第四幕、御三家の幕引
桐椰くんは答えない。でも問い詰める術が私にはなくて、じっと待った。お見舞いに来てくれたときと似たような沈黙が落ちる。
「……お前が、鹿島と付き合った日」
重苦しそうではあったけれど、先に口を開いたのは桐椰くんだった。
「あの日……言われたんだよ。お前が養子だって知らねーのかって」
「……偶々優実に会って、急にそんな話したの?」
「いや、会ったのは偶々だけど、多分そんな話になった理由は……」
口籠る理由は、そんなことを教えた優実を庇うためだろうか。
「……だから、お前に無断で聞いたのは、その、悪かったって思ってる」
「……別に責めてるわけじゃないんだけど。聞いてるんだよ」
「……仲良いくせに何も知らねーのかって言われたんだよ」
少し悩んだ後、声だけじゃなく表情も少し荒げて、まるで吐き出すように、桐椰くんは乱暴に答えた。
「仲良いけど、何も聞かされてないってことは上っ面だけなんじゃねーのかって。そこまではっきりとは言われてねーけど、要はそういう感じのこと言いやがったんだよ、お前の妹が」
「……優実がそこまで言う理由が分かんない」
「俺にだって分かんねーよ。それはお前の妹に訊けよ」
「それで、養子だって?」
「そうだよ、お前と本当の姉妹じゃないって聞いたことあんのかって。本当の親のことも何も知らないんじゃねーのかってな」
よりによって私が鹿島くんと付き合った日……。桐椰くんは体育祭の日には優実をフッたんだと、松隆くんが話していた。もし、桐椰くんが、私にフラれたことを優実に話したとしたら、フラれたなら自分と付き合えばいいと言う……かな。優実の恋愛に対するスタンスを知らないのでそこは首を捻ってしまう。それでも桐椰くんが頷かないから、優実が自棄になって私が養子だってバラしちゃった、っていうのも筋は通る気がする……。
「それで……なんつーか……聞かされたって言うのはせこいけど、止める間もなく聞いちまったっつーか……」
申し訳なさを表すように、その語尾は萎んでいった。話し始めるときに少し声を荒げたことも反省し始めたらしい。私も乱暴な詰め方をしてしまったから、反省なんてされると反って申し訳ないのだけれど。
「……お前が、鹿島と付き合った日」
重苦しそうではあったけれど、先に口を開いたのは桐椰くんだった。
「あの日……言われたんだよ。お前が養子だって知らねーのかって」
「……偶々優実に会って、急にそんな話したの?」
「いや、会ったのは偶々だけど、多分そんな話になった理由は……」
口籠る理由は、そんなことを教えた優実を庇うためだろうか。
「……だから、お前に無断で聞いたのは、その、悪かったって思ってる」
「……別に責めてるわけじゃないんだけど。聞いてるんだよ」
「……仲良いくせに何も知らねーのかって言われたんだよ」
少し悩んだ後、声だけじゃなく表情も少し荒げて、まるで吐き出すように、桐椰くんは乱暴に答えた。
「仲良いけど、何も聞かされてないってことは上っ面だけなんじゃねーのかって。そこまではっきりとは言われてねーけど、要はそういう感じのこと言いやがったんだよ、お前の妹が」
「……優実がそこまで言う理由が分かんない」
「俺にだって分かんねーよ。それはお前の妹に訊けよ」
「それで、養子だって?」
「そうだよ、お前と本当の姉妹じゃないって聞いたことあんのかって。本当の親のことも何も知らないんじゃねーのかってな」
よりによって私が鹿島くんと付き合った日……。桐椰くんは体育祭の日には優実をフッたんだと、松隆くんが話していた。もし、桐椰くんが、私にフラれたことを優実に話したとしたら、フラれたなら自分と付き合えばいいと言う……かな。優実の恋愛に対するスタンスを知らないのでそこは首を捻ってしまう。それでも桐椰くんが頷かないから、優実が自棄になって私が養子だってバラしちゃった、っていうのも筋は通る気がする……。
「それで……なんつーか……聞かされたって言うのはせこいけど、止める間もなく聞いちまったっつーか……」
申し訳なさを表すように、その語尾は萎んでいった。話し始めるときに少し声を荒げたことも反省し始めたらしい。私も乱暴な詰め方をしてしまったから、反省なんてされると反って申し訳ないのだけれど。