第四幕、御三家の幕引
 クソを連発しながら、桐椰くんは苦虫を噛み潰した。自分との差を見せつけられそうだから月影くんの模試の結果は見ないままでいいな。

 それから暫く、松隆くんのプレゼントを買うお店の当たりをつけるべく、揃ってスマホをいじっていた。初詣には来たものの、お店の中が暖かくて中々外に出る気になれず、その口実みたいなものだ。ただ、混雑してきたので、食べ終わっても居座るには気まずく、仕方なく重い腰をあげた。


「あ、お見舞い来てくれたから出しますよ」

「別にいいっての、反省してもっと早めに連絡くれるようにしてくれ」


 結局材料費も払ってないし、と申し出たのに桐椰くんはしっしと手を振る。でもさすがにお世話になりっぱなしだと思うんだな。


「まーまー、桐椰くんにはお世話になってますし、お礼くらいさせてくださいな」

「マジでそう思ってんなら金より行動で返してほしいけどな。お前いっつも何も言わないから」

「あ、これからは必要なことは報告します、はい」


 そこまで言って漸く桐椰くんは納得したけど、ふ、甘いな。この言い方なら、私が必要だと思わなければ報告しなくていいことになるのだ。

 お店で結構暖まってしまっていたせいで、外に出ると昼前よりも寒くなった気がした。天気は良くて気温は上がっているはずなのに。ぶるっと震えながらマフラーを巻きなおす。


「なんで初詣なんてやる風習あるんだろうね? こんな寒い日はおこたでぬくぬくしてたいよね」

「初詣全否定すんじゃねぇよ。つか文句言うなら誘われても来んなよ!」

「だって家にいても暇だったし、暫く人と話してなかったし。桐椰くんも寂しがってるかなって」

「配慮に煽り混ぜてくんじゃねーよ」

「ていうか初詣って何のお願いするの? とりあえず見様見真似でやってるけど」

「知らねーよ、去年お世話になったけど今年もお願いします的な感じでいいんじゃねーの」

「神様にお世話になった記憶ないんだよね……」

「お前もう家帰れよ」


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