本当の姿は俺の前だけな
第6話 トラウマと不安
○通学路(朝)
川崎莉奈「鬼龍院先輩、そこまで言うなら付き合います。でも勘違いしないで、鬼龍院先輩のしつこさに負けただけなんだから…」
(本当に胸のない私でいいのかな。でも、嬉しいかも)
本音を隠しつつ、莉奈は司の想いを受け入れた。
全身が火照り僅かに顔が赤く染る。
鼓動は今までで最高のリズムを刻んでいた。
鬼龍院司「そうか、やっと俺様の想いが届いたのか」
司の声が明るく嬉しそうな顔を見せる。
心の中は満足感に満たされていた。
鬼龍院司(川崎莉奈のハートを射止めたが、事情を解決しないとな)
(俺様は偽りでなく本当の愛が欲しいのだ)
莉奈の抱える悩みを司は解決したい。
ようやくスタートラインに立てたのが嬉しかった。
川崎莉奈「それでその…お願いがあるんですけど」
照れくさそうに莉奈が司に話しかける。
鬼龍院司「これからは恋人関係なんだから、なんでも言ってくれ」
堂々とした声は司から自信が溢れている。
包み込む優しさを持ち合わせ、莉奈の緊張までも和らげた。
川崎莉奈「恋人同士となったのは秘密にして欲しいんですよ」
鬼龍院司「ふむ、確かにそうかもしれない。特にファンクラブとかうるさそうだしな。よし、莉奈の言う通りにするか」
突然下の名前で呼ばれ、爆発するほど里奈の顔が真っ赤になる。
司のサプライズが効きすぎ、莉奈は心がくすぐったかった。
川崎莉奈「え、えっと、その…鬼龍院先輩、いきなり下の名前で呼ぶのは反則ですよ」
真っ赤な顔で小さい声を絞り出す莉奈。
フルネームより威力があり、思考回路がショートした。
鬼龍院司「恋人同士なんだから問題ないだろ。俺様の事は司でよろしくな」
まったく動じていない司。
大きな右手を莉奈に差し出した。
川崎莉奈「むぅ…。よ、よろしくお願いします。つ、司先輩…」
くすぐったさが莉奈の全身を襲う。
差し出された手を握り、莉奈は司の温もりを感じた。
心が満たされ安心していると、突然司が莉奈を引き寄せた。
莉奈の細い腰に回された司の手。
ダンスでも踊っているかのようで、司と莉奈の顔は近かった。
鬼龍院司「何があっても俺様が莉奈を守る。莉奈を泣かせたりなんか絶対しない。だから、些細な事でも悩みがあれば教えてくれ。俺様が必ず解決してやる」
耳元で囁かれる司の甘い言葉は力強かった。
魅力的で莉奈の心を惑わすほど。
視線を司から逸らそうにも、莉奈には出来なかった。
川崎莉奈「あ、ありがとうございます。頼りにしてます、司先輩」
(でも、胸の大きさだけは司先輩でも無理だよね…)
司の言葉を信じているが、莉奈の中ではトラウマが蘇る。
幸せと不安が入り交じる感情で、表の莉奈は満面の笑みを浮かべていた。
○学校・川崎莉奈のクラス(午前の授業中)
窓の先を眺める莉奈。
視線の先には司の姿があった。
川崎莉奈(司先輩だ…。やっぱりカッコイイなぁ)
授業そっちのけで莉奈は司に夢中。
グラウンドを走り回る司しか瞳に映っていなかった。
川崎莉奈(司先輩、運動神経抜群なんだ)
(もしかして勉強も出来るのかな)
初めて知る司に薄ら笑みを浮かべる莉奈。
イケメンで女子の憧れしか知らなく、新鮮さを感じていた。
○学校・グラウンド(午前中の授業中)
鬼龍院司「ふっ、俺様を止められる奴は誰もいないぜ?」
男子生徒A「誰でもいいから鬼龍院を止めろ!」
サッカーで司は華麗な技でフィールドを支配する。
誰も止められずまさに独壇場。
この授業は司のためにあると言っても過言ではなかった。
女子生徒C「鬼龍院くーん、カッコイイー」
女子生徒D「きゃー、さすが鬼龍院くんだよ」
授業そっちのけで司を応援する女子生徒達。
司がゴールを決めた瞬間、大歓声が湧き上がった。
鬼龍院司「ダメだぜ、姫達。授業に集中しないとな」
司は指さしポーズで女子生徒に熱い視線を送る。
魅了される声は女子生徒ハートを射抜いた。
女子生徒D「鬼龍院くんのカノジョになりたーい」
女子生徒C「ずるーい、私だってカノジョになりたいんだから」
盛り上がる女子生徒は誰にも止めらない。
司への応援はしばらく続いた。
○学校・川崎莉奈のクラス(午前の授業中)
川崎莉奈(何よ、司先輩も満更でなさそうだし)
(しかも応援してるの、胸が大きい人ばかりじゃない)
嫉妬心丸出しで莉奈の顔が膨れ上がる。
不機嫌さが増し怒りが込み上げてきた。
男性教師「──さき、川崎。よそ見してないで、次、読んでみろ」
川崎莉奈「は、はい、すみません…」
怒りをかき消すほど羞恥心に襲われる莉奈。
クラスメイトから笑われる中、教科書の1ページを読み上げた。
○学校・川崎莉奈のクラス(休憩時間)
机に顔を伏せ莉奈は自分の行動を反省する。
川崎莉奈(もぅ、恥ずかしい思いしたのは司先輩のせいなんだから…)
八つ当たりしていると莉奈のスマホ鳴った。
川崎莉奈(誰からだろ…)
(えっ、司先輩から!?)
急いでラインを見ると、昼休みに2人だけで屋上で会おう、と書かれていた。
莉奈の顔はほんのり赤く染まった。
川崎莉奈(学校で2人っきり…)
(誰にも見つからないようにしないと)
司への怒りは消え、心がふわふわになる莉奈。
期待と不安が混ざる。
昼休みが待ち遠しくもあり、来て欲しくない気持ちもあった。
○学校・廊下(昼休み)
莉奈はお弁当だけ持って廊下を歩く。
初めてで顔が緊張している。
周囲の視線を気にしながら屋上へと向かった。
川崎莉奈(みんな胸があって羨ましいなぁ)
莉奈の視線が他の女子生徒の胸へ向いてしまう。
自分の胸が異様に小さく感じ、劣等感に支配された。
川崎莉奈(うぅ…。なんだか緊張するよ)
屋上に近づくにつれ莉奈の緊張が高まる。
同時に不安も膨れ上がった。
川崎莉奈(まさか胸がないからフラれるとかないよね)
(絶対、絶対、大丈夫だよね)
頭の中で浮かぶ中学時代の失恋経験。
恐怖となって莉奈に襲いかかってきた。
○学校・屋上への階段(昼休み)
階段を1つ上る度に莉奈の心が重くなる。
授業中に見た司から女子生徒への笑顔。
頭から離れず黒いモヤに覆われた。
川崎莉奈(この先に司先輩が…)
(中学時代とは違うんだから、勇気を出さないとっ)
重い鉄のドアノブに手をかける莉奈。
過去のトラウマと戦いながら、ゆっくりと屋上への扉を開けた。
川崎莉奈「鬼龍院先輩、そこまで言うなら付き合います。でも勘違いしないで、鬼龍院先輩のしつこさに負けただけなんだから…」
(本当に胸のない私でいいのかな。でも、嬉しいかも)
本音を隠しつつ、莉奈は司の想いを受け入れた。
全身が火照り僅かに顔が赤く染る。
鼓動は今までで最高のリズムを刻んでいた。
鬼龍院司「そうか、やっと俺様の想いが届いたのか」
司の声が明るく嬉しそうな顔を見せる。
心の中は満足感に満たされていた。
鬼龍院司(川崎莉奈のハートを射止めたが、事情を解決しないとな)
(俺様は偽りでなく本当の愛が欲しいのだ)
莉奈の抱える悩みを司は解決したい。
ようやくスタートラインに立てたのが嬉しかった。
川崎莉奈「それでその…お願いがあるんですけど」
照れくさそうに莉奈が司に話しかける。
鬼龍院司「これからは恋人関係なんだから、なんでも言ってくれ」
堂々とした声は司から自信が溢れている。
包み込む優しさを持ち合わせ、莉奈の緊張までも和らげた。
川崎莉奈「恋人同士となったのは秘密にして欲しいんですよ」
鬼龍院司「ふむ、確かにそうかもしれない。特にファンクラブとかうるさそうだしな。よし、莉奈の言う通りにするか」
突然下の名前で呼ばれ、爆発するほど里奈の顔が真っ赤になる。
司のサプライズが効きすぎ、莉奈は心がくすぐったかった。
川崎莉奈「え、えっと、その…鬼龍院先輩、いきなり下の名前で呼ぶのは反則ですよ」
真っ赤な顔で小さい声を絞り出す莉奈。
フルネームより威力があり、思考回路がショートした。
鬼龍院司「恋人同士なんだから問題ないだろ。俺様の事は司でよろしくな」
まったく動じていない司。
大きな右手を莉奈に差し出した。
川崎莉奈「むぅ…。よ、よろしくお願いします。つ、司先輩…」
くすぐったさが莉奈の全身を襲う。
差し出された手を握り、莉奈は司の温もりを感じた。
心が満たされ安心していると、突然司が莉奈を引き寄せた。
莉奈の細い腰に回された司の手。
ダンスでも踊っているかのようで、司と莉奈の顔は近かった。
鬼龍院司「何があっても俺様が莉奈を守る。莉奈を泣かせたりなんか絶対しない。だから、些細な事でも悩みがあれば教えてくれ。俺様が必ず解決してやる」
耳元で囁かれる司の甘い言葉は力強かった。
魅力的で莉奈の心を惑わすほど。
視線を司から逸らそうにも、莉奈には出来なかった。
川崎莉奈「あ、ありがとうございます。頼りにしてます、司先輩」
(でも、胸の大きさだけは司先輩でも無理だよね…)
司の言葉を信じているが、莉奈の中ではトラウマが蘇る。
幸せと不安が入り交じる感情で、表の莉奈は満面の笑みを浮かべていた。
○学校・川崎莉奈のクラス(午前の授業中)
窓の先を眺める莉奈。
視線の先には司の姿があった。
川崎莉奈(司先輩だ…。やっぱりカッコイイなぁ)
授業そっちのけで莉奈は司に夢中。
グラウンドを走り回る司しか瞳に映っていなかった。
川崎莉奈(司先輩、運動神経抜群なんだ)
(もしかして勉強も出来るのかな)
初めて知る司に薄ら笑みを浮かべる莉奈。
イケメンで女子の憧れしか知らなく、新鮮さを感じていた。
○学校・グラウンド(午前中の授業中)
鬼龍院司「ふっ、俺様を止められる奴は誰もいないぜ?」
男子生徒A「誰でもいいから鬼龍院を止めろ!」
サッカーで司は華麗な技でフィールドを支配する。
誰も止められずまさに独壇場。
この授業は司のためにあると言っても過言ではなかった。
女子生徒C「鬼龍院くーん、カッコイイー」
女子生徒D「きゃー、さすが鬼龍院くんだよ」
授業そっちのけで司を応援する女子生徒達。
司がゴールを決めた瞬間、大歓声が湧き上がった。
鬼龍院司「ダメだぜ、姫達。授業に集中しないとな」
司は指さしポーズで女子生徒に熱い視線を送る。
魅了される声は女子生徒ハートを射抜いた。
女子生徒D「鬼龍院くんのカノジョになりたーい」
女子生徒C「ずるーい、私だってカノジョになりたいんだから」
盛り上がる女子生徒は誰にも止めらない。
司への応援はしばらく続いた。
○学校・川崎莉奈のクラス(午前の授業中)
川崎莉奈(何よ、司先輩も満更でなさそうだし)
(しかも応援してるの、胸が大きい人ばかりじゃない)
嫉妬心丸出しで莉奈の顔が膨れ上がる。
不機嫌さが増し怒りが込み上げてきた。
男性教師「──さき、川崎。よそ見してないで、次、読んでみろ」
川崎莉奈「は、はい、すみません…」
怒りをかき消すほど羞恥心に襲われる莉奈。
クラスメイトから笑われる中、教科書の1ページを読み上げた。
○学校・川崎莉奈のクラス(休憩時間)
机に顔を伏せ莉奈は自分の行動を反省する。
川崎莉奈(もぅ、恥ずかしい思いしたのは司先輩のせいなんだから…)
八つ当たりしていると莉奈のスマホ鳴った。
川崎莉奈(誰からだろ…)
(えっ、司先輩から!?)
急いでラインを見ると、昼休みに2人だけで屋上で会おう、と書かれていた。
莉奈の顔はほんのり赤く染まった。
川崎莉奈(学校で2人っきり…)
(誰にも見つからないようにしないと)
司への怒りは消え、心がふわふわになる莉奈。
期待と不安が混ざる。
昼休みが待ち遠しくもあり、来て欲しくない気持ちもあった。
○学校・廊下(昼休み)
莉奈はお弁当だけ持って廊下を歩く。
初めてで顔が緊張している。
周囲の視線を気にしながら屋上へと向かった。
川崎莉奈(みんな胸があって羨ましいなぁ)
莉奈の視線が他の女子生徒の胸へ向いてしまう。
自分の胸が異様に小さく感じ、劣等感に支配された。
川崎莉奈(うぅ…。なんだか緊張するよ)
屋上に近づくにつれ莉奈の緊張が高まる。
同時に不安も膨れ上がった。
川崎莉奈(まさか胸がないからフラれるとかないよね)
(絶対、絶対、大丈夫だよね)
頭の中で浮かぶ中学時代の失恋経験。
恐怖となって莉奈に襲いかかってきた。
○学校・屋上への階段(昼休み)
階段を1つ上る度に莉奈の心が重くなる。
授業中に見た司から女子生徒への笑顔。
頭から離れず黒いモヤに覆われた。
川崎莉奈(この先に司先輩が…)
(中学時代とは違うんだから、勇気を出さないとっ)
重い鉄のドアノブに手をかける莉奈。
過去のトラウマと戦いながら、ゆっくりと屋上への扉を開けた。