第四幕、御三家の幕引
兄妹だと伝えたときに指摘されるその類似点は、思い込みなんかじゃない、はずだ。
そうだ、それに、年末の鹿島くんは言ってたじゃないか。松隆くんのお父さんが両親の別れに一枚噛んでいるから私に謝罪することも有り得るって。あの時の鹿島くんは熱に浮かされてたから、きっと本当を口にした。もし今の鹿島くんのいうストーリーが本物だというのなら、あの時に喋っていたはずだ。
大丈夫だ。これは、鹿島くんの嘘だ。私を動揺させるための、その場限りの姑息な嘘。
そう言い聞かせて、ふぅ、と深く吸い、吐いた。
「……とりあえず、離して」
「俺は支えてるだけなんだから、離れればいい」
――じゃあ、鹿島くんがそんな嘘を吐く理由は?
そんな疑問は、頭から無理矢理振り払った。
ぐっと、鹿島くんの腕に力を込めた。見上げた先の顔は、いつだって同じ薄ら笑い。
「……何度も聞くけど、鹿島くんの目的は、何」
「俺は松隆が嫌いなだけだよって何度も言っただろ?」
「たったそれだけのことでそこまでのことができるはずがないって、何度も聞いたよね?」
「君には分からない感情だと、既に言っただろ?」
どうして、解けない。どうして、鹿島くんの謎を解くことができない。ぐっと強く目を瞑って考えるけれど、与えられたピースは、どれもこれも歪に漂っているだけではまろうとしない。当たり前だ、そんなの。私には、完成図はおろか枠さえも見えていないんだから。
「いくら悩んだって、答えは変わりやしないよ。もう全部教えた後なんだから」
「……その、答えが……」
「気に食わないなら、詮索すればいいけど。無駄骨だよ」
一歩後ずされば、確かに鹿島くんは力なんて入れていなくて、離れることは容易だった。その代わり、試すようにその手が頬を掴む。
「……なに」
「別に、そういえば浮気のペナルティがまだだったと思ってね」
そういえば、年明け、桐椰くんとの浮気の清算をしていなかったな――。そう気づいたせいで、キスされることは分かっても、逃げる気にはなれなかった。
何度目か、数えられるほどのキス。お互い目も閉じず、ただ唇が触れ合いました程度の意味しかないように見えるキス。そんなキスには、驚くほど何の感情も抱かなかった。
そうだ、それに、年末の鹿島くんは言ってたじゃないか。松隆くんのお父さんが両親の別れに一枚噛んでいるから私に謝罪することも有り得るって。あの時の鹿島くんは熱に浮かされてたから、きっと本当を口にした。もし今の鹿島くんのいうストーリーが本物だというのなら、あの時に喋っていたはずだ。
大丈夫だ。これは、鹿島くんの嘘だ。私を動揺させるための、その場限りの姑息な嘘。
そう言い聞かせて、ふぅ、と深く吸い、吐いた。
「……とりあえず、離して」
「俺は支えてるだけなんだから、離れればいい」
――じゃあ、鹿島くんがそんな嘘を吐く理由は?
そんな疑問は、頭から無理矢理振り払った。
ぐっと、鹿島くんの腕に力を込めた。見上げた先の顔は、いつだって同じ薄ら笑い。
「……何度も聞くけど、鹿島くんの目的は、何」
「俺は松隆が嫌いなだけだよって何度も言っただろ?」
「たったそれだけのことでそこまでのことができるはずがないって、何度も聞いたよね?」
「君には分からない感情だと、既に言っただろ?」
どうして、解けない。どうして、鹿島くんの謎を解くことができない。ぐっと強く目を瞑って考えるけれど、与えられたピースは、どれもこれも歪に漂っているだけではまろうとしない。当たり前だ、そんなの。私には、完成図はおろか枠さえも見えていないんだから。
「いくら悩んだって、答えは変わりやしないよ。もう全部教えた後なんだから」
「……その、答えが……」
「気に食わないなら、詮索すればいいけど。無駄骨だよ」
一歩後ずされば、確かに鹿島くんは力なんて入れていなくて、離れることは容易だった。その代わり、試すようにその手が頬を掴む。
「……なに」
「別に、そういえば浮気のペナルティがまだだったと思ってね」
そういえば、年明け、桐椰くんとの浮気の清算をしていなかったな――。そう気づいたせいで、キスされることは分かっても、逃げる気にはなれなかった。
何度目か、数えられるほどのキス。お互い目も閉じず、ただ唇が触れ合いました程度の意味しかないように見えるキス。そんなキスには、驚くほど何の感情も抱かなかった。