第四幕、御三家の幕引
私達がよく見る動物は愛玩動物で、彼等は主人に餌を与えられないと生きていけないから。そこまで口にせずとも全て伝わったのだと、一言繰り返されたその言葉だけで十分理解した。
「でも、俺達だってそうだろう?」
でも、その返事がどこまで含意したのかは分からなかった。
二人は結局少しだけ順路を進み、十一時半の餌遣りの回にもう一度カワウソの前に戻っていった。月影くんとふーちゃんが既に別々に行動してしまっているので、私が一緒に歩く必要はないだろう、と順路通りに進んだ。ただ、五階を歩いている途中で、このままのペースだと数十分とかからずに水族館を出てしまうということに気付き、慌てるようにとりあえず六階に戻った。そこでぽけーっと太平洋の水槽を見つめる。
何を、してるんだろう。なんで御三家と一緒に海遊館なんかに来てるんだっけ。そっか、ふーちゃんが地下鉄の駅への行き方が分からないって言って、桐椰くんが詳しかったから案内してもらおうって思ったのか……。あの時はなんでそんなことするんだって愕然としちゃったけど、冷静になってみれば、無理矢理にでも断ることはいくらでもできた。
それをしなかったのは、久しぶりに桐椰くんと一緒にいたかったからだ。
我ながらびっくりするくらい我儘だ。こればっかりは鹿島くんに嗤われても仕方がない。ふふ、と思わず自嘲の笑みが零れた。
それから暫く、ジンベイザメが泳ぐ姿を見て時間を潰した。他の生き物より大きな水槽を貰えているとはいえ、同じところをぐるぐると回り続けているのを見るとその泳ぎに雄大さなんて感じられない。こんな感想を抱いてしまう私は、きっと水族館には向かないんだろう。
ぽん、と肩を叩かれたときにはすっかりジンベイザメも見飽きた頃だった。漸くお迎えがきたかと思えば、いたのは桐椰くんという予想外の人。
「……松隆くんは?」
「ペンギンの前で止まってる。アイツ水族館来ると長いんだよ、好きだから」
「そうなんだ」
会話が止まる。話題を探さなければ間がもたないのは、桐椰くんと喧嘩をした後、いつもあることだ。
「……なんで鹿島と付き合ってんの」
「……またその話?」
仕方のないことを繰り返されてしまって、思わず笑ってしまった。それでも、穏やかに笑ったせいか、桐椰くんが不機嫌になることはなかった。
「でも、俺達だってそうだろう?」
でも、その返事がどこまで含意したのかは分からなかった。
二人は結局少しだけ順路を進み、十一時半の餌遣りの回にもう一度カワウソの前に戻っていった。月影くんとふーちゃんが既に別々に行動してしまっているので、私が一緒に歩く必要はないだろう、と順路通りに進んだ。ただ、五階を歩いている途中で、このままのペースだと数十分とかからずに水族館を出てしまうということに気付き、慌てるようにとりあえず六階に戻った。そこでぽけーっと太平洋の水槽を見つめる。
何を、してるんだろう。なんで御三家と一緒に海遊館なんかに来てるんだっけ。そっか、ふーちゃんが地下鉄の駅への行き方が分からないって言って、桐椰くんが詳しかったから案内してもらおうって思ったのか……。あの時はなんでそんなことするんだって愕然としちゃったけど、冷静になってみれば、無理矢理にでも断ることはいくらでもできた。
それをしなかったのは、久しぶりに桐椰くんと一緒にいたかったからだ。
我ながらびっくりするくらい我儘だ。こればっかりは鹿島くんに嗤われても仕方がない。ふふ、と思わず自嘲の笑みが零れた。
それから暫く、ジンベイザメが泳ぐ姿を見て時間を潰した。他の生き物より大きな水槽を貰えているとはいえ、同じところをぐるぐると回り続けているのを見るとその泳ぎに雄大さなんて感じられない。こんな感想を抱いてしまう私は、きっと水族館には向かないんだろう。
ぽん、と肩を叩かれたときにはすっかりジンベイザメも見飽きた頃だった。漸くお迎えがきたかと思えば、いたのは桐椰くんという予想外の人。
「……松隆くんは?」
「ペンギンの前で止まってる。アイツ水族館来ると長いんだよ、好きだから」
「そうなんだ」
会話が止まる。話題を探さなければ間がもたないのは、桐椰くんと喧嘩をした後、いつもあることだ。
「……なんで鹿島と付き合ってんの」
「……またその話?」
仕方のないことを繰り返されてしまって、思わず笑ってしまった。それでも、穏やかに笑ったせいか、桐椰くんが不機嫌になることはなかった。