第四幕、御三家の幕引
 否定しない彼方が面倒だったので横から口を出すと、深古都さんは「あぁ」と頷いた。特に驚いた様子はない。


「だろうとは思いました。そこまでありふれた苗字ではないですし、型が似てますし。まぁこんなクソ野郎の下にあんなよゐこがいると思わなかったが」

「え、なにそれどういう意味」


 私もつい先ほど全く同じ感想を抱いたので、最後の呟きには頷かずにはいられなかった。


「で、それとこれと何の関係が?」

「あ、えっと、それで時々相談に乗ってもらってるみたいな……」

「恋愛相談ならコイツはやめておいたほうがよろしいかと。愛と正義で世界が救えると勘違いしている大馬鹿者です」

「ひっでぇな」

「あ、恋愛相談なら彼方にはしないので大丈夫なんですけど」

「ひっどくね?」


 とはいえ、鹿島くんの話をするのは気が引けた。いかんせん、深古都さんのご主人様(というべきなのか)のふーちゃんは一応生徒会役員だ。ご主人様の居場所の悪口を言うわけにはいかない。


「なんかこう、学校生活の悩み事とかよく相談してて……」

「好き放題に暴れるだけ暴れあまつさえ後輩に面倒をかけるまでしたコイツに相談しても何の回答も得らえないかと」

「お前の中の俺って何させても駄目なんだけど、酷くね?」


 確かに、彼方が私に会ってない間は何してたのかとかあんまり知らないしな……。今日聞こうとしてたのだって、せいぜい鹿島くんの弱味くらいだし……。


「つか寒いからどっか中入ろうぜ。お前暇だろ?」

「お前に付き合うほど暇じゃない」

「せっかくこんなに可愛い女子高生が一緒なのに。あ、でも見慣れてんのか」

「女子高生自体は誰でも見慣れてるだろうが。女子高生なんて属性で暇かそうじゃないか決めるのはお前くらいだ」

「俺だってそんなことしない。同期でも遊ぶ相手が女子なら全然暇」

「そういうことじゃない」


 本当に、そういうことじゃない。深古都さんと彼方の会話、多分ずっとこのまま平行線だろうし、彼方からは改めて話を聞くことにしようかな……。散々延びまくってるけど、それだけ鹿島くんの寿命も長いということか。悔しいけどしぶといな。


「あ、じゃあ東高行くのは成人式の日にして、今日は龍玄(りゅうこ)行こうぜ! 龍玄の紅白饅頭セット食べないと年明けた気がしなくてさぁ」

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