第四幕、御三家の幕引
「うっ、ぐ……」
王子様の微笑みを向けられたとは思えぬ呻り声を出してしまった。松隆くんのこの手の冗談 (そもそも冗談なのか)にはどう反応するのが正解なんだ。兄妹で出かけてもデートとは言わないよーとか笑い飛ばすべき? とんだブラックジョークだ (そしてこれもそもそもジョークなのか)。何を考えてるのか分からないせいでこんな微妙な反応しかできない。それどころか、最近は深古都さんに松隆くんの誘惑を唆されるし、一体私はどうすればいいんだ。とりあえず、松隆くんがもう少し私に心を開くべきだと思うんだよね。
「えっと……まぁ……その……どうにかします……」
「本当にそんなに畏まらなくていいよ。ただ夕食一緒に食べるだけだし、社長って言ったってただのおじさんだから」
「ただのおじさんにしては俳優みたいな超イケメンじゃん。松隆くんの顔ってやっぱり遺伝子だったんだなーって」
「……会ったことあるの?」
──しまった。私のお母さんのお墓参りで出くわした、なんて、ツッコミどころのありすぎる情報だ。
「……お父さんの会社に行ったとき、偶然会って、まつたかくんのお父さんだって紹介されて」
「……ふぅん、急に食事って何かと思えば、そういうこと」
全然納得してない。そりゃそうだよね。
「……とりあえず、服装のことだけ聞きたかったから、ありがと」
「……あぁ」
早めにこの場を切り上げようとしたのが伝わったらしい、背を向けた後も探るような視線が追いかけてくるのを感じた。本当に、松隆くんのお父さんと、何を話すっていうのかな。鹿島くんのいうとおり、実は本当の父親は松隆くんのお父さんなんだ、なんて告白でもされるのか。絶対嘘だと感じたはずなのに、わざわざ食事の席を設けられるということは、何もないはずがない。
なんてことを考えているせいで、最近胃が痛い。放課後、久しぶりに生徒会室に行って鹿島くんの顔を見ると、今度は胃がむかむかしてきた。睨み付けると肩を竦めて返される。
「今度は何だ?」
「顔に腹が立ってるだけなのでなんでもないです」
「それは俺のせいじゃないから心は痛まないな」
「二十歳過ぎれば自分の顔なんだからね、二十歳過ぎても同じこと言ってやるからね」
王子様の微笑みを向けられたとは思えぬ呻り声を出してしまった。松隆くんのこの手の冗談 (そもそも冗談なのか)にはどう反応するのが正解なんだ。兄妹で出かけてもデートとは言わないよーとか笑い飛ばすべき? とんだブラックジョークだ (そしてこれもそもそもジョークなのか)。何を考えてるのか分からないせいでこんな微妙な反応しかできない。それどころか、最近は深古都さんに松隆くんの誘惑を唆されるし、一体私はどうすればいいんだ。とりあえず、松隆くんがもう少し私に心を開くべきだと思うんだよね。
「えっと……まぁ……その……どうにかします……」
「本当にそんなに畏まらなくていいよ。ただ夕食一緒に食べるだけだし、社長って言ったってただのおじさんだから」
「ただのおじさんにしては俳優みたいな超イケメンじゃん。松隆くんの顔ってやっぱり遺伝子だったんだなーって」
「……会ったことあるの?」
──しまった。私のお母さんのお墓参りで出くわした、なんて、ツッコミどころのありすぎる情報だ。
「……お父さんの会社に行ったとき、偶然会って、まつたかくんのお父さんだって紹介されて」
「……ふぅん、急に食事って何かと思えば、そういうこと」
全然納得してない。そりゃそうだよね。
「……とりあえず、服装のことだけ聞きたかったから、ありがと」
「……あぁ」
早めにこの場を切り上げようとしたのが伝わったらしい、背を向けた後も探るような視線が追いかけてくるのを感じた。本当に、松隆くんのお父さんと、何を話すっていうのかな。鹿島くんのいうとおり、実は本当の父親は松隆くんのお父さんなんだ、なんて告白でもされるのか。絶対嘘だと感じたはずなのに、わざわざ食事の席を設けられるということは、何もないはずがない。
なんてことを考えているせいで、最近胃が痛い。放課後、久しぶりに生徒会室に行って鹿島くんの顔を見ると、今度は胃がむかむかしてきた。睨み付けると肩を竦めて返される。
「今度は何だ?」
「顔に腹が立ってるだけなのでなんでもないです」
「それは俺のせいじゃないから心は痛まないな」
「二十歳過ぎれば自分の顔なんだからね、二十歳過ぎても同じこと言ってやるからね」