本当の姿は俺の前だけな
第7話 秘密の屋上
○学校・屋上(昼休み)
莉奈の心を映している曇り空。
屋上へ足を踏み入れ、莉奈は司を探した。
川崎莉奈「司先輩はどこにいるのかなー」
屋上を歩き回る莉奈。
一周しても司は見つからなかった。
川崎莉奈「ウソ…。司先輩に限ってそんな事ないって信じてたのに…」
いるはずの司が見当たらず、莉奈の顔は絶望的なものとなる。
自然と涙がこぼれ落ち地面を湿らせた。
川崎莉奈「きっと胸のせいだよね。私に胸がないから…」
自己嫌悪に陥る莉奈。
空と同じで心がどんよりとしていると、トビラが開く音が聞こえた。
鬼龍院司「すまん、俺様とした事が遅れた。ファンクラブの連中がしつこく──って、泣いているのか、莉奈?」
薄ら汗をかいている司が莉奈を心配する。
すぐに駆け寄り優しく抱きしめた。
川崎莉奈「べ、別に泣いてないですからっ。目にゴミが入っただけなんだから…」
司の温もりに莉奈は甘える。
冷たかった心が温まり、涙が自然と止まった。
鬼龍院司「泣かせないって約束したのに、莉奈を泣かせるとは、俺様として自分が許せない」
司は約束を反故する自分を許せなかった。
悔しさが顔に出ていた。
川崎莉奈「ち、違うの、司先輩。私が勝手に勘違いしただけなんです」
鬼龍院司「それは違うな。どんな理由があれ、莉奈を泣かした事実に変わりはない。王子として失格だ」
川崎莉奈「司先輩、そんなに自分を責めないでください。それよりお昼にしませんか?」
莉奈は必死な顔で話題を変える。
責任を感じている司は難しい顔。
お昼の時間が限られているのもあり、司は莉奈の提案に小さく頷いた。
2人に笑顔が戻り景色のいい場所でお昼にする。
隣合って座りそれぞれがお弁当を広げた。
川崎莉奈「司先輩って、いつも購買なんですか?」
鬼龍院司「そうだな、購買の方が楽なんだ」
川崎莉奈「そっか、購買か…」
(手作り弁当渡したら喜んでくれるかな)
莉奈は下を向き微かに微笑んだ。
鬼龍院司「莉奈のお弁当は誰が作っているんだ?」
川崎莉奈「えっと、自分で作ってます」
(これはチャンスよ、莉奈。勇気を出すなら今なんだから)
莉奈の心音が大きくなる。
緊張で莉奈は手を軽く握り締めた。
鬼龍院司「それは凄いな。俺様は料理が苦手なんだ」
川崎莉奈「司先輩にも苦手なものがあるんですね。それなら──」
莉奈の鼓動は激しくなる一方。
莉奈から次の言葉が出るのに一瞬だけ間があった。
川崎莉奈「私が司先輩のお弁当を作りましょうか? あっ、め、迷惑でしたらいいんですけど…」
心臓が破裂しそうなくらい緊張する莉奈。
震える声で精一杯の勇気を絞り出した。
鬼龍院司「俺様は迷惑だなんて思わないぜ。むしろ感謝するくらいだ」
堂々とした口調で司は、温かみのある笑顔を莉奈に向けた。
川崎莉奈「そ、それじゃ、明日から毎日作ってきますね」
鬼龍院司「ありがとうな、莉奈。本当に助かるぜ」
初めて見た司の本当の笑顔に、莉奈は嬉しくなる。
重圧から解放され、自然と莉奈自身も満面の笑みを浮かべていた。
笑い声が飛び交う昼食は、莉奈にとって久しぶりだった。
心の奥に存在するトラウマが消えたわけではない。
莉奈は常に怯えていた。
川崎莉奈「司先輩、嫌いなものとかありますか?」
鬼龍院司「俺様に嫌いなものはないぜ」
川崎莉奈「分かりました。では、とっておきのお弁当を作ってきますね」
料理が得意な莉奈は自信満々に答える。
胸がなくとも自慢できる特技は多々ある。
ただ胸が小さいだけで、莉奈は弱気になっているだけだった。
鬼龍院司「楽しみにしておくぜ」
川崎莉奈「必ず司先輩を満足させてみせますからっ」
誰かのために頑張れる事が莉奈を奮い立たせる。
今までゼロだった自信が溢れ、別人のような笑顔を見せていた。
川崎莉奈「そういえば司先輩、他の子のお弁当はどうするんですか?」
鬼龍院司「もちろん断るさ。莉奈の弁当の方が大切だからな」
川崎莉奈「あ、ありがとうございます…」
輝く笑顔の司に莉奈は照れくさくお礼を言う。
静な鼓動が心地よく、莉奈の心は安心感に満たされた。
川崎莉奈「そういえば気になってたんですけど、司先輩は学校では俺様と言うのに、外では俺と言いますよね?」
鬼龍院司「あぁ、学校内なら様付けでいいんだが、外ですると威張ってるようだからな。我が道を行きつつ俺様は周囲にも配慮したいんだ」
司の考えに莉奈は感心した。
尊敬の眼差しを向ける。
川崎莉奈(見た目からは想像できなかったけど…)
(司先輩って色々考えて行動してるんだ)
自分だけが知れてよかったと思う莉奈。
口元に笑みを浮かべ嬉しさが表にでてきた。
川崎莉奈「やっぱり司先輩って見かけと違うんですよねー。横断歩道でお年寄りを助けたりもしましたし」
鬼龍院司「そうだなー、自分でそうしてるからな。だが、初めて言われたぜ」
嬉しそうな顔をする司。
欠けていた心が満たされた。
川崎莉奈「ご、ごめんなさい。失礼な事言って…」
鬼龍院司「謝る必要なんてないさ。むしろ俺様は嬉しいと思ってるけどな」
司は優しく莉奈の肩に触れ安心感を与える。
恐縮していた莉奈の顔が徐々に和らいだ。
鬼龍院司「俺様も莉奈に聞きたい事があるんだ」
川崎莉奈「なんですか?」
鬼龍院司「なぜ休日と学校で髪型とかを変えているんだ?」
莉奈の心に司の言葉がチクリと刺さる。
顔が暗くなり本当の事を言うべきか悩んだ。
川崎莉奈(どうしよう…。理由なんて言ったら嫌われるかも)
(でも…司先輩にウソはつきたくないし)
莉奈の心臓が大きな音を立てる。
下を向き軽く下唇を噛み無言となってしまう。
川崎莉奈(司先輩を信じていいんだよね…?)
(他の男子とは違うはずだよね)
悩み続ける中、莉奈は司を信じようと決める。
重い口をゆっくり開き理由を話し始めた。
川崎莉奈「そ、それはですね…。私には──」
勇気を振り絞る莉奈の顔は真剣だった。
過去のトラウマと懸命に戦う莉奈。
自分のコンプレックスを司に告げようとしていた。
莉奈の心を映している曇り空。
屋上へ足を踏み入れ、莉奈は司を探した。
川崎莉奈「司先輩はどこにいるのかなー」
屋上を歩き回る莉奈。
一周しても司は見つからなかった。
川崎莉奈「ウソ…。司先輩に限ってそんな事ないって信じてたのに…」
いるはずの司が見当たらず、莉奈の顔は絶望的なものとなる。
自然と涙がこぼれ落ち地面を湿らせた。
川崎莉奈「きっと胸のせいだよね。私に胸がないから…」
自己嫌悪に陥る莉奈。
空と同じで心がどんよりとしていると、トビラが開く音が聞こえた。
鬼龍院司「すまん、俺様とした事が遅れた。ファンクラブの連中がしつこく──って、泣いているのか、莉奈?」
薄ら汗をかいている司が莉奈を心配する。
すぐに駆け寄り優しく抱きしめた。
川崎莉奈「べ、別に泣いてないですからっ。目にゴミが入っただけなんだから…」
司の温もりに莉奈は甘える。
冷たかった心が温まり、涙が自然と止まった。
鬼龍院司「泣かせないって約束したのに、莉奈を泣かせるとは、俺様として自分が許せない」
司は約束を反故する自分を許せなかった。
悔しさが顔に出ていた。
川崎莉奈「ち、違うの、司先輩。私が勝手に勘違いしただけなんです」
鬼龍院司「それは違うな。どんな理由があれ、莉奈を泣かした事実に変わりはない。王子として失格だ」
川崎莉奈「司先輩、そんなに自分を責めないでください。それよりお昼にしませんか?」
莉奈は必死な顔で話題を変える。
責任を感じている司は難しい顔。
お昼の時間が限られているのもあり、司は莉奈の提案に小さく頷いた。
2人に笑顔が戻り景色のいい場所でお昼にする。
隣合って座りそれぞれがお弁当を広げた。
川崎莉奈「司先輩って、いつも購買なんですか?」
鬼龍院司「そうだな、購買の方が楽なんだ」
川崎莉奈「そっか、購買か…」
(手作り弁当渡したら喜んでくれるかな)
莉奈は下を向き微かに微笑んだ。
鬼龍院司「莉奈のお弁当は誰が作っているんだ?」
川崎莉奈「えっと、自分で作ってます」
(これはチャンスよ、莉奈。勇気を出すなら今なんだから)
莉奈の心音が大きくなる。
緊張で莉奈は手を軽く握り締めた。
鬼龍院司「それは凄いな。俺様は料理が苦手なんだ」
川崎莉奈「司先輩にも苦手なものがあるんですね。それなら──」
莉奈の鼓動は激しくなる一方。
莉奈から次の言葉が出るのに一瞬だけ間があった。
川崎莉奈「私が司先輩のお弁当を作りましょうか? あっ、め、迷惑でしたらいいんですけど…」
心臓が破裂しそうなくらい緊張する莉奈。
震える声で精一杯の勇気を絞り出した。
鬼龍院司「俺様は迷惑だなんて思わないぜ。むしろ感謝するくらいだ」
堂々とした口調で司は、温かみのある笑顔を莉奈に向けた。
川崎莉奈「そ、それじゃ、明日から毎日作ってきますね」
鬼龍院司「ありがとうな、莉奈。本当に助かるぜ」
初めて見た司の本当の笑顔に、莉奈は嬉しくなる。
重圧から解放され、自然と莉奈自身も満面の笑みを浮かべていた。
笑い声が飛び交う昼食は、莉奈にとって久しぶりだった。
心の奥に存在するトラウマが消えたわけではない。
莉奈は常に怯えていた。
川崎莉奈「司先輩、嫌いなものとかありますか?」
鬼龍院司「俺様に嫌いなものはないぜ」
川崎莉奈「分かりました。では、とっておきのお弁当を作ってきますね」
料理が得意な莉奈は自信満々に答える。
胸がなくとも自慢できる特技は多々ある。
ただ胸が小さいだけで、莉奈は弱気になっているだけだった。
鬼龍院司「楽しみにしておくぜ」
川崎莉奈「必ず司先輩を満足させてみせますからっ」
誰かのために頑張れる事が莉奈を奮い立たせる。
今までゼロだった自信が溢れ、別人のような笑顔を見せていた。
川崎莉奈「そういえば司先輩、他の子のお弁当はどうするんですか?」
鬼龍院司「もちろん断るさ。莉奈の弁当の方が大切だからな」
川崎莉奈「あ、ありがとうございます…」
輝く笑顔の司に莉奈は照れくさくお礼を言う。
静な鼓動が心地よく、莉奈の心は安心感に満たされた。
川崎莉奈「そういえば気になってたんですけど、司先輩は学校では俺様と言うのに、外では俺と言いますよね?」
鬼龍院司「あぁ、学校内なら様付けでいいんだが、外ですると威張ってるようだからな。我が道を行きつつ俺様は周囲にも配慮したいんだ」
司の考えに莉奈は感心した。
尊敬の眼差しを向ける。
川崎莉奈(見た目からは想像できなかったけど…)
(司先輩って色々考えて行動してるんだ)
自分だけが知れてよかったと思う莉奈。
口元に笑みを浮かべ嬉しさが表にでてきた。
川崎莉奈「やっぱり司先輩って見かけと違うんですよねー。横断歩道でお年寄りを助けたりもしましたし」
鬼龍院司「そうだなー、自分でそうしてるからな。だが、初めて言われたぜ」
嬉しそうな顔をする司。
欠けていた心が満たされた。
川崎莉奈「ご、ごめんなさい。失礼な事言って…」
鬼龍院司「謝る必要なんてないさ。むしろ俺様は嬉しいと思ってるけどな」
司は優しく莉奈の肩に触れ安心感を与える。
恐縮していた莉奈の顔が徐々に和らいだ。
鬼龍院司「俺様も莉奈に聞きたい事があるんだ」
川崎莉奈「なんですか?」
鬼龍院司「なぜ休日と学校で髪型とかを変えているんだ?」
莉奈の心に司の言葉がチクリと刺さる。
顔が暗くなり本当の事を言うべきか悩んだ。
川崎莉奈(どうしよう…。理由なんて言ったら嫌われるかも)
(でも…司先輩にウソはつきたくないし)
莉奈の心臓が大きな音を立てる。
下を向き軽く下唇を噛み無言となってしまう。
川崎莉奈(司先輩を信じていいんだよね…?)
(他の男子とは違うはずだよね)
悩み続ける中、莉奈は司を信じようと決める。
重い口をゆっくり開き理由を話し始めた。
川崎莉奈「そ、それはですね…。私には──」
勇気を振り絞る莉奈の顔は真剣だった。
過去のトラウマと懸命に戦う莉奈。
自分のコンプレックスを司に告げようとしていた。