第四幕、御三家の幕引
「高校卒業する頃には別れたいと言ってたけど、気が変わったのか? それとも別れた男に未練がましく会いたいタイプか?」

「今は顔じゃなくて性格に腹が立ち始めたよ」

「そういえば、松隆は怪我から復帰したね」


 鹿島くんの人を食ったような笑みは変わらないままだ。問い詰められてボロを出すよりは、自分から口にしたほうがマシだとでも思ったのか。


「……なんで、怪我してたって知ってるの? 表向きはただの風邪だったよね」

「知り合いに警察関係者がいてね」

「ふぅん、警察関係者ってそんなに簡単に個人情報漏らすんだ?」

「俺を疑いたいんだろ? 松隆の見立てでは俺が犯人に浮上してるのか?」


 舌打ちしたいのを堪えた。ぼろを出したのはそっちなのに、なんで私がぼろをだしたように思えるんだろう。


「……別に、松隆くんが何を言ったとかじゃなくて。松隆くんを襲う人なんて、鹿島くんくらいだよね」

「そうかな? 同性人気ないし、殴られる理由はいくらでもあるんじゃない?」

「それだけのことで金属バッド持ち出すなんてある?」

「あぁ、金属バッドなんかで殴られたの? それは初耳」


 ぐ、と押し黙る。本当に鹿島くんは知り合いから話を漏れ聞いただけなのか。だから凶器までは知らなかったとでもいうのだろうか。


「……っていうか、鹿島くん、私と付き合ってる限りは御三家に手出さないんじゃなかったの」

「だから俺は何もしてないよ」

「鶴羽樹にも何も指示出してないってこと?」

「そうだよ。そういう契約だ。契約は守る男だから、俺は」


 腕を組んでにっこりと笑ってみせるけど、信じられるわけがない。だって鹿島くんはその気になれば私を監視できるけど、私は学校にいる鹿島くんしか監視できないんだから。


「……じゃあ鶴羽樹は勝手に松隆くんを襲ったってこと?」

「鶴羽だと確定したの? じゃあ、鶴羽が勝手にやったんじゃないかな」

「……鶴羽樹以外なら指示を出したっていうの?」

「そういう意味じゃないいよ。俺は何もしてない。でも松隆が襲われた。じゃあ、誰かが勝手に俺の指示の有無とは無関係に松隆を襲ったんじゃないのかなってだけ」

「……鹿島くんが何もしてないのに、そんなことある?」

「あるんじゃない?」


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