本当の姿は俺の前だけな
第9話 司のコンプレックス
○学校・屋上(お昼休み)
鬼龍院司「鮮やかな彩りで美味しそうじゃないか」
目を見開き司は驚いていた。
今まで見た中で一番と言ってもいい。
この弁当を食べられる事に司は幸せを感じた。
川崎莉奈「司先輩のために一生懸命作りました。それに…ううん、なんでもないです」
(愛情込めてなんて、恥ずかしすぎて言えるわけないよ)
急にしおらしくなる莉奈。
愛情という言葉を口に出すのが恥ずかしかった。
ほんのり顔が赤く染まっていた。
鬼龍院司「それじゃ遠慮なく頂くとするか」
司の箸が弁当に伸びていく。
緊張の瞬間で莉奈は静かに見守る。
心臓がリズミカルに動き、莉奈は司の反応を待っていた。
川崎莉奈(大丈夫だよね…。何度も味見したんだし)
(でも司先輩の口に合わなかったらどうしよ…)
莉奈の心に不安が襲いかかる。
黒いモヤに包まれ気が気でなくなった。
鬼龍院司「こ、これは…」
川崎莉奈(どっちなの。早く教えてくれないと心がもたないよ)
スロー再生されたように時間の流れが遅く感じる莉奈。
司の口元に視線を集中させ、何が飛び出すのか期待と不安が入り交じっていた。
鬼龍院司「美味い、懐かしさを感じ心から温まるな」
司の箸が止まらなかった。
笑みを浮かべながら次々と口に放り込んだ。
川崎莉奈「よ、よかったー」
ひと安心する莉奈。
緊張の糸が解け緩んだ顔となる。
胸に手を当て喜んでいた。
川崎莉奈「口に合わなかったら、どうしようかと思いましたよー」
鬼龍院司「お世辞なしに美味いぜ。ホントに毎日食べたいぐらいだ」
川崎莉奈「司先輩がそう言うなら…私、毎日作ってもいいかなって」
莉奈の小さなは恥ずかしさの現れ。
僅かに顔を赤く染め、心の中は嬉しそうだった。
鬼龍院司「ほら、ボーッとしてないで、莉奈もお昼食べようぜ」
川崎莉奈「は、はい、そうですね」
司に急かされ莉奈は自分のお弁当を広げる。
彩りが同じお弁当を2人は楽しそうに食べていた。
川崎莉奈「あ、あの…。司先輩に聞きたい事があるんですけど」
鬼龍院司「そんなに畏まる必要はないぜ? 俺様と莉奈は恋人同士なんだからな」
川崎莉奈「こ、恋人同士…。そ、そうですよね、恋人同士ですからね」
莉奈の脳に恋人同士という言葉を刻みつける。
事実には違いないが、莉奈の心臓を鷲掴みにする。
顔の色が赤くなり、夢でない現実に莉奈は実感した。
川崎莉奈「えっと、昨日、司先輩が話しかけてた事なんですけど…」
鬼龍院司「昨日? あぁ、あれを聞きたいのか」
川崎莉奈「は、はい。司先輩の事、少しでも多く知っておきたくて…」
鬼龍院司「いいぜ、これから話すのは莉奈しか知らない事だ。誰にも話してないんだぜ?」
2人だけの秘密に酔いしれる莉奈。
自分だけが知る事ができ、優越感に浸っていた。
川崎莉奈「ありがとうございます」
鬼龍院司「莉奈だから話すんだ。俺様のすべてを知って欲しいからな」
莉奈が司にとって特別な存在だからこそ話せる。
司は自分の内面をさらけ出そうとした。
鬼龍院司「俺様の実家は…会社を経営していてな。いわゆる家族経営ってやつだ。規模もそこそこ大きく社員も結構な数いるんだ」
川崎莉奈「そうだったんですね…」
莉奈にはそれ以上の言葉が思い浮かばない。
驚き顔でその場で固まってしまった。
鬼龍院司「まぁな。環境的にはいいと思うが、俺様の考え方は家族と真逆なんだ」
川崎莉奈「でも、家族と意見が合わないってよくあると思いますけど」
鬼龍院司「普通の家族ならそうだが、俺様の家族は俺様の意思に関係なく、会社を継がせようとしているんだ」
珍しく司の顔から怒りが滲み出る。
初めて見る表情に、莉奈も驚きを隠せなかった。
鬼龍院司「だから俺様決めたんだ。道は俺様自らが作ると。そもそも会社を知らない人間が上に立ってどうする。従業員からすればいい迷惑じゃないか」
川崎莉奈「確かにそうですよね。従業員だって努力してるんですし」
鬼龍院司「そう、そこなんだ、俺様が起こっているのは。努力を台無しにするのはありえない」
拳を握り司の怒りは最高潮に達する。
自分だけが他の家族とは違う。
そこに違和感を覚えていた。
鬼龍院司「それにな、中学の頃、社長の息子だからって媚び売る連中が多くてうんざりだった。だから俺様は社長の息子じゃなく、鬼龍院司として生きようと決めたんだ」
司の力強い言葉は覚悟の現れだった。
コンプレックスを克服する想いが強く出ていた。
川崎莉奈「考え方がしっかりしてて、司先輩はステキですね。私なんて…胸が小さいだけというコンプレックスなのに…」
鬼龍院司「コンプレックスに大きさはないぜ。心の傷はそんなの関係ないんだからな」
司の言葉に莉奈の心は救われる。
人間的にも大きい司に莉奈は憧れを抱いた。
川崎莉奈(コンプレックスに立ち向かえる勇気…)
(私にそれがあったら少しは変われるのかな)
司に心が揺れ動かさられる莉奈。
少しでも強く変わろうとしていた。
川崎莉奈「やっぱり司先輩はカッコイイです」
鬼龍院司「俺様はイケメンだからな」
川崎莉奈「そういう意味じゃないんですけど…」
莉奈には司の言動がわざとなのか分からなかった。
司の顔は煌めく輝きを放っている。
川崎莉奈(司先輩はボケで言ってるのかな)
(それとも本気なのかな)
真剣に悩み出す莉奈。
どちらか正解か悩んでいると──。
川崎莉奈「ひゃっ!? つ、司先輩、顔が近すぎますって」
鬼龍院司「何か悩み事でもあるのか? 俺様がなんでも聞いてやるぜ」
莉奈の顔が真っ赤になるのは当然だった。
2人はキスする寸前の距離。
司の甘いマスクが莉奈の心音を激しくさせた。
川崎莉奈「そ、その前にもう少し離れてくれませんと…」
鬼龍院司「どうしてだ? 俺様と莉奈は恋人同士なんだから問題ないだろ?」
顎クイで莉奈は逃げ道を塞がれる。
近づく司の顔で破裂しそうな心臓はすでに限界。
頭の中が真っ白となり莉奈は何も考えられなくなった。
川崎莉奈「ま、待ってください、司先輩。少し落ち着きましょう」
空気に逆らい莉奈が流れを強引に止める。
赤面する顔を下に向け、呼吸が大きく乱れていた。
川崎莉奈(危なかった…。もう少しでキスするかと思ったよ)
(べ、別にイヤじゃないんだけど、ただ覚悟がね…)
莉奈は心の中で言い訳をする。
司が嫌いではなく、ファーストキスだから緊張していた。
川崎莉奈(とにかく話題を変えよ)
(うん、それが2人のためだよね)
流れを変えようと莉奈は強引に話題を司に振った。
川崎莉奈「私が考えてたのはね、司先輩の道ってどんなのかなって事なんですよ」
司の顔色を伺う莉奈。
嫌われていないか心配そうな眼差しを向ける。
川崎莉奈(変な事は聞いてないはずだよ)
(まさかこれで失恋とかないよね…)
不安が膨れ上がり、莉奈の顔は絶望色に染まる。
司からの返事を緊張しながら待った。
息を飲み込んでいると、司の口がゆっくり動き始めた。
鬼龍院司「鮮やかな彩りで美味しそうじゃないか」
目を見開き司は驚いていた。
今まで見た中で一番と言ってもいい。
この弁当を食べられる事に司は幸せを感じた。
川崎莉奈「司先輩のために一生懸命作りました。それに…ううん、なんでもないです」
(愛情込めてなんて、恥ずかしすぎて言えるわけないよ)
急にしおらしくなる莉奈。
愛情という言葉を口に出すのが恥ずかしかった。
ほんのり顔が赤く染まっていた。
鬼龍院司「それじゃ遠慮なく頂くとするか」
司の箸が弁当に伸びていく。
緊張の瞬間で莉奈は静かに見守る。
心臓がリズミカルに動き、莉奈は司の反応を待っていた。
川崎莉奈(大丈夫だよね…。何度も味見したんだし)
(でも司先輩の口に合わなかったらどうしよ…)
莉奈の心に不安が襲いかかる。
黒いモヤに包まれ気が気でなくなった。
鬼龍院司「こ、これは…」
川崎莉奈(どっちなの。早く教えてくれないと心がもたないよ)
スロー再生されたように時間の流れが遅く感じる莉奈。
司の口元に視線を集中させ、何が飛び出すのか期待と不安が入り交じっていた。
鬼龍院司「美味い、懐かしさを感じ心から温まるな」
司の箸が止まらなかった。
笑みを浮かべながら次々と口に放り込んだ。
川崎莉奈「よ、よかったー」
ひと安心する莉奈。
緊張の糸が解け緩んだ顔となる。
胸に手を当て喜んでいた。
川崎莉奈「口に合わなかったら、どうしようかと思いましたよー」
鬼龍院司「お世辞なしに美味いぜ。ホントに毎日食べたいぐらいだ」
川崎莉奈「司先輩がそう言うなら…私、毎日作ってもいいかなって」
莉奈の小さなは恥ずかしさの現れ。
僅かに顔を赤く染め、心の中は嬉しそうだった。
鬼龍院司「ほら、ボーッとしてないで、莉奈もお昼食べようぜ」
川崎莉奈「は、はい、そうですね」
司に急かされ莉奈は自分のお弁当を広げる。
彩りが同じお弁当を2人は楽しそうに食べていた。
川崎莉奈「あ、あの…。司先輩に聞きたい事があるんですけど」
鬼龍院司「そんなに畏まる必要はないぜ? 俺様と莉奈は恋人同士なんだからな」
川崎莉奈「こ、恋人同士…。そ、そうですよね、恋人同士ですからね」
莉奈の脳に恋人同士という言葉を刻みつける。
事実には違いないが、莉奈の心臓を鷲掴みにする。
顔の色が赤くなり、夢でない現実に莉奈は実感した。
川崎莉奈「えっと、昨日、司先輩が話しかけてた事なんですけど…」
鬼龍院司「昨日? あぁ、あれを聞きたいのか」
川崎莉奈「は、はい。司先輩の事、少しでも多く知っておきたくて…」
鬼龍院司「いいぜ、これから話すのは莉奈しか知らない事だ。誰にも話してないんだぜ?」
2人だけの秘密に酔いしれる莉奈。
自分だけが知る事ができ、優越感に浸っていた。
川崎莉奈「ありがとうございます」
鬼龍院司「莉奈だから話すんだ。俺様のすべてを知って欲しいからな」
莉奈が司にとって特別な存在だからこそ話せる。
司は自分の内面をさらけ出そうとした。
鬼龍院司「俺様の実家は…会社を経営していてな。いわゆる家族経営ってやつだ。規模もそこそこ大きく社員も結構な数いるんだ」
川崎莉奈「そうだったんですね…」
莉奈にはそれ以上の言葉が思い浮かばない。
驚き顔でその場で固まってしまった。
鬼龍院司「まぁな。環境的にはいいと思うが、俺様の考え方は家族と真逆なんだ」
川崎莉奈「でも、家族と意見が合わないってよくあると思いますけど」
鬼龍院司「普通の家族ならそうだが、俺様の家族は俺様の意思に関係なく、会社を継がせようとしているんだ」
珍しく司の顔から怒りが滲み出る。
初めて見る表情に、莉奈も驚きを隠せなかった。
鬼龍院司「だから俺様決めたんだ。道は俺様自らが作ると。そもそも会社を知らない人間が上に立ってどうする。従業員からすればいい迷惑じゃないか」
川崎莉奈「確かにそうですよね。従業員だって努力してるんですし」
鬼龍院司「そう、そこなんだ、俺様が起こっているのは。努力を台無しにするのはありえない」
拳を握り司の怒りは最高潮に達する。
自分だけが他の家族とは違う。
そこに違和感を覚えていた。
鬼龍院司「それにな、中学の頃、社長の息子だからって媚び売る連中が多くてうんざりだった。だから俺様は社長の息子じゃなく、鬼龍院司として生きようと決めたんだ」
司の力強い言葉は覚悟の現れだった。
コンプレックスを克服する想いが強く出ていた。
川崎莉奈「考え方がしっかりしてて、司先輩はステキですね。私なんて…胸が小さいだけというコンプレックスなのに…」
鬼龍院司「コンプレックスに大きさはないぜ。心の傷はそんなの関係ないんだからな」
司の言葉に莉奈の心は救われる。
人間的にも大きい司に莉奈は憧れを抱いた。
川崎莉奈(コンプレックスに立ち向かえる勇気…)
(私にそれがあったら少しは変われるのかな)
司に心が揺れ動かさられる莉奈。
少しでも強く変わろうとしていた。
川崎莉奈「やっぱり司先輩はカッコイイです」
鬼龍院司「俺様はイケメンだからな」
川崎莉奈「そういう意味じゃないんですけど…」
莉奈には司の言動がわざとなのか分からなかった。
司の顔は煌めく輝きを放っている。
川崎莉奈(司先輩はボケで言ってるのかな)
(それとも本気なのかな)
真剣に悩み出す莉奈。
どちらか正解か悩んでいると──。
川崎莉奈「ひゃっ!? つ、司先輩、顔が近すぎますって」
鬼龍院司「何か悩み事でもあるのか? 俺様がなんでも聞いてやるぜ」
莉奈の顔が真っ赤になるのは当然だった。
2人はキスする寸前の距離。
司の甘いマスクが莉奈の心音を激しくさせた。
川崎莉奈「そ、その前にもう少し離れてくれませんと…」
鬼龍院司「どうしてだ? 俺様と莉奈は恋人同士なんだから問題ないだろ?」
顎クイで莉奈は逃げ道を塞がれる。
近づく司の顔で破裂しそうな心臓はすでに限界。
頭の中が真っ白となり莉奈は何も考えられなくなった。
川崎莉奈「ま、待ってください、司先輩。少し落ち着きましょう」
空気に逆らい莉奈が流れを強引に止める。
赤面する顔を下に向け、呼吸が大きく乱れていた。
川崎莉奈(危なかった…。もう少しでキスするかと思ったよ)
(べ、別にイヤじゃないんだけど、ただ覚悟がね…)
莉奈は心の中で言い訳をする。
司が嫌いではなく、ファーストキスだから緊張していた。
川崎莉奈(とにかく話題を変えよ)
(うん、それが2人のためだよね)
流れを変えようと莉奈は強引に話題を司に振った。
川崎莉奈「私が考えてたのはね、司先輩の道ってどんなのかなって事なんですよ」
司の顔色を伺う莉奈。
嫌われていないか心配そうな眼差しを向ける。
川崎莉奈(変な事は聞いてないはずだよ)
(まさかこれで失恋とかないよね…)
不安が膨れ上がり、莉奈の顔は絶望色に染まる。
司からの返事を緊張しながら待った。
息を飲み込んでいると、司の口がゆっくり動き始めた。