第四幕、御三家の幕引
「条件と理由で感情も態度も全部変えれちゃうんだよ。高校生なんかの恋愛感情なんて一過性のものなんだから、一生ついてまわる世間体のほうが大事なんだよ。養子なんだとか、母親は不倫したんだとか、そういう条件が――」

「そういう条件が思った通りのものじゃないと、好きになれないって?」


 そんな条件ばっかり揃っている私を桐椰くんにも否定してもらうことで、孝実の対応はごく普通なんだと思いたかったのか。


「お前の元カレがそう言ったならな、お前の元カレはそうなんだろうよ。で、お前がそうしたいのかは知らねーけど、別に一般論でもなんでもねーよ。つかんなことごちゃごちゃ考えもしねーよ」


 そんな条件ばっかり揃っている私も肯定してほしかったのか。


「そんなもん、俺に言わせればな」


 ただ、桐椰くんは、急にマフラーごと私の胸座を掴み引き寄せたかと思うと、冷え切った唇に冷え切った唇で噛みついて。

 答えを出すどころか考えることさえできなくなった私を突き放すように、その手も放して。


「知るかよ、バァカ」


 白い息と一緒に言葉を吐き捨て、私の条件を乱暴な口ぶりで一蹴し、躊躇いなく踵を返した。

 残されたのは、その瞬間の光景と、唖然とした私と、新年の慌ただしい雑踏だけだった。
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