第四幕、御三家の幕引
軽くスマホを振ってみせるということは、今回の件のことはきっと雅に連絡済みなんだろう。
「桜坂は?」
「え?」
驚いて顔を上げると、当然松隆くんがこちらを見ていた。ただ、私を試そうとする様子はない。ただ純粋に意見を貰おうとしているように見えた。
「どう思う? この件、本当に幕張が噛んでると思う?」
月影くんの視線が─―この状況では視線を向けないほうが寧ろ不自然なので正しいけれど──痛い気がした。幕張本人としてどう意見するか見どころだとでも言われているような気がした。
「……噛んでなさそう」
「どうして?」
もう、私と幕張匠が無関係だと思ってる人はこの場にいない。だったらいっそのこと、幕張匠像を作り上げて話すほうがいいのかもしれない。
「……彼が、松隆くんを襲う理由がないから」
「桜坂がそう思ってるだけで、あるのかもしれないよ」
「幕張匠がいたのは、もう二年以上前だよ」
口に出して、その歳月の長さを知る。
「幕張匠がいた頃に松隆くんと接触してないと恨みなんて抱きようがない。でも、恨まれるような接触なんてなかったんだよね?」
「少なくとも、俺側の感覚ではね」
「それなのにここで松隆くんを襲うのは今更が過ぎる。でもって、恨んでもなんでもないなら、幕張匠が松隆くんを襲う理由はない」
「でも、昔の幕張は無差別だっただろ」
気のせいだろうか、その声は少し厳しく感じた。実際にそうだったのか、図星だからそう感じてしまったのかは分からない。
「……昔はね」
「だったら今も、可能性はあるんじゃねーの」
「昔は無差別にする理由があったんだよ」
「なんだよ、その理由って」
「私の口から言えることじゃない」
「……じゃあその理由が今はないって言いきれるのかよ」
「言い切れるよ」
「……なんで」
「なんでも」
桐椰くんの視線は冷たい。声が厳しいと感じたのは図星だったからだけじゃないようだ。
「……だから、幕張は噛んでないと思う。松隆くんが聞いた会話からだけじゃ、連れってことは分かるけど、二人の関係までは分からないし、呼ばれた人が幕張って名乗ってただけの可能性が高いと思う」
「そうだね」
桐椰くんに気圧されずに言い切ったところ、松隆くんは頷いた。それに安堵するのも束の間──。
「桜坂は?」
「え?」
驚いて顔を上げると、当然松隆くんがこちらを見ていた。ただ、私を試そうとする様子はない。ただ純粋に意見を貰おうとしているように見えた。
「どう思う? この件、本当に幕張が噛んでると思う?」
月影くんの視線が─―この状況では視線を向けないほうが寧ろ不自然なので正しいけれど──痛い気がした。幕張本人としてどう意見するか見どころだとでも言われているような気がした。
「……噛んでなさそう」
「どうして?」
もう、私と幕張匠が無関係だと思ってる人はこの場にいない。だったらいっそのこと、幕張匠像を作り上げて話すほうがいいのかもしれない。
「……彼が、松隆くんを襲う理由がないから」
「桜坂がそう思ってるだけで、あるのかもしれないよ」
「幕張匠がいたのは、もう二年以上前だよ」
口に出して、その歳月の長さを知る。
「幕張匠がいた頃に松隆くんと接触してないと恨みなんて抱きようがない。でも、恨まれるような接触なんてなかったんだよね?」
「少なくとも、俺側の感覚ではね」
「それなのにここで松隆くんを襲うのは今更が過ぎる。でもって、恨んでもなんでもないなら、幕張匠が松隆くんを襲う理由はない」
「でも、昔の幕張は無差別だっただろ」
気のせいだろうか、その声は少し厳しく感じた。実際にそうだったのか、図星だからそう感じてしまったのかは分からない。
「……昔はね」
「だったら今も、可能性はあるんじゃねーの」
「昔は無差別にする理由があったんだよ」
「なんだよ、その理由って」
「私の口から言えることじゃない」
「……じゃあその理由が今はないって言いきれるのかよ」
「言い切れるよ」
「……なんで」
「なんでも」
桐椰くんの視線は冷たい。声が厳しいと感じたのは図星だったからだけじゃないようだ。
「……だから、幕張は噛んでないと思う。松隆くんが聞いた会話からだけじゃ、連れってことは分かるけど、二人の関係までは分からないし、呼ばれた人が幕張って名乗ってただけの可能性が高いと思う」
「そうだね」
桐椰くんに気圧されずに言い切ったところ、松隆くんは頷いた。それに安堵するのも束の間──。