鬼龍院司「莉奈の恋人の鬼龍院司です。お見舞いに来ました」
相手が母親という事で、司は口調をいつもと変える。
莉奈の母親「鬼龍院くんね、どうぞ中へー」
中へと案内され、2階にある莉奈の部屋まで案内された。
○川崎莉奈の家・部屋(午後)
莉奈はうさぎの部屋着のまま部屋の片隅でうずくまっていた。
母親「莉奈、わざわざお見舞いに来てくれたわよ」
川崎莉奈(こんな時間に誰だろ…)
(まだ学校は終わってないし)
立ち上がると莉奈はトビラへと歩く。
ドアノブに手をかけトビラを開いた。
川崎莉奈「つ、司先輩!?」
予期せぬ訪問者に驚く莉奈。
あとから羞恥心に襲われ顔が真っ赤に染った。
川崎莉奈(ど、どうして司先輩がウチに!?)
(それより、今部屋着だし、髪だって…)
慌てて手櫛で髪を整える。
部屋着は隠しようがなく、莉奈は狼狽えてしまった。
鬼龍院司「莉奈、学校を休んでるし、連絡もつかないから心配したぞ」
川崎莉奈「そ、それはですね…。と、とりあえず部屋の中へどうぞ」
(本当の事なんて言えないし…)
(どうすればいいのよ)
急いで部屋を片付ける莉奈。
目に見える場所だけ綺麗にした。
鬼龍院司「俺様のラインを無視しただけじゃなく、家まで来させるなんて──」
川崎莉奈(きっと怒ってるよね…)
(これで司先輩にも嫌われて、私は全てを失うんだ)
莉奈は恐怖から目を瞑る。
司からの別れ話を覚悟していた。
川崎莉奈「──!? つ、司先輩…」
司に優しく抱きしめられた。
耳元に司の吐息がかかり、莉奈の心臓は激しくなる。
何が起きたのか理解する暇なく、呆然と固まってしまった。
川崎莉奈(なんで…なんで知ってるの)
(ここは誤魔化さなくちゃ、司先輩に迷惑かけちゃうよ)
動揺を隠し莉奈は平静を装う。
表情を一切変えずシラを切り通そうとした。
川崎莉奈「何かの間違いじゃないですか? 私なんかが司先輩と…」
ファンクラブ会長「そう…。それなら仕方ないね。やってしまいなさい」
会長のひと声でメンバー達が莉奈を取り囲む。
抵抗できないよう両手を押さえた。
川崎莉奈「いったい何をするんですかっ!」
声を荒らげる莉奈。
掴まれる力は強く、体をまったく動かせなかった。
ファンクラブメンバーA「メガネを外して、髪型を例のものに」
ファンクラブメンバー達「はいっ!」
莉奈のメガネを外し、髪型をポニーテールへ強引に変える。
メンバー達の力に抗えず、莉奈は何も出来なかった。
ファンクラブ会長「この姿で間違いないの?」
ファンクラブメンバーB「間違いないです。この女と鬼龍院様がデートしてたんです」
川崎莉奈(もう言い訳しようがないよね…)
(司先輩、私どうしたらいいでしょう)
メンバーが指さしで強く肯定する。
莉奈は観念した顔で成り行きに身をまかせようとしていた。
川崎莉奈「だ、だったら…何か問題あるんですか?」
逆ギレで莉奈はファンクラブのメンバー達に反論した。
ファンクラブ会長「問題? 大ありだよ。鬼龍院様はみんなのもの。独り占めは許せない。しかもね、胸のない人なんて価値はないから」
会長の言葉が莉奈の心に突き刺さった。
瞳に涙が貯まり、今にもこぼれ落ちそうだった。
川崎莉奈「で、でも、司先輩は──」
ファンクラブ会長「反論するなら、全女子生徒を敵に回すけどいいんだよね? 孤立したいなら勝手にすればいいよ」
莉奈の言葉を遮り、会長はトドメを刺しに来た。
川崎莉奈(なんで…。どうしてなの…)
(こんなのイジメじゃないの…)
味方は誰もいなく、莉奈はどうすべきか悩んだ。
川崎莉奈「だったら…だったらどうすればいいんですかっ?」
ファンクラブ会長「簡単な事よ。鬼龍院様に二度と近づかないと約束しなさい。そうすればイジメないであげるから。もちろん告げ口もしないでよねっ」
会長の迫力は凄まじかった。
究極の選択に莉奈は迷いを見せる。
悔しさを滲ませ答えを選択した。
川崎莉奈「…分かりました」
(これで…いいんだよね)
(私には司先輩のような強さがないもん)
心の中で大泣きする莉奈。
乾いた笑顔で会長の提案を飲み込んだ。
○川崎莉奈の家・部屋(夜)
莉奈はひとり部屋で泣いていた。
川崎莉奈「胸のない人に価値はない…」
(司先輩はそれでもいいって)
(でも…相談したら…)
恐怖心に支配され殻に閉じこもってしまった。
川崎莉奈(私が我慢すればいいだけ…)
(司先輩との数日は神様が与えてくれたプレゼントなんだから…)
理由をつければつけるほど涙が止まらなくなる。
頬に涙の後が残りながら莉奈は眠った。
○川崎莉奈の家・部屋(朝)
川崎莉奈「学校…行きたくないな。しばらく休もうかな…」
傷ついた心が体を動けなくする。
この日、莉奈は初めて学校を休んだ。
川崎莉奈(この先どうしよ…。ずっと休んじゃおっかな)
立ち直れないほど傷ついていた。
暗い顔でベッドに潜り込んでいる。
現実から逃げているとスマホが鳴った。
川崎莉奈(誰からだろ──)
(って、司先輩から!?)
中身を見る勇気がなく、莉奈はスルーした。
川崎莉奈(またスマホが鳴ってる…)
(見たくない、聞きたくないよ…)
繰り返されるスマホの着信音。
莉奈は耳をふさぎ布団まで被って音から逃げた。
○川崎莉奈のクラス(数日後の休み時間)
鬼龍院司「ちょっと失礼するぜ」
女子生徒A「鬼龍院先輩!? どうしてうちのクラスにっ」
司のサプライズ登場で教室がざわめく。
女子生徒達は興奮のあまり悲鳴地味だ声を上げた。
鬼龍院司「莉奈──いや、川崎莉奈は来てるか?」
女子生徒A「えっと…確か胸のない変な子でしたよね? しばらく休んでますよ」
鬼龍院司「理由とか聞いてないか?」
女子生徒A「すみません、分からないです。というより、興味なかったから覚えてないんですよ。あの子が何かしたんですか?」
鬼龍院司(莉奈はクラスで孤立してたんだな)
司は女子生徒に嫌悪感を抱く事はなかった。
営業的な笑顔を女子生徒に向ける。
鬼龍院司「知らないなら気にしなくていいぜ。それとも姫は、俺様ともっと話でもしたいのかな?」
本心を見抜かれないよう誤魔化す司。
まったく気づいかない女子生徒は、両手を口に当て真っ赤な顔のまま固まっていた。
鬼龍院司(やはり奥の手を使うしかないか)
固まっている女子生徒を放ったらかし、司は教室をあとにした。
○川崎莉奈の家・玄関前(午後)
鬼龍院司「ここが莉奈の家か」
ごく一般的な一軒家。
迷いなく司はインターフォンを押した。
母親「どちら様ですかー?」
鬼龍院司「莉奈の恋人の鬼龍院司です。お見舞いに来ました」
相手が母親という事で、司は口調をいつもと変える。
莉奈の母親「鬼龍院くんね、どうぞ中へー」
中へと案内され、2階にある莉奈の部屋まで案内された。
○川崎莉奈の家・部屋(午後)
莉奈はうさぎの部屋着のまま部屋の片隅でうずくまっていた。
母親「莉奈、わざわざお見舞いに来てくれたわよ」
川崎莉奈(こんな時間に誰だろ…)
(まだ学校は終わってないし)
立ち上がると莉奈はトビラへと歩く。
ドアノブに手をかけトビラを開いた。
川崎莉奈「つ、司先輩!?」
予期せぬ訪問者に驚く莉奈。
あとから羞恥心に襲われ顔が真っ赤に染った。
川崎莉奈(ど、どうして司先輩がウチに!?)
(それより、今部屋着だし、髪だって…)
慌てて手櫛で髪を整える。
部屋着は隠しようがなく、莉奈は狼狽えてしまった。
鬼龍院司「莉奈、学校を休んでるし、連絡もつかないから心配したぞ」
川崎莉奈「そ、それはですね…。と、とりあえず部屋の中へどうぞ」
(本当の事なんて言えないし…)
(どうすればいいのよ)
急いで部屋を片付ける莉奈。
目に見える場所だけ綺麗にした。
鬼龍院司「俺様のラインを無視しただけじゃなく、家まで来させるなんて──」
川崎莉奈(きっと怒ってるよね…)
(これで司先輩にも嫌われて、私は全てを失うんだ)
莉奈は恐怖から目を瞑る。
司からの別れ話を覚悟していた。
川崎莉奈「──!? つ、司先輩…」
司に優しく抱きしめられた。
耳元に司の吐息がかかり、莉奈の心臓は激しくなる。
何が起きたのか理解する暇なく、呆然と固まってしまった。