本当の姿は俺の前だけな
第3話 告白は突然に訪れる
○学校・廊下(午前中)
時間を動かしたのは司だった。
鬼龍院司「その瞳、俺様が忘れるはずない。キミはこの間助けた美しい女子だろ?」
川崎莉奈「ひ、人違いです。それに…顔が、その…近くて…」
必死に言葉を絞り出す莉奈。
別人だと否定するも、心の中では嬉しさが湧いていた。
川崎莉奈(どうしてバレるのよ。髪型だって違うし、だいたい胸だって…)
恥ずかしさと困惑が混じり合い莉奈は複雑な心境になる。
視線を司から逸らすのが精一杯の抵抗であった。
鬼龍院司「それは悪かったな」
莉奈を気遣いすぐに顔を離す司。
距離が離れるも莉奈の瞳を見つめたまま。
あの時に出会った少女だと確信していた。
鬼龍院司「うん、間違いない、キミは僕が助けた美しい少女だ」
川崎莉奈「歩道橋から落ちたのは私じゃありませんから」
鬼龍院司「俺様はひと言も歩道橋とは言ってないぜ?」
川崎莉奈「あっ…」
自ら墓穴を掘り、莉奈の顔が真っ青になる。
困り果てた莉奈はこの場を凌ぐ方法を考えた。
川崎莉奈(ど、どうしよう。何か上手く誤魔化さないと)
(そうだ、この手で誤魔化そう)
名案が浮かび莉奈の顔は安心しきっている。
忘れないうちに莉奈はすぐ行動した。
川崎莉奈「え、えっと、このプリントを急いで配らないといけないんです」
鬼龍院司「それは大変そうだ。よし、俺様が半分持っていってやる」
莉奈が反論する暇もなく、司はプリントの大半を持った。
鬼龍院司(何か話したくない事情でもあるっぽいな)
(まっ、それくらいは誰にでもあるだろうし)
何かを察した司は莉奈に追求しなかった。
川崎莉奈「鬼龍院先輩、ありがとうございます」
鬼龍院司「それでクラスはどこなんだ?」
川崎莉奈「一年のAクラスです」
鬼龍院司「よし、それじゃ行くか」
司のペースに押されっぱなしで、莉奈は司の後ろを静かについていく。
近すぎず遠すぎない距離を維持し、クラスの前まではあっという間だった。
鬼龍院司「ここまで来たらプリントも配ってやるぜ」
川崎莉奈「ま、待ってください鬼龍院先輩」
莉奈の制止も聞かず司は教室へ入っていった。
○学校・川崎莉奈のクラス(午前中)
司の姿が生徒達に見えた瞬間、時が止まったように静かになる。
数秒の時間を挟み、女子生徒達から黄色い声援が湧き上がった。
女子生徒A「鬼龍院先輩!? どうしてうちのクラスにっ」
女子生徒B「夢じゃないよねっ。朝から眼福すぎるー」
鬼龍院司「さぁ、俺様からのプリントを受け取るといい」
一斉に群がる女子生徒達。
我先にとプリントの奪い合いが始まった。
鬼龍院司「おいおい、少し落ち着けよな」
女子生徒A「でも、どうして鬼龍院先輩がうちのクラスのプリントを持ってるんですか?」
鬼龍院司「それはだな、俺様が傷つけてしまった女子へのお詫びだ」
司が向けた視線先にいたのは莉奈。
クラスの女子の視線も莉奈へと向けられた。
女子生徒B「まさか川崎莉奈を助けたんですかっ!?」
鬼龍院司「俺様はすべての女子に対して常に公平だ」
女子生徒B「でも凄い変わり者なんですよ?」
鬼龍院司「変わり者…。確かにそうかもしれないな」
髪をかきあげるお決まりのポーズで、司は女子生徒を魅了する。
再び教室に黄色い声が響き渡った。
川崎莉奈(この雰囲気…私はどうすれば…)
異様なクラスの空気に、莉奈はプリントを持ったまま固まってしまった。
鬼龍院司「川崎莉奈、そんなとこで立ってないで、キミもプリントを配るといい」
プリントを配り終えた司が莉奈へと近づく。
ごく自然な動きで莉奈の肩を掴み、エスコートするように歩き出した。
川崎莉奈(ちょっと、これは…。恥ずかしすぎるよ)
真っ赤に染まる莉奈の顔。
鼓動が高まり頭の中はぐちゃぐちゃとなる。
自分の体ではないように感じていた。
川崎莉奈「あ、あの…。プリントまだ貰ってない人は受け取ってください」
震える小さな声を莉奈は振り絞る。
女子生徒達から莉奈に突き刺さる冷たい視線が向けられた。
鬼龍院司「おいおい、誰も動かないとかありえねーわ。ほら、そこの男子、まだ貰ってないだろ」
司の力強い言葉がクラスを動かす。
受け取っていない男子生徒や女子生徒が莉奈からプリントを貰い始める。
先輩としてではなく、司という憧れの存在が言うこそ意味があった。
川崎莉奈「何度も助けていただき、本当にありがとうございます」
鬼龍院司「気にするなよ。川崎莉奈、名前はちゃんと覚えたからな」
爆弾発言だけ言い残し、司は莉奈のクラスをあとにする。
嵐が去ったようでクラスは平穏を取り戻す。
女子生徒達からは恨みと嫉妬のオーラが莉奈に放たれた。
川崎莉奈(どうして私なんかの名前を覚えたんだろ…)
理由に心当たりがなく、不思議な顔で一日を過ごした。
○学校・下駄箱(放課後)
激動の一日が終わり莉奈は疲れきっていた。
川崎莉奈(今日は長い一日だったよ)
(女子からの視線が痛かったし…)
靴を取り出していると、後ろから誰かが走ってくる音が聞こえた。
鬼龍院司「ま、間に合ったみたいだな」
川崎莉奈「き、鬼龍院先輩!?」
振り返った先にいた司に、驚きのあまり莉奈は固まってしまう。
持っていた靴が地面へと落下した。
川崎莉奈(私を探してるわけないじゃない)
(ダメ、落ち着かないとダメなんだから)
小さな深呼吸で莉奈は落ち着きを取り戻す。
莉奈は平静を装い、司が来た理由を聞いた。
川崎莉奈「慌ててるみたいですけど、どうしたんですか?」
鬼龍院司「ファンクラブから逃げてきたんだ。すべては川崎莉奈、キミと二人っきりで会うためにな」
司の言葉が莉奈の時間を止める。
朝の出来事が頭の中でゆっくり再生された。
川崎莉奈(幻聴じゃないよね…)
(鬼龍院先輩は二人っきりになるためって…)
頭の中が混乱し莉奈は何も考えられなくなった。
司が近づいてくると、後ずさりし背中が下駄箱に当たった。
川崎莉奈「あ、あの、鬼龍院先輩…? そんな真剣な顔されても困っちゃいます」
鬼龍院司「そりゃ真剣になるだろ」
壁ドンで莉奈を追い詰める司。
莉奈の顔が赤面し鼓動を激しくさせる。
互いの顔は吐息を感じるほど近かった。
鬼龍院司「川崎莉奈、伝えたい事があるから聞いてくれ」
川崎莉奈「は、はい…」
司の独特なオーラに莉奈は飲み込まれてしまう。
落ち着かせたはずの鼓動が再び激しいリズムを刻む。
二人だけの特別な世界が作られ、莉奈はどこへも逃げられなかった。
川崎莉奈(な、何を伝えるつもりなんだろ…)
絶妙な時間が莉奈の緊張を高める。
不安が心の中で膨れ上がっていった。
鬼龍院司「俺様は川崎莉奈が好きだ。だから付き合ってくれ!」
川崎莉奈「えっ…」
司の告白に莉奈の頭の中は真っ白になる。
想定外の事態に困惑し、莉奈はすぐ返事ができなかった。
時間を動かしたのは司だった。
鬼龍院司「その瞳、俺様が忘れるはずない。キミはこの間助けた美しい女子だろ?」
川崎莉奈「ひ、人違いです。それに…顔が、その…近くて…」
必死に言葉を絞り出す莉奈。
別人だと否定するも、心の中では嬉しさが湧いていた。
川崎莉奈(どうしてバレるのよ。髪型だって違うし、だいたい胸だって…)
恥ずかしさと困惑が混じり合い莉奈は複雑な心境になる。
視線を司から逸らすのが精一杯の抵抗であった。
鬼龍院司「それは悪かったな」
莉奈を気遣いすぐに顔を離す司。
距離が離れるも莉奈の瞳を見つめたまま。
あの時に出会った少女だと確信していた。
鬼龍院司「うん、間違いない、キミは僕が助けた美しい少女だ」
川崎莉奈「歩道橋から落ちたのは私じゃありませんから」
鬼龍院司「俺様はひと言も歩道橋とは言ってないぜ?」
川崎莉奈「あっ…」
自ら墓穴を掘り、莉奈の顔が真っ青になる。
困り果てた莉奈はこの場を凌ぐ方法を考えた。
川崎莉奈(ど、どうしよう。何か上手く誤魔化さないと)
(そうだ、この手で誤魔化そう)
名案が浮かび莉奈の顔は安心しきっている。
忘れないうちに莉奈はすぐ行動した。
川崎莉奈「え、えっと、このプリントを急いで配らないといけないんです」
鬼龍院司「それは大変そうだ。よし、俺様が半分持っていってやる」
莉奈が反論する暇もなく、司はプリントの大半を持った。
鬼龍院司(何か話したくない事情でもあるっぽいな)
(まっ、それくらいは誰にでもあるだろうし)
何かを察した司は莉奈に追求しなかった。
川崎莉奈「鬼龍院先輩、ありがとうございます」
鬼龍院司「それでクラスはどこなんだ?」
川崎莉奈「一年のAクラスです」
鬼龍院司「よし、それじゃ行くか」
司のペースに押されっぱなしで、莉奈は司の後ろを静かについていく。
近すぎず遠すぎない距離を維持し、クラスの前まではあっという間だった。
鬼龍院司「ここまで来たらプリントも配ってやるぜ」
川崎莉奈「ま、待ってください鬼龍院先輩」
莉奈の制止も聞かず司は教室へ入っていった。
○学校・川崎莉奈のクラス(午前中)
司の姿が生徒達に見えた瞬間、時が止まったように静かになる。
数秒の時間を挟み、女子生徒達から黄色い声援が湧き上がった。
女子生徒A「鬼龍院先輩!? どうしてうちのクラスにっ」
女子生徒B「夢じゃないよねっ。朝から眼福すぎるー」
鬼龍院司「さぁ、俺様からのプリントを受け取るといい」
一斉に群がる女子生徒達。
我先にとプリントの奪い合いが始まった。
鬼龍院司「おいおい、少し落ち着けよな」
女子生徒A「でも、どうして鬼龍院先輩がうちのクラスのプリントを持ってるんですか?」
鬼龍院司「それはだな、俺様が傷つけてしまった女子へのお詫びだ」
司が向けた視線先にいたのは莉奈。
クラスの女子の視線も莉奈へと向けられた。
女子生徒B「まさか川崎莉奈を助けたんですかっ!?」
鬼龍院司「俺様はすべての女子に対して常に公平だ」
女子生徒B「でも凄い変わり者なんですよ?」
鬼龍院司「変わり者…。確かにそうかもしれないな」
髪をかきあげるお決まりのポーズで、司は女子生徒を魅了する。
再び教室に黄色い声が響き渡った。
川崎莉奈(この雰囲気…私はどうすれば…)
異様なクラスの空気に、莉奈はプリントを持ったまま固まってしまった。
鬼龍院司「川崎莉奈、そんなとこで立ってないで、キミもプリントを配るといい」
プリントを配り終えた司が莉奈へと近づく。
ごく自然な動きで莉奈の肩を掴み、エスコートするように歩き出した。
川崎莉奈(ちょっと、これは…。恥ずかしすぎるよ)
真っ赤に染まる莉奈の顔。
鼓動が高まり頭の中はぐちゃぐちゃとなる。
自分の体ではないように感じていた。
川崎莉奈「あ、あの…。プリントまだ貰ってない人は受け取ってください」
震える小さな声を莉奈は振り絞る。
女子生徒達から莉奈に突き刺さる冷たい視線が向けられた。
鬼龍院司「おいおい、誰も動かないとかありえねーわ。ほら、そこの男子、まだ貰ってないだろ」
司の力強い言葉がクラスを動かす。
受け取っていない男子生徒や女子生徒が莉奈からプリントを貰い始める。
先輩としてではなく、司という憧れの存在が言うこそ意味があった。
川崎莉奈「何度も助けていただき、本当にありがとうございます」
鬼龍院司「気にするなよ。川崎莉奈、名前はちゃんと覚えたからな」
爆弾発言だけ言い残し、司は莉奈のクラスをあとにする。
嵐が去ったようでクラスは平穏を取り戻す。
女子生徒達からは恨みと嫉妬のオーラが莉奈に放たれた。
川崎莉奈(どうして私なんかの名前を覚えたんだろ…)
理由に心当たりがなく、不思議な顔で一日を過ごした。
○学校・下駄箱(放課後)
激動の一日が終わり莉奈は疲れきっていた。
川崎莉奈(今日は長い一日だったよ)
(女子からの視線が痛かったし…)
靴を取り出していると、後ろから誰かが走ってくる音が聞こえた。
鬼龍院司「ま、間に合ったみたいだな」
川崎莉奈「き、鬼龍院先輩!?」
振り返った先にいた司に、驚きのあまり莉奈は固まってしまう。
持っていた靴が地面へと落下した。
川崎莉奈(私を探してるわけないじゃない)
(ダメ、落ち着かないとダメなんだから)
小さな深呼吸で莉奈は落ち着きを取り戻す。
莉奈は平静を装い、司が来た理由を聞いた。
川崎莉奈「慌ててるみたいですけど、どうしたんですか?」
鬼龍院司「ファンクラブから逃げてきたんだ。すべては川崎莉奈、キミと二人っきりで会うためにな」
司の言葉が莉奈の時間を止める。
朝の出来事が頭の中でゆっくり再生された。
川崎莉奈(幻聴じゃないよね…)
(鬼龍院先輩は二人っきりになるためって…)
頭の中が混乱し莉奈は何も考えられなくなった。
司が近づいてくると、後ずさりし背中が下駄箱に当たった。
川崎莉奈「あ、あの、鬼龍院先輩…? そんな真剣な顔されても困っちゃいます」
鬼龍院司「そりゃ真剣になるだろ」
壁ドンで莉奈を追い詰める司。
莉奈の顔が赤面し鼓動を激しくさせる。
互いの顔は吐息を感じるほど近かった。
鬼龍院司「川崎莉奈、伝えたい事があるから聞いてくれ」
川崎莉奈「は、はい…」
司の独特なオーラに莉奈は飲み込まれてしまう。
落ち着かせたはずの鼓動が再び激しいリズムを刻む。
二人だけの特別な世界が作られ、莉奈はどこへも逃げられなかった。
川崎莉奈(な、何を伝えるつもりなんだろ…)
絶妙な時間が莉奈の緊張を高める。
不安が心の中で膨れ上がっていった。
鬼龍院司「俺様は川崎莉奈が好きだ。だから付き合ってくれ!」
川崎莉奈「えっ…」
司の告白に莉奈の頭の中は真っ白になる。
想定外の事態に困惑し、莉奈はすぐ返事ができなかった。