第四幕、御三家の幕引
「そういえば、君は進学先はどこにするんだ?」

「……いまのところ北海道だけど」

「判定は?」

「……Bですけど」

「今Bなら変えたらどうだ。そもそも北海道は遠い」

「いや、明貴人くんに関係なくないですか?」

「彼氏だろ」


 さも当たり前のように言われて、まぁうん、と最近形だけは馴染んできた関係に頷いたけど……。


「え、卒業したら別れてくれるんじゃないの?」

「あぁ、そうなの?」

「え? え、まさか卒業しても御三家に手出すつもり……? 無理だよ、明貴人くんの成績じゃ東大入れないから月影くんは追いかけられないよ」

「君に成績の話なんてしたことがあったか?」

「文化祭のときに桐椰くんが明貴人くんも蝶乃さんも揃って馬鹿って言ってた」

「失礼極まりないな。確かに、桐椰も成績がいいからな」


 因みに、十二月の期末試験では御三家が上位三名を総なめするという事件()が起こった。もう第何次か分からない御三家事件、トップはもちろん月影くん、なぜか二位に松隆くん、三位に桐椰くん。順位公開のない花高(うち)でなぜ上位三名が明らかかといえば、先生が「松隆がやっと真面目に……」と泣いたことが発端だとまことしやかな噂がある。桐椰くんはクラスに友達が増えたのでどこからともなく広まった。因みに私は八位と書かれた順位表を握り潰す羽目になった。どこまで行く気だ、御三家め……。


「なーんであの三人、何でもできるんだろうね。明貴人くんが嫉妬しちゃうのも分かるねー」

「勝手に嫉妬してることにするな」

「そういえば明貴人くんの志望校どこ? ていうか関東と関西どっち?」

「今のところ東京だね」

「じゃあ東京は絶対なしにしよっと」

「遠距離恋愛は面倒なんだが」

「いつでも好きなときにフッてくれていいよ、安心して」


 というか、卒業したら契約期間満了くらいに思ってたけど、鹿島くんは一体何のつもりなんだろう……。ギシ、と凭れた椅子が少しだけ軋む。


「ていうかさぁ、明貴人くん、いつまでも私と付き合ってていいの?」

「成果にはコストがつきものだからな、仕方ない」

「想定の範囲内のコストでしょ、文句言わないで。本当に自分のこと好きな人と付き合いたいとか思わないの? 体育祭でもモテてたじゃん、うちのクラスの八橋さんとか」

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