第四幕、御三家の幕引
「あとこの量のお菓子を一人で消費するのは物理的に無理。それを押し付けて帰っていくのに全部食べてはただの拷問。実は嫌がらせでしょくらいあるよ」
この正論ばかり並べ立てる王子顔め……。月影くんはどうでもよさそうだけど、桐椰くんはさすがに呆れ顔だ。
「お前さぁ……言いたいことは分かるけど、物渡す人間の目の前で言うんじゃねーよ」
「さも食べますみたいな顔して受け取って捨てるほうが罪深いでしょ」
「そういわれると……つか一個にしとけよ。昼食べてねーのかよ」
「昼食時間も考えてもらえないせいでね」
私達が来たのを皮切りに、松隆くんの口から次々と吐き出される絶対零度の皮肉。視界の隅でそっと消えていく女子がいるのを見逃すことはできなかった。
「松隆くん……それを聞くと大変なのはわかるけど――」
さすがに松隆くんのファンを擁護すべきではないかと諫めようとすれば、一口サイズ版のマドレーヌで間抜けに口を塞がれた。
「でしょ? だから他の女子からの貰いものは食べないんだ」
目を点して固まった私の前で、松隆くんはにっこり笑顔でご満悦。次の瞬間、何が起こったのか気付いた松隆くん握手会参列中の女子からの殺意の籠った視線で背中が焼けるかと思った。桐椰くんは苛立ち半分呆れ半分で松隆くんの胸倉を掴んで揺さぶる。
「お前……相変わらずふざけたことしてんじゃねーよ、わざとやってんだろそれ」
「桜坂が物欲しそうにしてた気がしたから食べさせただけだよ。勘違いだったのかな」
「勘違いだったのかな、じゃねーよ! お前ここにいる女子に暴言吐いた挙句よくコイツにちょっかい出せるな!」
「ただの悪ふざけだから気にしないでよ」
「たちが悪いんだよお前の悪ふざけは!」
まったくだ。松隆くんのこの行動のせいで益々立場が悪くなるのは誰だと思ってるんだ。松隆くんは何をしても何を言っても許されるけど、逆に私は何をしても何を言っても非難されるんだからな。心の中で毒づきながらも、松隆くんに食べさせられたマドレーヌは確かに美味しかったし、御三家関連の痛い視線なんてもう慣れたのでよしとする。
「そういえば、今回は薄野も出資者だ。会ったら礼を言っておけ」
「薄野が? なんで?」
この正論ばかり並べ立てる王子顔め……。月影くんはどうでもよさそうだけど、桐椰くんはさすがに呆れ顔だ。
「お前さぁ……言いたいことは分かるけど、物渡す人間の目の前で言うんじゃねーよ」
「さも食べますみたいな顔して受け取って捨てるほうが罪深いでしょ」
「そういわれると……つか一個にしとけよ。昼食べてねーのかよ」
「昼食時間も考えてもらえないせいでね」
私達が来たのを皮切りに、松隆くんの口から次々と吐き出される絶対零度の皮肉。視界の隅でそっと消えていく女子がいるのを見逃すことはできなかった。
「松隆くん……それを聞くと大変なのはわかるけど――」
さすがに松隆くんのファンを擁護すべきではないかと諫めようとすれば、一口サイズ版のマドレーヌで間抜けに口を塞がれた。
「でしょ? だから他の女子からの貰いものは食べないんだ」
目を点して固まった私の前で、松隆くんはにっこり笑顔でご満悦。次の瞬間、何が起こったのか気付いた松隆くん握手会参列中の女子からの殺意の籠った視線で背中が焼けるかと思った。桐椰くんは苛立ち半分呆れ半分で松隆くんの胸倉を掴んで揺さぶる。
「お前……相変わらずふざけたことしてんじゃねーよ、わざとやってんだろそれ」
「桜坂が物欲しそうにしてた気がしたから食べさせただけだよ。勘違いだったのかな」
「勘違いだったのかな、じゃねーよ! お前ここにいる女子に暴言吐いた挙句よくコイツにちょっかい出せるな!」
「ただの悪ふざけだから気にしないでよ」
「たちが悪いんだよお前の悪ふざけは!」
まったくだ。松隆くんのこの行動のせいで益々立場が悪くなるのは誰だと思ってるんだ。松隆くんは何をしても何を言っても許されるけど、逆に私は何をしても何を言っても非難されるんだからな。心の中で毒づきながらも、松隆くんに食べさせられたマドレーヌは確かに美味しかったし、御三家関連の痛い視線なんてもう慣れたのでよしとする。
「そういえば、今回は薄野も出資者だ。会ったら礼を言っておけ」
「薄野が? なんで?」