本当の姿は俺の前だけな
第15話 俺は莉奈だけがいればいい
○川崎莉奈の家・部屋(午後)
鬼龍院司「まったく…。俺様をこれだけ心配させるなんて、莉奈は罪深いな」
耳元で囁き莉奈の顔を真っ赤に染めた。
川崎莉奈「怒ってないんですか…?」
鬼龍院司「なぜ怒る必要がある? きっと何か言えない事情でもあるんだろ?」
川崎莉奈(どうして分かるの…。どうして…)
心を見透かされ莉奈は僅かに動揺する。
頭の中で心地よいメロディーが流れていた。
川崎莉奈「か、仮にそうだったとしても、私は…司先輩を無視してたんですよ。怒られるのは…当たり前です」
鬼龍院司「分かった。それなら俺様が莉奈に罰を与えてやる」
川崎莉奈「はい…。私はそれだけの事をしたのですから」
拒絶するも司には通じなかった。
心に湧いた罪悪感を消すため、莉奈はどのような罰でも受け入れようとしていた。
鬼龍院司「まぁ、あれだ、罰──というかお楽しみは後ほどだ。その前にひとつ聞きたい事がある」
川崎莉奈「な、なんでも答えますっ」
(罰をお楽しみって言ってたような…)
(きっと聞き間違いだよね)
抱き合ったまま莉奈は司の質問に答えようとした。
鬼龍院司「俺様は莉奈が好きだ。心から愛している。この気持ちは変わらないし、未来も変わらないと断言できる」
力強い言葉の裏で司の鼓動が莉奈に伝わってくる。
鬼龍院司「では、莉奈は俺様をどう思っているのだ?」
川崎莉奈(私の気持ち…。それは分かってるよ)
(私だってこの気持ちが変わらないと思ってるんだから)
口に出す勇気が湧いてこない莉奈。
本当の気持ちを伝えろと心が命令してきた。
川崎莉奈「…きです。私も司先輩の事が大好きです。この気持ちに偽りはありません」
真っ白な思考で莉奈は自分の本心を伝えた。
鼓動は跳ね上がり司に伝わるほど。
ハッキリとした口調で言うも、遅れて羞恥心がやってくる。
真っ赤になりながらも、莉奈は後悔していなかった。
鬼龍院司「よかった。嫌われていないと分かって安心したぜ」
嬉しさが爆発し、莉奈を抱き締める力が強くなる。
川崎莉奈「ち、ちょっと司先輩…力が──」
拒否しようにも力が入らない莉奈。
次第に心地よくなり体を司に預けた。
鬼龍院司「悪かった…。少し調子に乗りすぎたな」
川崎莉奈「ううん、大丈夫ですよ」
落ち着きを取り戻し、2人は距離を取った。
鬼龍院司「それでだ、莉奈がいないと俺様が困る。だから、明日から学校に来てくれるな?」
真剣な眼差しを向ける。
川崎莉奈(そうしたいけど…)
(ファンクラブを敵に回したらと思うと…)
心に巣食った恐怖には勝てない。
莉奈は悩むも答えは出ていた。
鬼龍院司「莉奈、俺様は何があっても莉奈を守る。たとえ世界中から孤立しようとも、俺様は必ず莉奈を選ぶ。だから信じてくれ」
光り輝く瞳で司は莉奈を見つめた。
川崎莉奈(司先輩がそこまで言ってくれるなら…)
莉奈の気持ちが変わり、明るい顔となる。
川崎莉奈「信じます。私、司先輩を信じますよ」
鬼龍院司「感謝するぜ。危ない橋を渡った甲斐があったな」
川崎莉奈(ん? そういえば司先輩って、どうやってウチの場所が分かったんだろ)
(それに危ない橋っていったい…)
冷静さが戻ると莉奈の中で疑問が湧いた。
自分で答えを得ようと難しい表情を見せた。
川崎莉奈「あ、あの、司先輩。危ない橋ってどういう事です? それにウチの場所とか…」
緊張しながら莉奈は浮かんだ疑問を聞いてみた。
鬼龍院司「職員室に忍び込み、莉奈の情報を入手しただけさ」
川崎莉奈「それって犯罪じゃ…」
莉奈は驚きを隠せなかった。
司は何事もなかったかのような顔をしていた。
鬼龍院司「俺様にとって莉奈は最優先事項だ。そのためならなんだってやってみせる。学校も早退してきたからな」
拳を握り締めながら強い言葉を放つ。
真剣な瞳は冗談ではないと語っていた。
川崎莉奈「え、えっと…」
(ここは素直にお礼でいいのかな)
(司先輩が来てくれたから、学校に行く気になれたんだし)
川崎莉奈「ありがとうございます、司先輩」
心がスッキリとはしないが、莉奈は嬉しさが顔に出る。
胸に手を当て幸せを感じた。
鬼龍院司「それにしても──莉奈の部屋は可愛いな」
川崎莉奈「い、いきなり何を言うんですかっ」
顔が真っ赤に染まる莉奈。
大きな声で反論した。
鬼龍院司「本当の事を言っただけだ。それとな、部屋着、よく似合ってるぞ」
川崎莉奈「──!?」
(わ、忘れてた…。私、部屋着のままだったんだ)
恥ずかしさのあまり、莉奈は頭を抱えしゃがみ込む。
全身が火照りだし、心がくすぐったかった。
川崎莉奈「もぅ…。司先輩のばかっ」
鬼龍院司「よく分からないが、すまん」
川崎莉奈「いいですよ。明日はちゃんと学校に行きますから」
莉奈は心臓が破裂しそうだった。
司が謝ると潤んだ瞳で見つめた。
鬼龍院司「それじゃ、俺様はそろそろ帰るぜ。元気で可愛い莉奈の姿も見れたからな」
川崎莉奈「そういうのは口に出さないでくださいよ…」
鬼龍院司「明日、待ってるからな」
片手で挨拶し司は莉奈の部屋をあとにした。
残された莉奈は力が抜け、床に座り込んでしまった。
○学校・体育館(午後)
全校集会の場には莉奈の姿もあった。
長い校長の話が始まったかと思うと──。
校長「何をするんだね、鬼龍院くん」
鬼龍院司「悪いな、校長。これから俺様は重大な発表をせねばならないんだ」
悪びれる様子もなく司はマイクを奪い取る。
壇上に立つと話し始めた。
鬼龍院司「人にはコンプレックスというものがある。それをバカにする人を俺様は許さない。たとえ姫であってもだ」
突然の出来事に体育館はざわめく。
司は気にせず話し続けた。
鬼龍院司「それにな、俺様は誰のものでもない。たったひとりの姫──いや、女神だけのものなんだ。さぁ、川崎莉奈、壇上に上がって来るといい」
堂々とした司の言葉に、生徒達は静かになり視線が莉奈に向けられる。
名前を呼ばれた莉奈は混乱していた。
川崎莉奈(きっとこれが罰なのね)
(みんなの視線が痛いけど…私には司先輩がいるんだからっ)
自己解決した莉奈。
なけなしの勇気を振り絞り壇上へゆっくり上がる。
突き刺さる視線に恐怖を感じるも、手を伸ばす司が力を与えた。
鬼龍院司「俺様はここで宣誓する。俺様にとっての女神は莉奈だ」
莉奈の手を掴み司は自分の方へと引き寄せた。
鬼龍院司「俺様と莉奈は恋人同士、相思相愛でもある。その証拠を今みんなの前で見せてやる」
川崎莉奈(ちょっと待って…証拠って何)
(不安しかないよ…)
緊張と不安で莉奈は司の言いなり。
腰に手を回されたのも気づいていない。
川崎莉奈(今は司先輩を信じるしかないよね)
莉奈がそう思っていると、司は迷う事なくキスをしてみせた。
一秒が長く感じ、体育館はどよめきと悲鳴が聞こえた。
鬼龍院司「俺様は莉奈を泣かせるヤツを許さない。だから、みんなで祝福して欲しいんだ」
司が頭を下げるのは初めてだった。
誠実な対応に拍手が少しずつ増えていく。
ファンクラブのメンバーも渋々拍手で祝福した。
川崎莉奈「つ、司先輩、あの、その…いきなりキスは…」
耳まで真っ赤な莉奈が小さい声で司に伝える。
鬼龍院司「なんだ、一度だけじゃ満足しないか。なら何度でもしてやるぞ」
川崎莉奈「だ、大丈夫ですっ。今度からは…誰も見てないとこでお願いしますね」
鬼龍院司「仕方がないな。まっ、俺様を心配させたんだから、一度目のキスはみんなの前でと決めていたんだ」
体育館は司に支配され拍手が鳴り止まなくなる。
川崎莉奈(もぅ…司先輩は行動が読めないよ)
(でも、これで堂々と学校に行けるかな)
鬼龍院司「莉奈、ひとつ言っておく事がある」
安心した顔の莉奈に司が顔を近づけた。
鬼龍院司「本当の姿は俺様の前だけな。他の人には見られたくないんだ」
司の言葉で莉奈は全身が赤くなる。
羞恥心に襲われるも、幸せな顔をしていた。
鬼龍院司「まったく…。俺様をこれだけ心配させるなんて、莉奈は罪深いな」
耳元で囁き莉奈の顔を真っ赤に染めた。
川崎莉奈「怒ってないんですか…?」
鬼龍院司「なぜ怒る必要がある? きっと何か言えない事情でもあるんだろ?」
川崎莉奈(どうして分かるの…。どうして…)
心を見透かされ莉奈は僅かに動揺する。
頭の中で心地よいメロディーが流れていた。
川崎莉奈「か、仮にそうだったとしても、私は…司先輩を無視してたんですよ。怒られるのは…当たり前です」
鬼龍院司「分かった。それなら俺様が莉奈に罰を与えてやる」
川崎莉奈「はい…。私はそれだけの事をしたのですから」
拒絶するも司には通じなかった。
心に湧いた罪悪感を消すため、莉奈はどのような罰でも受け入れようとしていた。
鬼龍院司「まぁ、あれだ、罰──というかお楽しみは後ほどだ。その前にひとつ聞きたい事がある」
川崎莉奈「な、なんでも答えますっ」
(罰をお楽しみって言ってたような…)
(きっと聞き間違いだよね)
抱き合ったまま莉奈は司の質問に答えようとした。
鬼龍院司「俺様は莉奈が好きだ。心から愛している。この気持ちは変わらないし、未来も変わらないと断言できる」
力強い言葉の裏で司の鼓動が莉奈に伝わってくる。
鬼龍院司「では、莉奈は俺様をどう思っているのだ?」
川崎莉奈(私の気持ち…。それは分かってるよ)
(私だってこの気持ちが変わらないと思ってるんだから)
口に出す勇気が湧いてこない莉奈。
本当の気持ちを伝えろと心が命令してきた。
川崎莉奈「…きです。私も司先輩の事が大好きです。この気持ちに偽りはありません」
真っ白な思考で莉奈は自分の本心を伝えた。
鼓動は跳ね上がり司に伝わるほど。
ハッキリとした口調で言うも、遅れて羞恥心がやってくる。
真っ赤になりながらも、莉奈は後悔していなかった。
鬼龍院司「よかった。嫌われていないと分かって安心したぜ」
嬉しさが爆発し、莉奈を抱き締める力が強くなる。
川崎莉奈「ち、ちょっと司先輩…力が──」
拒否しようにも力が入らない莉奈。
次第に心地よくなり体を司に預けた。
鬼龍院司「悪かった…。少し調子に乗りすぎたな」
川崎莉奈「ううん、大丈夫ですよ」
落ち着きを取り戻し、2人は距離を取った。
鬼龍院司「それでだ、莉奈がいないと俺様が困る。だから、明日から学校に来てくれるな?」
真剣な眼差しを向ける。
川崎莉奈(そうしたいけど…)
(ファンクラブを敵に回したらと思うと…)
心に巣食った恐怖には勝てない。
莉奈は悩むも答えは出ていた。
鬼龍院司「莉奈、俺様は何があっても莉奈を守る。たとえ世界中から孤立しようとも、俺様は必ず莉奈を選ぶ。だから信じてくれ」
光り輝く瞳で司は莉奈を見つめた。
川崎莉奈(司先輩がそこまで言ってくれるなら…)
莉奈の気持ちが変わり、明るい顔となる。
川崎莉奈「信じます。私、司先輩を信じますよ」
鬼龍院司「感謝するぜ。危ない橋を渡った甲斐があったな」
川崎莉奈(ん? そういえば司先輩って、どうやってウチの場所が分かったんだろ)
(それに危ない橋っていったい…)
冷静さが戻ると莉奈の中で疑問が湧いた。
自分で答えを得ようと難しい表情を見せた。
川崎莉奈「あ、あの、司先輩。危ない橋ってどういう事です? それにウチの場所とか…」
緊張しながら莉奈は浮かんだ疑問を聞いてみた。
鬼龍院司「職員室に忍び込み、莉奈の情報を入手しただけさ」
川崎莉奈「それって犯罪じゃ…」
莉奈は驚きを隠せなかった。
司は何事もなかったかのような顔をしていた。
鬼龍院司「俺様にとって莉奈は最優先事項だ。そのためならなんだってやってみせる。学校も早退してきたからな」
拳を握り締めながら強い言葉を放つ。
真剣な瞳は冗談ではないと語っていた。
川崎莉奈「え、えっと…」
(ここは素直にお礼でいいのかな)
(司先輩が来てくれたから、学校に行く気になれたんだし)
川崎莉奈「ありがとうございます、司先輩」
心がスッキリとはしないが、莉奈は嬉しさが顔に出る。
胸に手を当て幸せを感じた。
鬼龍院司「それにしても──莉奈の部屋は可愛いな」
川崎莉奈「い、いきなり何を言うんですかっ」
顔が真っ赤に染まる莉奈。
大きな声で反論した。
鬼龍院司「本当の事を言っただけだ。それとな、部屋着、よく似合ってるぞ」
川崎莉奈「──!?」
(わ、忘れてた…。私、部屋着のままだったんだ)
恥ずかしさのあまり、莉奈は頭を抱えしゃがみ込む。
全身が火照りだし、心がくすぐったかった。
川崎莉奈「もぅ…。司先輩のばかっ」
鬼龍院司「よく分からないが、すまん」
川崎莉奈「いいですよ。明日はちゃんと学校に行きますから」
莉奈は心臓が破裂しそうだった。
司が謝ると潤んだ瞳で見つめた。
鬼龍院司「それじゃ、俺様はそろそろ帰るぜ。元気で可愛い莉奈の姿も見れたからな」
川崎莉奈「そういうのは口に出さないでくださいよ…」
鬼龍院司「明日、待ってるからな」
片手で挨拶し司は莉奈の部屋をあとにした。
残された莉奈は力が抜け、床に座り込んでしまった。
○学校・体育館(午後)
全校集会の場には莉奈の姿もあった。
長い校長の話が始まったかと思うと──。
校長「何をするんだね、鬼龍院くん」
鬼龍院司「悪いな、校長。これから俺様は重大な発表をせねばならないんだ」
悪びれる様子もなく司はマイクを奪い取る。
壇上に立つと話し始めた。
鬼龍院司「人にはコンプレックスというものがある。それをバカにする人を俺様は許さない。たとえ姫であってもだ」
突然の出来事に体育館はざわめく。
司は気にせず話し続けた。
鬼龍院司「それにな、俺様は誰のものでもない。たったひとりの姫──いや、女神だけのものなんだ。さぁ、川崎莉奈、壇上に上がって来るといい」
堂々とした司の言葉に、生徒達は静かになり視線が莉奈に向けられる。
名前を呼ばれた莉奈は混乱していた。
川崎莉奈(きっとこれが罰なのね)
(みんなの視線が痛いけど…私には司先輩がいるんだからっ)
自己解決した莉奈。
なけなしの勇気を振り絞り壇上へゆっくり上がる。
突き刺さる視線に恐怖を感じるも、手を伸ばす司が力を与えた。
鬼龍院司「俺様はここで宣誓する。俺様にとっての女神は莉奈だ」
莉奈の手を掴み司は自分の方へと引き寄せた。
鬼龍院司「俺様と莉奈は恋人同士、相思相愛でもある。その証拠を今みんなの前で見せてやる」
川崎莉奈(ちょっと待って…証拠って何)
(不安しかないよ…)
緊張と不安で莉奈は司の言いなり。
腰に手を回されたのも気づいていない。
川崎莉奈(今は司先輩を信じるしかないよね)
莉奈がそう思っていると、司は迷う事なくキスをしてみせた。
一秒が長く感じ、体育館はどよめきと悲鳴が聞こえた。
鬼龍院司「俺様は莉奈を泣かせるヤツを許さない。だから、みんなで祝福して欲しいんだ」
司が頭を下げるのは初めてだった。
誠実な対応に拍手が少しずつ増えていく。
ファンクラブのメンバーも渋々拍手で祝福した。
川崎莉奈「つ、司先輩、あの、その…いきなりキスは…」
耳まで真っ赤な莉奈が小さい声で司に伝える。
鬼龍院司「なんだ、一度だけじゃ満足しないか。なら何度でもしてやるぞ」
川崎莉奈「だ、大丈夫ですっ。今度からは…誰も見てないとこでお願いしますね」
鬼龍院司「仕方がないな。まっ、俺様を心配させたんだから、一度目のキスはみんなの前でと決めていたんだ」
体育館は司に支配され拍手が鳴り止まなくなる。
川崎莉奈(もぅ…司先輩は行動が読めないよ)
(でも、これで堂々と学校に行けるかな)
鬼龍院司「莉奈、ひとつ言っておく事がある」
安心した顔の莉奈に司が顔を近づけた。
鬼龍院司「本当の姿は俺様の前だけな。他の人には見られたくないんだ」
司の言葉で莉奈は全身が赤くなる。
羞恥心に襲われるも、幸せな顔をしていた。