第四幕、御三家の幕引
「大阪港。十分くらいだな」

「港まで行くんだ……」


 そうなるとだいぶ南だなぁ、と思わず呟いてしまった。途端、パチッと桐椰くんと目が合う。


「……どこ行くか調べて来なかったのか?」

「……まぁ、うん、適当にどうにかなると思ってたから」

「……ふーん」


 会話、続かず。それもそうだ、一週間以上喋ってない状態でいきなり一緒に水族館に行くなんて謎過ぎる。大体、水族館なんてカップル御用達の場所なのに、振った側と振られた側 (私と松隆くん・桐椰くん)、片想いしてる側と全く気付かず別の人を好きな側 (ふーちゃんと月影くん)がメンバーの中にいるなんて字面だけでも複雑すぎる。しかも明日以降もこの予定。波乱の予感しかしない。

 海遊館は大阪港から歩いて十分くらいだった。寒空の下、きょろきょろと辺りを見回しながら歩いてすぐ、海遊館の目印みたいな旗が街灯にぶらさがった道に出た。本当にすぐだったので、駅からは海遊館のための道といっても過言ではないのかもしれない。


「そういえばニフレルもあったな」

「ニフレル? 聞いたことある気がするけど……なんだっけそれ」

「水族館じゃないけど、ほら、海の生物に触れるみたいなヤツ」

「あぁ、エキスポシティのあれね。去年できたばっかりだっけ?」

「そうそう。でも海遊館のほうが王道でいいか」

「意外と行くところあったね。四泊五日は少ないか……」

「住んでるわけでもねーのに全部行くのは無理だろ」

「まぁ、そうだね。大学生になるまでとっとこうかな」


 そういえば松隆くんは関西圏の大学に行きたいって話してたっけ……。関西の大学事情にはあまり詳しくないけど、少なくとも彼方と松隆くんが同じ大学に所属するイメージは沸かないなぁ……。

 思わず彼方の顔を思い浮かべながら松隆くんの後ろ姿を見ていると、突然振り向かれた。特に何かを意図したような怪しい表情が作られていたわけでもないのに、なぜか心臓が縮み上がる。


「そういえば、桜坂の志望校が北海道って聞いたんだけど」


 実際、その声音も今までと変わらない。なんなら隣の桐椰くんが振り向きもしないほうが不自然だ。私の志望校を松隆くんに伝えたのは桐椰くん以外いるはずないのに。


「まぁ……そうですね……」

「北海道?」


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