第四幕、御三家の幕引

「兄貴が大学行ってる」

「え! イケメン?」

「俺とは似てない」

「えー、えー、いいなー、見てみたいなー」

「無理」


 似てないけどイケメンだよ、と口を挟みたかったけれど、桐椰くんとは一週間以上口を利いていないのでやめておいた。

 そして桐椰くんには黙ってるけど、彼方とは五日目に会うことになっている。桐椰くんは修学旅行の日程を教えなかったはずなのに、なぜか彼方は「修学旅行くるんだって?」と連絡してきたからだ。因みに月影くんが教えてくれたらしい。これは月影くんに口留めしなかった桐椰くんの敗北だ。

 ふーちゃんと一緒に回るなら五日目も一緒だろうな。となると彼方と会ったことは口留めせねば。うむ、と一人で頷いた。

 そうして、修学旅行一日目がスタート。心なしか関西弁飛び交う新大阪駅に到着したのは九時半だった。そこから大阪駅まで移動して、ホテルに荷物を預けた。

 その後は各々自由に出発、夕食がホテルバイキングなのでその時間までに帰ってくればそれでいいらしい。なんとも緩い修学旅行だ。日程を組んでくれたほうが私はありがたいのだけれど、彼方に会うことを考えると好都合ではある。

 が、ふーちゃんと一緒に荷物を預けた後、やっぱりこんなゆるゆる日程は嫌だと確信した。


「ねー、桐椰くんて大阪分かるんだよねー」

「分かるってほどじゃねーぞ。何回か来たことあるだけで」

「海遊館行きたいんだけどさー、御堂筋線ってとこまで一緒に行っていいー?」


 ふーちゃんのせいで御三家と一緒に駅まで歩く羽目になった……! 桐椰くんだって断ればいいものを「別にいいけど……」とか渋々頷いちゃってるし。


「それなら俺達と同じだが、一緒に来るか?」

「えー、いいのー?」


 それどころか月影くんのせいで完全に行動が一緒……! 月影くんそういうキャラじゃないじゃん! 誰が同じ方向に行こうが自分には関係ないって顔してるじゃん! ふーちゃんとは本当に仲が良いせいなの!?

 というかふーちゃんってまだ月影くんが好きなんじゃ……。月影くんは絶対鈍くて気付いてないのにそんな誘いをするなんて、小悪魔なのかなと (そんな形容は似合わないけど)さえ思えてくる。

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