第四幕、御三家の幕引
「んー、年末は祖母ちゃんの家に行ってたんだけど、明日、駿哉達とセンター模試受けに行くんだよ。だから今朝帰った」

「あ、帰ったばっかりなの?」

「うん。正直眠いし、お腹空いた」


 言いながら、くぁっ、と犬のように欠伸をしてみせる。なるほど。というか、センター模試なんて受けるんだな……。学校指定の模試以外はお金がかかってしまうので特にリサーチもかけてなかったし、知らなかった。でも、桐椰くんと月影くんはレベルが高いしな……そういう人達だけ受ければいいのだ、と自分を安心させる。


「で、お前は? あれからちゃんとご飯食べてたのかよ」

「食べてた食べてた。ぷっくりしたでしょ?」

「全っ然。冗談も大概にしろよ」


 チッ、と舌打ちするその顔はヤンキーそのものだった。年末のあの有様がバレたのは痛かったな……。今後ことあるごとに生活の杜撰(ずさん)さを疑われてしまうんだろう。なんだか桐椰くんが一層過保護になっちゃったな。


「まぁ俺が口出すことじゃねーけど」

「この間から桐椰くん拗ねっぱなしだよ。少し大人になろ、ネッ」

「何がネッだよ! 新年早々うぜーなお前は。ったく誰のせいだと……」


 ちょっと不機嫌そうな顔をしていたくせに、やってきたグラタンを食べ始めると頬が緩んでいる。美味しかったんだな。分かりやすいな。


「そういえばさぁ、月末、総の誕生日なんだよ」

「あ、そうなの? 何日?」

「三十一日」


 カレンダーで確認すると、火曜日だ。ということは学校にいるときにプレゼントを渡す感じかな。


「松隆くんのプレゼントって……一体何を渡せばいいんですか……」


 あの超お坊ちゃまに何を貢ぐことができようか、と一瞬で自分の顔が真っ青になるのを感じた。とても高校生がぽんと出せる値段ではない持ち物しか持ってない気がする。そういう持ち物の中にザ・庶民なグッズを紛れ込ませるなんて畏れ多い。


「別に高級品渡す必要ねーよ。渡せば何でも喜ぶし」

「えー……あの松隆くんが……?」

「口先では素っ気ないけどな。つか、なんやかんやアイツの持ち物高いもんばっかで下手なもんあげれねーから、消耗品渡すことが多いのは多いんだよなぁ」


 私の抱いている懸念は幼馴染達をも悩ませているらしい。去年は何をあげたんだったか、と桐椰くんは首を捻っている。


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