第四幕、御三家の幕引
カウンターにいたのは中老のおばさんで、彼方と深古都さんと「アンタら今年も来たの、暇ねぇ」「おばちゃんが生きてる間は毎年来るって」「今年もよろしくお願いします」なんて話していた。
「何、後輩かね。珍しいね、アンタらが女の子連れて来るの」
「だって女の子連れて来れるような場所じゃねーもん、ここ」
「そんなこと言うなら早く帰りな」
「紅白饅頭もうあるっしょ? 三つちょーだい」
私の意見も聞かずに注文を済ませ、彼方と私の向かい側に深古都さんが座る形でボックス席に着く。ソファもテーブルも昔からあるものを綺麗に手入れして使っているような印象を受けた。
「……えっ」
「あ、お饅頭のセットは緑茶って決まってんの」
いやそこじゃないよ、私が困惑したのは。別にコーヒーか紅茶か選びたかったのに何も聞いてもらえなかったなんて思ってないよ。
「なんで私、彼方と深古都さんと一緒にお饅頭なんて食べてるの!?」
「えー、まぁトカゲに会っちゃったから」
「無理矢理付き合わせてすみませんね、支払いはコイツがしますから」
「別にいいけど、お前は誘ったらついてきたんじゃん。無理矢理付き合わせてないじゃん」
「お前は黙ってろ」
紅白饅頭は掌サイズで、湯呑に入った緑茶と一緒にやってきた。もっちりしていて、見た目も食感も、知りもしないのに昔懐かしい。二個食べるためなのか、あんこの甘さは控えめだ。地味なテーブルに地味な食器に地味なお菓子は、多分特別人気があるほうではなさそうだけれど、なんだかほっと落ち着いた。
「あー、年明けた。やっぱ龍玄の饅頭食べないと年明けないよなー」
「そうか?」
「言いつつ、どうせ毎年食べに来てんだろ」
「食べには来てない。買いに来てる」
「屁理屈だろ!」
「もう卒業して二年か」
ぺろりとお饅頭を食べてしまって、深古都さんは緑茶の湯気に溜息を混ぜるように息を吐いた。
「あと数か月もすれば後輩も新参者だらけになるな」
「あぁ、知らん顔ばっかりになるな。どう、様子変わった?」
「別に……今年の代は締まりがないって一回呼ばれたから、様子が変わったといえばそうかもしれん。ただ、そういう代もたまにはあるしな」
「何、後輩かね。珍しいね、アンタらが女の子連れて来るの」
「だって女の子連れて来れるような場所じゃねーもん、ここ」
「そんなこと言うなら早く帰りな」
「紅白饅頭もうあるっしょ? 三つちょーだい」
私の意見も聞かずに注文を済ませ、彼方と私の向かい側に深古都さんが座る形でボックス席に着く。ソファもテーブルも昔からあるものを綺麗に手入れして使っているような印象を受けた。
「……えっ」
「あ、お饅頭のセットは緑茶って決まってんの」
いやそこじゃないよ、私が困惑したのは。別にコーヒーか紅茶か選びたかったのに何も聞いてもらえなかったなんて思ってないよ。
「なんで私、彼方と深古都さんと一緒にお饅頭なんて食べてるの!?」
「えー、まぁトカゲに会っちゃったから」
「無理矢理付き合わせてすみませんね、支払いはコイツがしますから」
「別にいいけど、お前は誘ったらついてきたんじゃん。無理矢理付き合わせてないじゃん」
「お前は黙ってろ」
紅白饅頭は掌サイズで、湯呑に入った緑茶と一緒にやってきた。もっちりしていて、見た目も食感も、知りもしないのに昔懐かしい。二個食べるためなのか、あんこの甘さは控えめだ。地味なテーブルに地味な食器に地味なお菓子は、多分特別人気があるほうではなさそうだけれど、なんだかほっと落ち着いた。
「あー、年明けた。やっぱ龍玄の饅頭食べないと年明けないよなー」
「そうか?」
「言いつつ、どうせ毎年食べに来てんだろ」
「食べには来てない。買いに来てる」
「屁理屈だろ!」
「もう卒業して二年か」
ぺろりとお饅頭を食べてしまって、深古都さんは緑茶の湯気に溜息を混ぜるように息を吐いた。
「あと数か月もすれば後輩も新参者だらけになるな」
「あぁ、知らん顔ばっかりになるな。どう、様子変わった?」
「別に……今年の代は締まりがないって一回呼ばれたから、様子が変わったといえばそうかもしれん。ただ、そういう代もたまにはあるしな」