第四幕、御三家の幕引
一瞬で体が冷えたのは、外の空気を吸い込んだせいだけじゃない。
「御三家もわざわざ教えはしなかっただろうけど、それにしたって、御三家が揃って休んだ日の理由として思い付きもしなかったんだろ? 正直だなぁ」
俺ですら覚えてるのに、と言葉にはされなかったけれど、そう言われているような気がした。
「懐かしいね、俺と付き合った日には雨柳のことで泣いてたっていうのに。違うか、雨柳を思う御三家のことを思って泣いたのか。まぁどっちでもいいんだけど。君が雨柳のことをすっかり忘れてたのには変わりないし」
「……だから、偽善者だって?」
鹿島くんは肯定も否定もしなかった。
「ま、正直な反応だと思うよ。君が仲良くしてるのは御三家だ。あの四人じゃない」
皮肉にも、鹿島くんは透冶くんを含めた幼馴染達を知っていて、その四人を容易に一括りにできるけれど、私にはそれができない。
現に、御三家が休んだ理由として思いつきもしなかったのだから。透冶くんが亡くなったのが年明けだということは、ずっと前から知っていたのに。
「雨柳はいわば見知らぬ他人なわけだしね。別に、君に彼を悼むよう求めるつもりはないさ。分かりやすいくらい偽善者であるほうが俺は好きだよ」
「……鹿島くんに好かれたって何も嬉しくないんですけどね」
「所詮そういう人種だって話だよ。今更狼狽えたって何が変わるわけでもないし、大人しくそこで俺の彼女やってればいいんじゃないか」
言い返せることは、何もない。今更御三家に何か言おうものなら偽善者どころの騒ぎではない。その白々しさにいっそ笑えてしまうかもしれない。
結局、そんなものなのかと。不意に、奇妙な感覚に襲われた。
それはまるで、暗澹とした魔物に指先から侵食されるような……。
「……鹿島くんは、透冶くんの死を……」
「悼むわけないだろ。俺の友達じゃあない」
いっそ清々しいほどの明瞭な答えと共に、不敵な笑みを浮かべて椅子に戻る。そんな台詞をわざわざ聞かせるところもやっぱり嫌いだ、と苦虫を噛み潰して――あれ、と疑問が忍び寄る。
「御三家もわざわざ教えはしなかっただろうけど、それにしたって、御三家が揃って休んだ日の理由として思い付きもしなかったんだろ? 正直だなぁ」
俺ですら覚えてるのに、と言葉にはされなかったけれど、そう言われているような気がした。
「懐かしいね、俺と付き合った日には雨柳のことで泣いてたっていうのに。違うか、雨柳を思う御三家のことを思って泣いたのか。まぁどっちでもいいんだけど。君が雨柳のことをすっかり忘れてたのには変わりないし」
「……だから、偽善者だって?」
鹿島くんは肯定も否定もしなかった。
「ま、正直な反応だと思うよ。君が仲良くしてるのは御三家だ。あの四人じゃない」
皮肉にも、鹿島くんは透冶くんを含めた幼馴染達を知っていて、その四人を容易に一括りにできるけれど、私にはそれができない。
現に、御三家が休んだ理由として思いつきもしなかったのだから。透冶くんが亡くなったのが年明けだということは、ずっと前から知っていたのに。
「雨柳はいわば見知らぬ他人なわけだしね。別に、君に彼を悼むよう求めるつもりはないさ。分かりやすいくらい偽善者であるほうが俺は好きだよ」
「……鹿島くんに好かれたって何も嬉しくないんですけどね」
「所詮そういう人種だって話だよ。今更狼狽えたって何が変わるわけでもないし、大人しくそこで俺の彼女やってればいいんじゃないか」
言い返せることは、何もない。今更御三家に何か言おうものなら偽善者どころの騒ぎではない。その白々しさにいっそ笑えてしまうかもしれない。
結局、そんなものなのかと。不意に、奇妙な感覚に襲われた。
それはまるで、暗澹とした魔物に指先から侵食されるような……。
「……鹿島くんは、透冶くんの死を……」
「悼むわけないだろ。俺の友達じゃあない」
いっそ清々しいほどの明瞭な答えと共に、不敵な笑みを浮かべて椅子に戻る。そんな台詞をわざわざ聞かせるところもやっぱり嫌いだ、と苦虫を噛み潰して――あれ、と疑問が忍び寄る。