第四幕、御三家の幕引
 そう考えて、松隆くんのお父さんと会うときに手土産を買わなければならないと気付き、頭を抱えたくなった。高校生割引してくれないかな。


「あ、それでおいくら? 三人で割るんでしょ?」

「いや、四人だな。薄野が自分も送りたいと申し出てな」


 ふーちゃんが? 首を傾げると、月影くんも顎に手を当てる。


「色々迷惑をかけたから、だそうだ。とはいえ、薄野が個人的に物を送るとあることないこと吹聴されるおそれがあるし、そもそも総自身にも訝しまれる気がするので、俺達のプレゼント予算が少し増えるくらいで丁度いいということらしい」

「なるほど……それは確かに……」


 とはいえ、ふーちゃんが松隆くんにお世話になったって何のことだ? 月影くんにお金を渡しながら、心当たりがなくて首を傾げる。ふーちゃんが関係あることといえば月影くんと鳥澤くんの事件くらいだけど、あれはふーちゃんが何をしたってわけでもない。ただ、ふーちゃんは雁屋さんの気持ちを伝えようとしなかったことを後悔してたから、それさえなければ二人の間に事件は起こらなくて、鳥澤くんも誤解をすることはなかったくらいに思ってるのかも。有り得る……。


「じゃあ、そういうわけだ。これは頼んだ」

「いやいやだから、待ってくださいって。なんで松隆くんといい月影くんといい、プレゼント渡すのを私任せにするんですかね。いいじゃないですか自分で渡せば!」

「君が渡したほうが総は喜ぶんじゃないか? 未だに信じ難いが」

「未だに失礼! っていうか、松隆くんはもうそういう気持ちは整理した後なんじゃないですかね……。私がそんな言い方するのも烏滸(おこ)がましいけど……」

「いや、君の言う通り、一時の気の迷いだとそろそろ気付いてもよさそうだ」

「私はそんなこと言ってないですけど! あとねー、今日松隆くんに近づくのは至難の(わざ)だよ……」


 見たでしょ? と七組の方へ視線を向ける仕草をすれば、例年通りだと返ってきた。毎年毎年この有様なんて、先生もいい迷惑だろう。


「ね? でもツッキーならきっと女の子も道開けてくれるじゃん? だからツッキーにしよ?」

「あんな騒々しいところ、金を積まれても行きたくない」


 端的に厄介事を押し付けられた。イヤーな顔をするも、月影くんはどうせプレゼントを返品させてくれないだろう。


< 153 / 463 >

この作品をシェア

pagetop